日本人の失明原因の第一位の「緑内障」は、初期症状がほとんどないことが失明のリスクを高めているそうです。一体どのように進行する病気なのでしょうか。「小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック」の庄司先生にうかがいました。
≫ 【緑内障】日本人の多くは正常眼圧で発症している! どうやって気づき、いかに防ぐか
監修医師:
庄司 拓平(小江戸眼科内科白内障・緑内障・糖尿病クリニック)
防衛医科大学校卒業。その後、防衛医科大学校病院専門研修医、行定病院眼科医長、埼玉医科大学眼科准教授などで経験を積む。2022年、埼玉県川越市に「小江戸眼科内科白内障・緑内障・糖尿病クリニック」を開院。医学博士。日本眼科学会専門医、日本緑内障学会評議員、日本視野画像学会評議員、日本レーザー医学会評議員、日本眼科手術学会学術委員。日本網膜硝子体学会、日本眼光学学会、米国眼科学会(AAO)、米国緑内障学会(AGS)の各会員。埼玉医科大学眼科客員教授。
編集部
緑内障は初期症状があるのですか?
庄司先生
緑内障の典型的な症状は、視野が狭くなることです。しかし、病気の進行は非常にゆるやかで、初期にはほとんど症状が出ることはありません。それだけでなく、末期になっても症状を自覚しないことがあります。
編集部
進行すると、どのような症状が出るのですか?
庄司先生
緑内障で多いのは、「上下が非対称で視野が欠ける」といった症状です。そのため、「横文字は読めるけれど、縦文字が読めない」と訴える患者さんが多いですね。そのほか、「車を運転していて歩いている人に気がつかない」「信号を見落とす」といったこともあります。いずれにしても、本人は見えているつもりでも、見えていないということが多いのです。
編集部
そのほかには、どのような症状がありますか?
庄司先生
緑内障には急性と慢性があり、急に眼圧が高くなる急性では、目の痛み、頭痛、吐き気などを起こすことがあります。
編集部
どのように緑内障と診断されるのですか?
庄司先生
診断には、眼圧検査、眼底検査、視野検査の3つが必要です。眼底検査で網膜神経線維が減った場所があり、それとほぼ一致して視野の異常が見つかった場合に緑内障と診断されます。また、緑内障で起きやすい視野欠損パターンも知られているので、これらの検査結果を総合的に判断して緑内障と診断します。
編集部
緑内障は治るのですか?
庄司先生
眼圧が高くなると視神経が傷んでしまいます。傷んだ神経は元に戻すことができないので、一度失われた視野を広げることはできません。ただし、目薬や内服薬などの薬物療法やレーザー治療、手術などで眼圧を正常に近づけ、進行を遅らせることは可能です。
編集部
緑内障の患者さんは増えているのですか?
庄司先生
緑内障は網膜の神経節細胞が減少する病気で、この細胞は健常な人でも加齢とともに緩やかに減少します。そのため、高齢者になればなるほど緑内障の有病率は高くなることに加え、進行速度も速くなることが知られています。
編集部
社会の高齢化と関係するのですね。
庄司先生
そのとおりです。日本人は長寿化し、高齢化率も上昇しているので、緑内障有病率も上昇します。また、近視が強いほど緑内障有病率が上昇することも知られています。近年、若年世代ほど近視が強いという報告もあり、この点でも今後も緑内障の有病率は上昇することが予想されます。約20年前におこなわれた疫学調査では、40歳以上の約5%と報告されていましたが、現在では7%まで上昇しているという報告もあります。
編集部
そんなに増えているのですね。
庄司先生
昭和の終わり頃までは糖尿病網膜症や白内障が失明原因の上位を占めていましたが、平成の時代に緑内障が第1位になりました。その後も緑内障の割合は増え続け、最新の調査では緑内障が中途失明原因の圧倒的第1位になっています。
※この記事はメディカルドックにて【40歳以上必見! 「緑内障」になりやすい人の特徴を眼科医が解説 原因・初期症状・予防法も紹介】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC