下肢静脈瘤とは?原因・症状・治療について解説

下肢静脈瘤とは?原因・症状・治療について解説

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤と聞くと、静脈がボコボコと浮き出る症状を想像する人が多いのではないでしょうか。 見た目以外にも以下のさまざまな症状が現れます。

下肢の静脈がボコボコと浮き出る

だるさ

むくみ

痛み

色素沈着

湿疹・出血・潰瘍

皮膚硬結

慢性的な症状が現れることから、日々の生活に支障をきたすこともあります。考えられる症状を知り、当てはまる症状があれば早めに血管外科を受診しましょう。

下肢の静脈がボコボコと浮き出る

下肢の静脈がボコボコと浮き出る症状はご存知の方も多いでしょう。一言で浮き出るといっても見た目や静脈の太さから以下の4つに分類されます。

伏在型(静脈の太さ4mm以上)

側枝型(静脈の太さ3から4mm)

網目状(静脈の太さ1から2mm)

クモの巣状(静脈の太さ1mm以下)

中でも顕著に静脈が浮き出るのは伏在型で、表在静脈の中で最も太い伏在静脈内の弁がダメージを受けることで現れます。

足のつけ根の静脈弁が壊れることで発生する大伏在型静脈瘤は、膝の内側にボコボコと静脈が浮き出てきます。また、小伏在型静脈瘤は膝の裏側の静脈弁が壊れ、ふくらはぎにボコボコとした所見を認める例が多いです。

大伏在型・小伏在型いずれも静脈の太さが4mm以上に太くなった静脈瘤と理解しておきましょう。伏在型は重症化すると外科的手術が必要となりますので、静脈がボコボコと浮き出る症状がある場合は早めに受診しましょう。

一方、側枝型・網目状・クモの巣状は膝の内側や大腿部の外側に所見を認めますが、ほとんどが軽症です。

側枝型静脈瘤は細い血管がボコボコと浮き出てきますが、伏在型と比較すると細く小さい静脈瘤です。

網目状静脈瘤は皮下の小さな静脈が拡張し、青く浮き出てきます。クモの巣状静脈瘤は皮内細静脈が拡張するため、まさにクモの巣のように細い血管が赤く広がって見えるのが特徴です。

下肢静脈瘤は種類によって見た目が異なるため、目視で判断しやすいですが放置せず早めに受診をしましょう。

だるさ

下肢静脈瘤の症状としてだるさを訴える患者さんもいます。下肢の筋ポンプ力低下あるいは下肢の弁の機能低下によって、血流が滞ってしまいます。

本来であれば、心臓に戻される血液や老廃物が下肢に滞留し足がだるいと感じてしまうのです。

むくみ

むくみが生じている場合、不要なリンパ液などの水分が体内に溜まっていると考えられます。下肢静脈瘤によって静脈内の圧力が高まり、組織間の体液の循環が悪くなってしまうのです。

その結果、下肢静脈瘤の一つの症状としてむくみが現れます。

痛み

下肢静脈瘤より痛みを感じる場合は血栓性静脈炎を併発している可能性があります。

下肢静脈内に血液の塊ができ、炎症を起こしている状態です。急な痛みを伴う場合は、主治医や血管外科に相談しましょう。

また、立ち仕事後など下肢の疲れが溜まる夕方から夜間にかけて、痛みを感じる人もいます。

色素沈着

色素沈着も下肢静脈瘤の症状の一つです。下肢の静脈内に血液が滞留した状態が続くと、血液中のヘモジデリンとメラニンという成分が沈着します。これにより皮膚が茶色や黒色に色素沈着する症状を自覚する人も多いです。

色素沈着の程度は人によってさまざまで、濃いものから淡いものまで存在します。

一度色素沈着すると、静脈瘤を治療しても治りづらいとされています。色素沈着が進行する前に受診をしましょう。

湿疹・出血・潰瘍

下肢静脈瘤が進行すると湿疹・出血・潰瘍の症状もみられます。下肢に古い血液がうっ滞すると皮膚炎が起こり痒みが現れます。この状態をうっ滞性皮膚炎と呼び、湿疹のように赤く痒みを生じるのです。

さらに、うっ滞性皮膚炎の状態を放置すると、出血や潰瘍に進行します。潰瘍に進行した場合、治療に長期間要するうえに難治性潰瘍となるため早期に治療開始することが重要です。

皮膚硬結

下肢静脈瘤の症状が進行すると、皮膚が硬くなり皮膚硬結の状態となります。皮膚が黒ずみ、触って硬いと感じたら注意が必要です。

静脈瘤による症状から守るため、皮下組織が徐々に硬くなっている状態と考えていいでしょう。

皮膚が硬くなって時間が経過すると、治りづらく元の状態に戻すのは難しいとされています。少しでも症状がある場合は、早めに受診しましょう。

下肢静脈瘤の治療方法

下肢静脈瘤自体が命の危険を脅かす病で一刻を争う疾患ではありませんが、進行すると皮膚病にも繋がるため早めに治療しましょう。主な治療方法は以下3つです。

圧迫療法

硬化療法

手術療法

下肢静脈瘤の種類や症状に応じて、治療方法を選択する必要があります。各治療方法がどのような特徴があるのか、確認しましょう。

圧迫療法

下肢の血液が逆流するのを防止する観点から、圧迫療法も有効とされています。下肢の筋ポンプ力を補助し、血液の滞留を防ぎます。主に医療用の弾性ストッキングを着用し下肢に適度な圧力を加える方法です。

ただし、潰瘍や傷が化膿している時の着用はおすすめできません。必ず医師の指示のもと着用しましょう。

ドラッグストアでも着圧ストッキングは手に入りますが、医療施設で取り扱うものの方が効果的です。また、ドラッグストアなどで自己判断で選んだ着圧ストッキングの着圧力やサイズが足に合っていない場合、血行障害が起きる可能性もあります。

医師に処方を受け、正しい方法で着用しましょう。ただし、下肢静脈瘤を根本的に治療するものではなく、症状の改善や現状維持で用いられることが多いとされています。

硬化療法

静脈瘤内に硬化剤を注入し血管を塞ぐ治療が硬化療法です。太くなってしまった静脈に用いられることは少なく、軽症の側枝型・網目状・クモの巣状の静脈瘤に適用されるケースが多いです。

硬化した血管は血液が流れなくなるため、徐々に退化します。その結果、下肢静脈瘤も自然と消失するのです。基本的に注射で硬化剤を注入するため非侵襲的で、患者さんの負担も少ない治療法とされています。

手術療法

下肢静脈瘤で主に適用される手術療法は以下の通りです。

ストリッピング手術

高位結紮(切離)術

瘤切除術

主に下肢静脈瘤に伴う皮膚症状がある場合やむくみ症状がひどい場合に、手術を選択するケースが多いです。

ストリッピング手術は小さく切開した2ヶ所の穴から静脈を引き抜くため、再発が少ない手法とされています。主に伏在型静脈瘤が適応で、原因の静脈を取り除くため術後1週間程度でボコボコと浮き出ていた静脈が気にならなくなってきます。

高位結紮術は足のつけ根辺りで血管を縛り、血液の逆流を防止する方法です。大腿静脈から大伏在静脈を切除して逆流を阻止します。このとき、硬化療法と共に実施するケースもあります。

瘤切除術は上記2つの手術と併用し瘤そのものを切除しますが、主流の手術ではありません。

手術療法は痛みや出血を伴い、硬化療法と比較すると侵襲的な療法です。一方ボコボコと浮き出る静脈をしっかり治療できるため、見た目が気になる人は選択肢の一つと捉えておきましょう。