粉瘤(アテローム)で行う検査
粉瘤を診断するためには、どのような検査をするのでしょうか。
粉瘤は、視診・触診で診断できるため、特別な検査は必要ありません。
ほかの腫瘍の疑いがあり、鑑別診断が必要な場合には、エコー検査・CT検査・MRI検査を行うことがあります。
ここでは、粉瘤の診断によく用いられる視診・触診について解説します。
視診
粉瘤は、皮膚の浅いところにできやすい良性腫瘍です。真ん中に小さな穴があり、黒くなっていることもあります。
また、粉瘤のある部分の皮膚の色は全体的に周りの皮膚よりも暗い色になっています。このような見た目から、視診で粉瘤を診断します。
触診
粉瘤は触ったときに硬さがあり、コロコロしたしこりがあることがわかります。粉瘤は皮膚の一部が内側に入り込んで、そこに老廃物が入り込んでできたものなので、皮膚と一緒に動くのです。
粉瘤と似た疾患である脂肪腫では、皮膚と癒着していないため、押したときに皮膚に関係なく動きます。
粉瘤を潰すと、悪化したり、炎症が生じたりすることがあるので自分で潰さないようにしましょう。
粉瘤(アテローム)の治療法
粉瘤ができた場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
粉瘤の治療は、腫瘍のできた部位や症状によって異なります。良性腫瘍であるため、炎症や痛みがなければ、特に治療をしなくても問題はありません。
しかし、見た目の問題や外的刺激を受けやすい場所である場合には、炎症や破裂の恐れがあるため手術で切除することになります。
また徐々に大きくなることがあるため、大きくなっていくようであれば早めに切除した方がよいでしょう。
粉瘤は、一度できると自然治癒することはないため、治療するには局所麻酔をして手術で切除する必要があります。内服薬・外用薬などでは治療することができない疾患です。
大きさによりますが、ほとんどの場合は日帰り手術ができ、手術時間は30分から1時間程度です。
切除した粉瘤は、ほかの疾患との鑑別のために組織を病理検査に出すこともあります。粉瘤は良性腫瘍ですが、稀に粉瘤から悪性腫瘍が発生したという報告もあるため病理検査が必要です。
経過が長く大きなものや炎症を繰り返しているものには注意が必要となります。粉瘤が悪性化する原因はわかっていませんが、慢性的な炎症・感染が関与している可能性があります。
このため、粉瘤が繰り返し炎症を起こす状態で放置することは望ましくありません。
粉瘤の治療は手術ですが、その手術の方法には以下の2種類があります。
切開
くり抜き法
ここでは、これらの粉瘤の手術方法についてそれぞれ解説します。
切開
通常の粉瘤では、表面の黒い点を含めた皮膚を紡錘形に切開して、粉瘤の内容物である角質・皮脂の入った袋状の構造物をそのまま取り出します。
再発しないように、袋を破らずに全部摘出する必要があるのです。切開による手術の場合、傷跡が残ることがありますが、再発のリスクを軽減できます。
取り出した後、縫合して終了であるため、よほど大きいものでなければ日帰りで手術を行うことが可能です。
炎症を起こした粉瘤は、すぐに切除することができません。炎症がある状態では、腫瘍自体が大きいため傷口が大きくなってしまったり、再発しやすくなったりしてしまいます。
そのような場合には、粉瘤を切開して内側にある膿や角質をすべて取り出すことが必要です。内容物を取り出すことで痛みが減り、破裂する危険性がなくなるのです。
切開・排膿をした後は、内部を洗浄し、切開した傷口を開いたままの状態を保ちます。自然と閉じるまで軟膏を塗布します。
後日傷口が閉じた後、あらためて残っている粉瘤を摘出して治療終了です。粉瘤の入っている袋を残したままにしておくと再び炎症を起こしてしまうことがあります。自然治癒することはないので、膿を取り出した後の袋も取り出すことが必要です。
くり抜き法
くり抜き法は、必要最小限の切開で粉瘤を切除できる方法です。患者さんの負担が少ない手術で、傷口が小さく、傷跡が目立ちにくいことがメリットです。
皮膚外部と腫瘍部分をつなぐ黒い点である開口部に直径4mm程度の円筒状のメスを入れます。そのとき、表面の皮膚と一緒に袋状の構造物の一部をくり抜きます。
その後、内容物・袋をもみながらできるだけすべて取り出すのです。一般的に縫合は行わず、傷跡もほとんどわかりません。切開する場合と比べて手術時間は短いですが、完治するまでの時間は長くなります。
くり抜き法は、特に炎症がある場合では切開して袋状の構造物をすべて取り除く方法と比べて、再発のリスクが上がります。
また、くり抜き法は手のひら・足の裏の粉瘤、炎症を繰り返して周囲の組織との癒着が強い粉瘤には用いられません。
炎症を伴い、痛み・赤み・腫れが強い場合には、すぐに表面を切開して膿を出す必要があります。粉瘤が炎症を伴うと、炎症性粉瘤と呼ばれ、急速に大きくなります。炎症を起こして、初めて粉瘤に気付く場合もあるのです。
配信: Medical DOC