●主語と述語は明確に…わが子を子ども扱いしない
まずは、数年後にスタートする「新テスト」攻略に向け、子どもが小さいうちから親が心がけておくことはあるのだろうか。藤島氏によれば、これからの教育で、親が気をつけていかなければならないポイントは、以下のとおりだという
1.一方的に指示・先導するのでなく、子ども自身に考えさせ、選択できる環境を与える。
→小さい頃から五感を刺激し、自分で考える習慣を身につけさせましょう。教科書のなかに答えを求めてきた今までのスタイルでは、新テストの問題は解けません。
2.子どもと会話するときは、なるべく正しい日本語で! 主語と述語を意識させる。
→日本語は、主語を抜いても普通に通じてしまいます。また、会話を最後まで聞かないと、意志がはっきり伝わらないという点も、日本語の大きな特徴です。だからこそ、主語と述語は大切な要素となるのです。英語などの他言語を理解する上でも、責任の所在を明確にする「主語」と結果である「述語」をはっきりさせることが大切です。
3.子ども扱いをしない。
→家族という最小単位の社会のなかで、特別扱いせず、その年代に応じた「責任」を自覚させましょう。
「これからは、さらに“家庭力”が問われる時代になります。このような日々の小さな積み重ねが、自然とお子様方の思考力や判断力を培い、主体性を持って多様な人々と協調し、自分自身を表現していけるような人材になると考えます」
●65%の子どもたちが、今は存在しない職業に就く?
それでは、この「新テスト」導入に向け、今後は中学受験も変わる傾向にあるのだろうか。
「今までの受験は、国語・算数・理科・社会の4教科に分類されていて、教科ごとに出題されていましたが、おそらくこれからは、各教科を象徴した問題だけでなく、総合的な学力が問われる問題を出す学校が増えるでしょう。例えば、理科の問題であっても、国語の読解が必要だったり、さらには今までの受験勉強とは一切関係がなかった“一般常識”を駆使して解くような問題が出てくるかもしれません。すでにいくつかの学校では、新しい受験スタイルの取り組みが始まっています。受験生には、既存の教科書や参考書には載っていない知識や思考力が求められ、経験値が合否を大きく左右することになるでしょう」
受験塾代表から見て、文部省が「今の知識詰め込み型テストでは、この先の日本が危ない!」と感じ、改革するに至った理由はどこにあると感じるのか。
「今の学校教育や入試問題は偏差値偏重型で、知識の暗記に重きを置いたものになっています。今後の日本では、世界はますます身近なものになっていくでしょう。これからの子どもたちは主体性を持って多種多様な人々と触れ合い、協調していくことが望まれます。本来学校教育とは、子どもたちが社会に出て、自分の夢に向かって歩き出せるようにサポートするものですが、そのためには、単に知識の詰め込みだけにとどまらない、思考力や判断力を身につけていく必要があるのです」
国が教育改革に至った大きな要因として、AI(人工知能)の台頭も挙げられるという。
「今後10~20年で、約50%の仕事が自動化され、AIの進化によって、子どもたちの65%が、“今は存在しない職業”に就くと囁かれています。今までの教育では、“失業するために大学を卒業させる”ことになってしまうと言っても過言ではないでしょう。今後は、1から100を作るための考え方ではなく、0から1を創る【思考力】を育てる教育が必要なのです」
さらにもう一つ、今回の教育改革は、現代社会が抱える社会問題解決のためでもあると、藤島氏は語る。
「これからの日本は、少子化の克服や格差の改善、経済成長と雇用の確保を成し遂げ、安心して生活できる社会を実現させなければなりません。そのためにも国は、個々の能力を最大限に引き出さなければなりませんし、教育費の負担を軽減して子育てに対する不安を取り除き、出生率を上げていかなければいけません。これらを成し遂げるためには、必然的に“教育の充実”が課題となってくるのです」
ママたちは、決して試験の結果だけに目を光らせず、まずは子どもの長所に目を向けてほしいと笑顔で語る。
「わが子の成長や成績を横並びで他の子と比べてしまう親御さんがいらっしゃいますが、子どもにはそれぞれ、学び方ひとつにも個性があり、興味の持ち方から理解の速さまで、すべてが違います。塾を経営する身でありながら、こんな発言をするのはどうかと思いますが(笑)、お子様の意に反して無理矢理塾に行かせる、無理に遅れを取り戻そうと必死になり過ぎる親御さんは大変危険です。例え九九が言えなくても、大人が知らないような虫や自動車について詳しく話すことができれば、まったく問題ありません。“学ぶ楽しさや喜びに出会う時期”も、子どもたちそれぞれなのですから…」
これからは、“子どもの主体性”を育て、最後まで信じて見守ることが教育ママの仕事! 「勉強しなさい!」と目くじらを立てる時代は、もうすでに終わっているのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)