親自身も幼い頃を振り返ってみれば、大人になった今よりも子ども時代のほうがずっと鼻血を出す頻度が高かったはず。なぜ子どもは鼻血を出しやすいのだろう? その原因とは?
給田耳鼻咽喉科クリニック院長であり、小児耳鼻咽喉科を得意とする杉崎一樹先生に鼻血のメカニズムと原因について聞いた。
●鼻血のほとんどは刺激による出血
「鼻をかむ、ほじる、こするなどの刺激によって鼻の粘膜に傷がつき、その結果として血が出てしまう。子どもの鼻血の原因は、これらの物理的な刺激によるものがほとんどです」(杉崎先生 以下同)
こう聞くと「ああ、うちの子、しょっちゅう鼻をほじっているから…」とため息をつくママも多いだろう。だが、そもそもなぜ鼻のなかをいじりたくなるのか? たんなる「手クセ」だけではない、ムズムズの理由がある場合も。
「アレルギー性鼻炎によるかゆみのために鼻をいじったり、鼻炎や副鼻腔炎、蓄膿症(ちくのうしょう)などで頻繁に鼻をかんだり、すったりすることによる鼻血も多いですね」
ハウスダストや花粉などが原因となる「アレルギー性鼻炎」、風邪などから始まり、副鼻腔が細菌感染を起こした「副鼻腔炎」、その状態が慢性化した「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」などが鼻血を引き起こす可能性もある。頻繁に繰り返すようなら、耳鼻科を受診しよう。
●寝起きやお風呂上がりは鼻血が出やすい
ところで、鼻のなかの「どこ」から血が出てくるのかは、大人でもよく理解していないのでは? 出血のほとんどは、「ギーゼルバッハ部位」という左右の鼻を仕切る壁(鼻中隔)の手前の部位から起こる。
この部分の柔らかく弱い粘膜の下は、細かい血管が網目状に集まっている。そのため、鼻をいじる、強く鼻をかむ、勢いよくくしゃみをするなどの少しの刺激でも簡単に出血することがある。寝起きやお風呂上がりも、血圧が上がったり、体温が上昇するため出血しやすい状態といえる。
「幼児期の鼻腔(鼻のなか)の粘膜は、まだまだ発達途上。大人の粘膜よりもずっとデリケートで弱いため、出血しやすいのは当然。子どもの場合は鼻血が出ても、頻繁に繰り返すようでなければ、あまり心配する必要はありません」
ちなみに、「のぼせて鼻血が出た」というイメージのせいか、鼻血は気温の高い夏に多いと思っている人もいるそう。だが、実は秋冬のほうが鼻血の患者が増えるという。
「鼻血の患者さんは、空気が乾燥してくる冬になると格段に増えてきます。これは鼻の中が乾燥して荒れやすくなるので、粘膜が傷つきやすくなるためです。また、湿度が低下することにより鼻風邪をひきやすくなるからとも考えられます」
大人になると粘膜も強くなり、鼻血が出る頻度も減っていく。やみくもに「鼻ほじっちゃだめ!」と禁止するだけではなかなか効果がないので、親としてはせめても子どもの手の爪を短く切っておくだけでも鼻血予防になる。いずれにしろ、繰り返すようなら耳鼻科を受診するのが安心だ。
(阿部花恵+ノオト)