●「パンツは嫌、おむつがいい」…子どもは人知れずプレッシャーを抱えている
保育園児といっても、一人の人間。はつらつと遊んでいるように見えて、実は人知れず悩みを抱えているようです。たとえば、てぃ先生の実体験で、「携帯電話になりたい」と言った女の子に、どうしてなりたいのか聞くと、返ってきた答えは「ママとずっといっしょだから!」。もしかしたら、ママとの時間が少なくて寂しい思いをしているのかな……と、思わず考えさせられてしまいます。
このように些細な言動や振る舞いから、子どもたちの置かれている環境が垣間見えるそう。
「最近、子どもたちの様子を見ていて、すごく感じるのは『これができたからスゴイね』とか、『これができたら偉いね』でなく、『これができなきゃダメ』というプレッシャーがあるんじゃないかなと思います。たとえば、トイレトレーニングのために、パンツ履くことになって、漏らしちゃったとします。当然上手く行かない事もありますが、そうすると替えのパンツではなく、なかには『先生、オムツがいい』って言う子がいるんです。それは、失敗がもう嫌だと思ってしまう。おそらく、自分ができないことにがっかりしているママやパパの表情を読み取って、幼いながらも“やらねば”という義務感を必要以上に抱えているように思います」(てぃ先生)
これは、情報に頼ってしまいがちな現代の子育て事情を反映していると、てぃ先生。
「ネットや育児本で情報を集めようと思えば、いくらでも集められる時代です。だから、『何歳何か月になったらこれができるようになって』のように、マニュアルみたいに書いてあると、たとえ1ヶ月でも遅れると、不安になってしまうのではないでしょうか。
ただ、そうした情報はあくまで目安であって、子どもによっては1年違ってくる場合もありますので、長い目で見ていただくことが大事です。あとは、日本の保育園は4月1日生まれの子と、ほぼ1年後の3月30日生まれの子が一緒に共存する場所。いくら同じクラスでも、成長に差が出やすいんです。そういう環境ということも理解して、その子のペースを尊重してあげてほしいと思います」
●幼児にはできないことがたくさんある、だからこそ得意なことを認めてあげるべき
一つひとつの成長を「スゴイね! できたね!」と喜ぶ親と、ほかの子と比べて「やっとできたのね」という目線で安心する親。どちらの接し方をするかによって、子どもの成長にも違いがあらわれるようです。
「あくまでも印象ですが、間違いなくお子さんへの影響はあると思います。前者は自分に自信を持って育っているように思います。必ずしも自分に自信を持つことが100%良いこととは言いませんが、後者の子はできた事に関して自信に結びつかない事の方が多いと思います。引っ込み思案で、自分から動くのではなく、人から言われて動く子になりやすいのかなっていう印象はありますね」
親として、「できない」我が子に対し不安を感じてしまうのは致し方ないこと。しかし、親自身が長い目で見て、できたときに認めてあげる。それが子どもの前向きな姿勢や自己肯定感につながるのかもしれません。
「やっぱり、人間って得意・不得意があって、どちらかというと不得意なものの方が多いじゃないですか? 特に幼児にはできないことがたくさんあります。そのなかでも『僕は着替えが得意だ』などと自信を持てるものが一つでもあれば、不得意な事があってもポジティブにとらえる事ができるんです」
「悩み」というと大げさかもしれませんが、保育園に通うくらいの幼い子どもでも、親からのプレッシャーを無意識に感じ取っている模様。そうしたプレッシャーを軽減するためにも、大らかに成長を見守る姿勢が大事なのかもしれません。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)