肺吸虫症の治療
肺吸虫症の治療では抗寄生虫薬による薬物治療が用いられます。
虫体の除去や重症化した合併症を管理するために外科治療が行われる場合もあります。
薬物治療
肺吸虫症の治療では、プラジカンテルという寄生虫駆除剤が広く使われています。
プラジカンテルの作用機序の詳細は解明されてはいないものの、肺吸虫を麻痺、あるいは死滅させる効果を持ちます。
患者や患部の状況に合わせ、抗菌薬などが同時に処方される場合もあります。
外科治療
重度の感染や腫瘍形成が見られる場合は、肺の機能を保ちながら感染を完全に除去するために、肺の一部を切除する手術が行われる場合もあります。
肺吸虫症によって形成された寄生虫嚢胞や皮下結節があるケースでは、局所麻酔下で切開し、結節内の虫体を取り出す手術が行われます。
また、肺気胸を引き起こした場合は外科的ドレナージや肺の穴を塞ぐ癒着術が行われます。
脳に寄生し、重症な症状が出ている場合は、開頭摘出術も必要です。
肺吸虫症になりやすい人・予防の方法
肺吸虫症になりやすい人は、発症原因となる淡水産カニ、イノシシ肉、シカ肉といった食材を好んで食べる習慣がある人です。
民族や文化、地域性などに左右される食習慣によって、発症リスクが高まる可能性があります。肺吸虫症の流行地域でとれた食材を口にする際には、特に注意が必要です。
肺吸虫症の予防方法は、発症原因となる食材(淡水カニ類、ザリガニ、イノシシ肉、シカ肉)を食べないことです。
ただし、食材中の肺吸虫症は、加熱や冷凍により死滅させることができますので、こうした食材を含む食事が、必ずしも危険なわけではありません。
事前に適切な処置(加熱や冷凍)が施され、調理器具などを含め衛生管理が行き届いた環境で調理された食材に限れば、感染リスクをあまり気にせずに食べることができるでしょう。
関連する病気肺がん
肺気胸
肝吸虫
条虫症
回虫症
アニサキス症
参考文献
NIID国立感染症わが国における肺吸虫症の発生現況
NIID国立感染症シカ肉を介したウェステルマン肺吸虫症の感染リスク
厚生労働省検疫所FORTH 食品由来の吸虫症について(ファクトシート)
内閣府食品安全委員会食品により媒介される感染症等に関する文献調査
6. 吸虫症の化学療法とそれによる予防/熱帯医学会報/1965年6巻1号p.34-37
肺感染症:診断と治療の進歩 II.診断から治療へ6.肺寄生虫/日本内科学会雑誌/1991年第80巻 第5号p707-712
ウエステルマン肺吸虫症23例の臨床的検討/日本呼吸器学会雑誌39巻12号2001年
ウエステルマン肺吸虫症の1例/日本呼吸器学会雑誌第36巻第7号/1998年
ウェステルマン肺吸虫症の診断に局所麻酔胸腔鏡下生検が有用であった1例/呼吸臨床/第6巻10号/2022年
脳病変を契機に診断に至ったウエステルマン肺吸虫による脳肺吸虫症の1例/小児感染免疫/第24巻第1号/2012年/p19-23
気管支肺胞洗浄液中 IL-5 が高値を示したウエステルマン肺吸虫の1例/日本呼吸器学会雑誌第38巻第12号/2000年/p928-931
肺吸虫症に対する外科的療法/京大結研紀要/第11巻第1号/1962年/p10-21
配信: Medical DOC
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