クッシング症候群の検査と治療法
編集部
クッシング症候群が疑われるときには、どのような検査をおこなうのですか?
小暮先生
まずは血液検査をおこない、血液中のACTH値やコルチゾール値を測定します。通常、これらの数値は早朝高くなり、夜間に低くなる傾向があります。また、ストレスによっても変化しやすいため、測定するときには少なくとも早朝と夜間にそれぞれ安静にした状態で検査をおこない、日内変動の様子を確認します。
編集部
そのほかには、どのような検査をおこないますか?
小暮先生
CT検査やMRI検査などの画像検査で、副腎や下垂体に腫瘍があるかを確認します。そのほか、薬剤を服用してホルモン値がどう変化するか測定する、内分泌の負荷試験もおこないます。
編集部
クッシング症候群であることがわかったら、どのような治療をおこなうのですか?
小暮先生
副腎や下垂体に腫瘍があることが原因となっている場合には、腫瘍を摘出する手術が必要になります。副腎は両側に1つずつあるため、片方を摘出してももう片方がホルモンを分泌することができますが、術後の一定期間はその機能が不十分になることもあります。その場合は、内服でホルモンを補います。腫瘍が小さくて特定できなかったり、両側の副腎に腫瘍があったりする場合には、薬物療法をおこなうことでコルチゾールの合成を阻害します。
編集部
そのほかの2つのタイプのクッシング症候群に対しては、どのような治療をおこなうのでしょうか?
小暮先生
ACTH依存性クッシング症候群についても同様に、腫瘍ができていれば切除術をおこないます。他方、薬剤性クッシング症候群については、ベースとなっている慢性疾患の治療を優先しておこないます。ステロイドを長期間使用していると、休薬したり、断薬したりすることはなかなか難しいのですが、ほかの薬剤に切り替えられる場合には、そうした方法も検討します。また、高血圧や高血糖などに対しては、症状に応じた治療をおこないます。
編集部
クッシング症候群を放置するとどうなるのですか?
小暮先生
通常であれば感染しにくい細菌や真菌、ウイルスなどに感染しやすくなったり、心血管疾患のリスクが上がったりすることで、寿命が短くなるとも言われています。「治療をしないと5年生存率が50%まで低下する」という報告もあるため、症状に気づいたらできる限り早く医師に相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小暮先生
体重や身体的な変化に不安があれば、ぜひ内分泌内科を受診してほしいと思います。お近くに内分泌内科がない場合には、一般内科でも大丈夫です。放置すると危険なこともあるので、「お腹周りが出てきて、皮膚に割れ目が目立つようになった」「肩が丸くなってきた、もり上がってきた」など、クッシング症候群に特徴的な所見がみられたら、早めにご相談いただければと思います。
編集部まとめ
クッシング症候群はあまり聞きなれない言葉ですが、放置すると感染症にかかりやすくなるなど、様々なリスクが上昇します。クッシング症候群に特徴的な体の異変がみられたら、早めに受診しましょう。
配信: Medical DOC