そこで、NTT東日本関東病院の産婦人科で主任医長を務める杉田匡聡先生に妊婦と冷えの関係性について聞いた。
●妊娠中の冷えはどこまで気にすればいい?
「冷やしてはいけない」という情報を気にするあまり、冷えに対して過度に心配をしてしまう人もいるだろう。なかには、暑い夏でも靴下やレッグウォーマーをはいて歩いている人もいる。
しかし、「妊娠中だから、夏でも体を温めないといけないというわけではありません」と杉田先生は言う。
「昔からの風習として、『妊娠中は冷やしてはいけない』というのがあるせいか、冷えを気にされる方もいます。ただ、暑いのに長袖を着て靴下をはいて外に出る必要はありません。マタニティスイミングも、本人が冷たいことが嫌だと感じるなら控えた方がいいですが、禁止事項ではない。優先したほうがいいのは、ご本人が快適かどうかです」(杉田先生、以下同)
暑がりの人もいれば、寒がりの人もいる。だから、自分がいま「寒い」と感じていなければ無理に体を温める必要はないし、冷えを感じるようなら靴下をはけばいい。「こうすべき」という意見に振り回されず、個人レベルでストレスなく過ごせる状態が大切のようだ。
●自分が快適な状態であるかを基準に考える
「ただし、冷えは子宮を収縮させてしまうので、お腹は冷やさないほうがいいです。とはいえ、おへそが出る服装でなければ、気にしすぎる必要はありません。サンダルやショートパンツも寒いと感じるならやめておいたほうがいいくらい。エアコンの効いた室内で体温調節ができるように外出時にはカーディガンなどを持ち歩くのもいいですね」
家庭でのエアコン使用に関しても、神経質になりすぎないほうがいいそう。「28度にしたほうがいい」といった温度設定もとくに設けられてはいない。
「外出から帰ったら、暑いのでエアコンをつけますよね。そこで、風にあたって涼むのも、一時的ならいいと思います。ずっとエアコンの冷気にあたったままだと、妊娠中じゃなくても風邪をひいてしまいます。汗がひいて部屋もある程度涼しくなってきたら、エアコンの温度設定を変えるなど室温管理をするといいのではないでしょうか」
「冷え」に関す情報には、「難産になる」「逆子になる」といった妊婦を不安にさせるような内容が書かれていることもある。「自分が快適でいられる方法」を最優先すれば、情報に惑わされることも減るのかもしれない。
(取材・文:畑菜穂子 編集:ノオト)