アッシャー症候群の治療
現在のところ、アッシャー症候群を根治させるための治療法は確立されていません。そのため、発症を認める場合には、症状の程度に応じて聴力や視力を補うための治療法が考慮されます。
難聴に対する治療
聴力の程度に応じて、人工内耳や補聴器を用いた治療が行われます。
タイプ1など、生まれつき高度の難聴を認める場合には、補聴器だけでは十分に聴力を補うことができないため、早期から人工内耳による治療法が考慮されます。
しかし、いずれのタイプでも、徐々に視力低下が進行していくことを想定し、早期に人工内耳を使用することで生活の質を保つことにつながると考えられています。
人工内耳は人工臓器の一種で、外科的手術によって聴力を補う器具を耳の内部に埋め込み聴力を補う治療法です。
耳掛け式の補聴器に似た「体外式」のほか、耳にかけず、マイク部分を頭部に装着するものがあります。
補聴器は、聞こえが悪くなった時に音を明確に聞き取るために用いる医療機器です。機能や形はさまざまで、軽度の難聴を補うものから、ほとんど聞こえない高度難聴に対するものもあります。そのため、患者さんの聴力の程度によって適切なものを選択する必要があります。
網膜色素変性症に対する治療
現状では、網膜色素変性症に対する有効な治療法も確立されていません。
対症療法として、βカロテンの一種である「ヘレニエン製剤」やビタミンA、循環改善薬の内服療法のほか、遮光眼鏡の装用などが行われています。
アメリカではビタミンAの内服により網膜色素変性症の進行を遅らせたとされる報告があるものの、全ての症例に当てはまるわけではなく、効果は限定的と考えられています。また、過剰摂取によって副作用のリスクもあることから、内服は慎重に判断する必要があります。
循環改善薬に関しても網膜色素変性症の治療に用いられることがありますが、明確な効果は確立されていません。
一方、遮光眼鏡は急に暗くなった際に生じる「暗順応障害」を和らげる効果が期待できるほか、眩しさを軽減させたり、コントラストを鮮明にしたりする効果も期待できます。
このほか、「拡大読書器」を用いて読み書きをしたり、音声ソフトを用いてメールの送受信やインターネット閲覧をしたりする方法があります。
網膜色素変性症には有効な治療法が確立されていない一方、進行がやや遅い傾向にあります。そのため、将来予測される視力の低下を見越して早期から視力を補うための対策を講じることが有効です。
アッシャー症候群になりやすい人・予防の方法
アッシャー症候群は遺伝子の異常によって生まれつき発症するため、予防することは困難です。
生後間もなく視力や聴力の異常を指摘された場合には、その後の対応について主治医の指示に従うことが重要です。
関連する病気
感音性難聴
参考文献
難病情報センター「アッシャー症候群(指定難病303)」
厚生労働省「303アッシャー症候群」
石川浩太郎ら「アッシャー症候群」
難病情報センター「網膜色素変性症(指定難病90)」
一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「人工内耳について」
一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「補聴器のやさしい解説」
配信: Medical DOC
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