「 肺吸虫症」の前兆・初期症状はご存知ですか? 特徴を併せて医師が解説

「 肺吸虫症」の前兆・初期症状はご存知ですか? 特徴を併せて医師が解説

肺吸虫症の前兆や初期症状について

肺吸虫症は寄生虫病の一種であるため、肺吸虫が体内を移動し、最終的に肺に病変を形成するまでの過程で、さまざまな症状が出ることがあります。
最終的に肺吸虫が肺まで到達し、成虫となって産卵を始めると、肺吸虫症として典型的な症状が現れます。

まれに肺吸虫が肺以外の臓器に到達してしまうケースがあり、とくに肺吸虫が脳に到達してしまうケースでは、重篤な症状が出る場合もあります。

ただし、肺吸虫症に感染していても、軽症でほとんど症状が発現せず、感染を自覚できない例も多いことが知られています。また症状はゆっくりと進行するため、明確な症状を自覚するのは、成虫が肺に到達してからとなる場合が多いです。

なお、肺吸虫症の寿命は長く、体内で数年以上生存する可能性があり、場合によっては20年以上生存することもあると考えられています。

幼虫期の症状

ヒトの体内に入った直後の肺吸虫は幼虫形態で、約2か月かけて肺まで移動します。幼虫が腸内や腹腔内を移動する際に、下痢や腹痛、あるいは発熱やじんましんといったアレルギー症状に似た症状が出ることがあります。

成虫期(肺)の症状

肺吸虫が肺へ移動して成虫になり、産卵を始めると咳や血痰、胸の痛みの症状がみられます。これらの症状は肺がんや肺結核と似ているため、診断の際には正確な鑑別が必要です。
さらに、肺の一部に穴が開いて空気が漏れる症状(気胸)が起こる場合や、胸水が溜まって息苦しさが増す場合もあります。

脳肺吸虫症

まれではあるものの、肺吸虫が肺以外の臓器にも到達し、臓器が侵されるケースも報告されています。とくに、脳に到達してしまうケースは脳肺吸虫症と呼ばれており、頭痛や嘔吐、悪心といった症状が見られます。脳肺吸虫症を発症すると、けいれん発作や手足の麻痺といった、より重篤な神経症状に発展することもあります。

肺吸虫症の検査・診断

肺吸虫症の検査では血清診断や寄生虫検査、画像診断や血液検査が用いられます。

血液検査

肺吸虫症の診断には、血清中の抗体を検出する方法が広く用いられています。
特に、感染者の血清中に特異的な抗体が存在するかどうかを調べる酵素免疫測定法(ELISA)が一般的です。

寄生虫検査

寄生虫検査では、顕微鏡を用いて患者から採取した喀痰や便等を調べます。特徴的な外観を持つ虫卵(肺吸虫の卵)を確認できれば肺吸虫症が確定します。
ただし、肺吸虫症を発症していても必ずしも虫卵が確認できるわけではないため、他の検査も必要になります。

画像検査

胸部X線やCTを用いて、肺の状態を評価します。
画像検査では、肺の病変や合併症(胸水や気胸)の有無を確認できますが、単独では肺吸虫症の診断が確定しません。
他の検査を併用して行い総合的に肺吸虫症を判断します。
脳に肺吸虫が寄生した場合には、脳内の病変を評価するためにMRIが有用です。

関連記事: