「クッシング症候群」という病名を聞いたことはありますか? ホルモンの異常により発症する病気で、顔が丸くなったり、血糖値や血圧が高くなったりすることで発見されることもあります。しかし、「ただの肥満」と勘違いされ、見逃されてしまうこともあるそうです。クッシング症候群を早期発見するために必要なことや主な治療法について、「小暮医院」の小暮先生に解説していただきました。
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監修医師:
小暮 晃一郎(小暮医院)
東京医科大学卒業。その後、西新井病院や関連病院などで経験を積む。2018年、群馬県桐生市に位置する「小暮医院」の副院長に就任。日本糖尿病学会専門医。
クッシング症候群とは?
編集部
まず、クッシング症候群について教えてください。
小暮先生
簡単に言うと、副腎皮質ステロイドホルモンの1つである「コルチゾール」が過剰に分泌されることで、様々な症状が出現する病気の総称です。クッシング症候群は「下垂体性ACTH分泌亢進症」とも呼ばれています。
編集部
コルチゾールとはなんですか?
小暮先生
副腎で合成・分泌されるホルモンがコルチゾールで、肝臓で糖を作ったり、タンパク質の代謝に関わったり、免疫抑制に関与したり、生命を維持する上での重要な働きを担っています。しかし、このコルチゾールが過剰に分泌されると、身体に様々な症状が出現するのです。
編集部
クッシング症候群の原因はなんですか?
小暮先生
まず、クッシング症候群は大きく分けて3つに分類されます。1つが「副腎性クッシング症候群」で、副腎皮質の腫瘍などが原因でコルチゾールが過剰に分泌されるタイプです。2つ目が「ACTH依存性クッシング症候群」です。脳の下垂体から分泌される「ACTH」が、コルチゾールの分泌を調整しています。しかし、何らかの原因でACTHが過剰になり、コルチゾールがたくさん分泌されている状態をACTH依存性クッシング症候群と言います。
編集部
3つ目は?
小暮先生
コルチゾールと同じような作用を持つ薬剤を使用することで発症するクッシング症候群を、「薬剤性クッシング症候群」と言います。喘息などのアレルギー性疾患、リウマチなどの免疫疾患に対して、ステロイドを用いることもありますが、長期にわたって使用しているとクッシング症候群の症状が出現することもあります。
クッシング症候群の主な症状と自覚症状
編集部
クッシング症候群になると、どのような症状がみられるのですか?
小暮先生
体に表れる代表的な症状としては、以下の3つが挙げられます。
満月様顔貌:顔に脂肪がつき、丸くなる
野牛肩:肩に脂肪がついて丸くなる
中心性肥満:体幹部分に脂肪がつくが、手足は痩せて細い
そのほかにも、皮膚が薄くなったり、皮膚に赤い色の筋が表れたり、体幹に近い部分の筋肉が衰えたりすることもあります。
編集部
なぜ、顔が丸くなったり、脂肪がついたりするのですか?
小暮先生
コルチゾールには体重を増加させたり、血糖値を上昇させたりする働きがあるためです。しかしその一方、筋肉自体に障害が出たり、神経細胞が変形したりすることで手足は痩せて細くなるなど、筋力の低下がみられるようになります。
編集部
そのほかに、どのような症状で自覚すればいいですか?
小暮先生
健康診断などで血糖値や血圧、コレステロール値が上昇することで再検査となり、病気の発見につながるかもしれません。また、「月経異常」「うつ症状」「骨粗しょう症」などの症状がみられることもあります。
編集部
どのような症状がみられたら、医療機関を受診すべきでしょうか?
小暮先生
「食べる量は変わっていないのに太ってきた」「顔が丸くなってきた」「肩の上に脂肪が乗ってきた」というような場合は、内分泌内科の受診をおすすめします。また、「お腹が出てきた」「皮膚が薄くなってあざができやすくなった」「筋力の低下が著しい」といった症状がみられる場合も受診を推奨します。加えて、生活する上で支障が生じるのであれば、念のため医療機関で相談しましょう。
配信: Medical DOC