「多発外傷」が起こったときの対処法はご存知ですか?【医師監修】

「多発外傷」が起こったときの対処法はご存知ですか?【医師監修】

多発外傷の治療

多発外傷の治療は、患者の全身状態を考慮しながら、優先順位をつけて実施されます。
治療の多くは各部位への外科的手術を含みます。救命のため、あるいは治療を施すために、必要に応じて輸血もおこなわれます。

頭部と頸部

頭部外傷の場合は必要に応じて開頭手術がおこなわれ、頭蓋内の出血を除去して脳圧が上昇するのを早急に防ぎます。
棘突起骨折や頸髄損傷などに対しては、頚椎カラーによって適切な保定をおこないます。

顔面

眼球に対する手術や顔面骨骨折整復術などが実施されることがあります。

胸部

気胸や血胸などでは挿管による胸腔ドレナージがおこなわれ、胸にたまった空気や血液を抜きます。
血胸で大量出血が見られる場合は、仰向けの状態で脚を高くして血圧上昇に努めたり、開胸手術で止血したりすることがあります。
心タンポナーデに対しては、心臓の周りから血液などの体液を抜く心嚢穿刺(しんのうせんし)が実施されます。

腹部

腹腔内出血や内臓破裂などが起こった場合は、開腹手術や経カテーテル的動脈塞栓術によって早急に止血します。
大量出血時にはバルーンカテーテルによる大動脈遮断がおこなわれることもあります。

手足・骨盤

骨折や脱臼が生じた場合は安静にしながら整復固定をおこないます。
大量出血時にはショックパンツや経カテーテル的動脈塞栓術によって、止血や血液循環の改善を図ります。

体表

損傷した皮膚に対して、洗浄や消毒、縫合などがおこなわれます。

多発外傷になりやすい人・予防の方法

多発外傷の原因は偶発的な事故が大半ですので、多発外傷になりやすい人という概念はありません。
多発外傷を完全に予防することは難しいですが、日ごろから交通安全を心がけること、生活範囲や職場の安全に配慮すること、事故が起こりそうな危険な場所には近づかない、立ち入らないことなどは、多発外傷の原因である事故の発生予防につながるでしょう。

また、もしも多発外傷で倒れている人を見つけたら、周囲の安全確認をしたうえで、できる限りの救命対応をしましょう。

具体的には、周囲に協力を仰ぎ、119番通報をして救急隊員の到着を待ちます。
救命講習に参加し、心肺蘇生法やAEDの扱いに慣れておくと、いざという時に役立ちます。

関連する病気

頭部外傷

頚椎骨折

棘突起骨折

脊髄損傷

鼻骨骨折

気胸

血胸

心筋挫傷

心タンポナーデ肋骨骨折

腹腔内出血

内臓破裂

腹膜炎

骨盤骨折

熱傷

フレイルチェスト

参考文献

一般社団法人日本救急医学会多発外傷

日本臨床麻酔学雑誌多発外傷

日本外傷データバンクレポート2022

日本外科系連合学会誌多発外傷の病態生理

日本医科大学雑誌多発外傷

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