多発外傷の前兆や初期症状について
多発外傷の初期症状は、損傷を受けた部位によってさまざまです。
受傷直後は意識障害やショック障害など、生命の危険にさらされる全身症状が併発することもあります。
頭部と頸部
頭部外傷では意識障害や頭痛、嘔吐、手足のしびれ、運動麻痺などの症状が見られます。
頚椎骨折や棘突起骨折では首の激しい痛み、頸髄損傷では手足の運動麻痺や感覚障害などが生じます。
顔面
眼球外傷による視力障害、鼻骨骨折による鼻の出血や激しい痛みなどが見られます。
胸部
気胸や血胸によって胸痛や呼吸困難、ふらつき、息切れなどが生じることがあります。
心筋挫傷や心タンポナーデ(心臓と心臓を覆う心外膜の間に血液等がたまり、容易に心不全に移行する危険な状態)が起こると、胸部の圧迫感や意識障害、起座呼吸、出血性ショックが生じます。
肋骨骨折では激しい痛みの自覚症状があるほか、複数個所の肋骨骨折(フレイルチェスト)によって奇異呼吸などが現れることもあります。
腹部
腹腔内出血や内臓破裂による腹部膨満や出血性ショック、意識障害、立ちくらみなどが生じます。
持続性な腹部全体の痛みや発熱などが起こる腹膜炎に移行することもあります。
手足と骨盤
手足の骨や骨盤が骨折すると、激しい痛みや変形、腫れなどが生じます。
胸髄や腰髄が損傷して足の運動麻痺や感覚障害が生じたり、脱臼によって関節の変形や痛みが起こったりすることもあります。
体表
重度の擦過傷、あるいは火傷等によって、広い範囲で皮膚損傷が生じることがあります。
多発外傷の検査・診断
多発外傷の検査は、生命に関わる状況を迅速に判断し、適切な治療を開始するためにおこないます。
まず、意識状態やバイタルサイン、気道の状態、全身状態などを確認します。
可能であれば、受傷機転(外傷を負うに至った原因や経緯)、病歴や服用中の薬剤などの情報も収集します。
基本的な検査としては、血液検査や画像検査(X線、CT、超音波など)がおこなわれますが、多発外傷の多くの場合では、検査よりも生命維持に直結する治療が優先されます。
多発外傷の診断と重症度の評価においては、身体の各区域の損傷を点数化して評価する、「AIS」が用いられます。
客観的で迅速な診断が可能なことから、AISは治療方針の決定や予後予測に役立てられています。
配信: Medical DOC