●どれだけ子どもに時間を費やせたとしても“渇望感”はなくならない
時間に限りがあるなかでの子育ては「どうやって折り合いをつけるか」がポイントになる、と堀江さん。
「子育ては、突き詰めてやろうと思えば、いくらでもやることがあるものですよね。母親として納得できるほど関与できているかといえば、だいたい皆さん不足感を常に抱いていらっしゃると思います。はたから見て『共働きなのに、ほんとに頑張ってるなぁ』と思うお母さんですら、満足していないとおっしゃることも。ということは、つまりどれだけ時間をかけられたとしても、子育てへの“渇望感”はなくならないのだと思います」(堀江さん、以下同)
とはいえ、24時間まるまる育児に時間を費やせるわけでもなく、凝り始めるとキリがありません。そこで、まずは子育てでこだわりたいこと、譲れないことの優先順位をつけることが大事になるようです。
「もし手作りのお菓子やキャラ弁を作ってあげたい、と思ってもフルタイムの仕事をしていて時間が足りない……となれば、その点はあきらめて、子どもとのスキンシップを優先しようとか、絵本の読み聞かせをしてあげようとか、どこまでやるかを考えることになります。『自分の生活にあったレベルだと、こだわれるとしてもこの辺りまでだな』、という基準を設定し、自分と夫と子どもの三者が納得できるように優先順位をつけていけるといいのかなと思いますね」
●夫との“平等な家事&育児分担”に固執し過ぎない
また、仕事と育児のバランスに折り合いをつけるうえで、自分と夫との間に“平等感”を求めすぎるのは失敗のもとだといいます。
「夫婦ともに働いている以上、家事や子育ては平等にやるべきと考える気持ちはとても理解できます。ただし、相手に『自分と同じくらい家事や育児に関わってもらうこと』を期待するのは、夫婦の溝を深めることになりかねない。“どこまでやるか”の価値観は人によって異なりますし、自分の基準を押し付けることは夫婦関係においてあまり望ましいこととはいえません。
よくあるのは、『子どもをお風呂に入れて』と夫に頼んでも、自分がいつもやるように丁寧に洗ってくれなかったり、クリームを塗らずに服を着てしまったりして、『自分はここまでやっているのに、どうしてあなたはこうなの!?』とやり直してしまうパターン。それでは誰だって、またやってみようとは思えなくなってしまいます。『ま、クリームは後でまた塗ればいいか』とか『まず手伝ってくれたことを認めよう』とか、心のゆとりがほしいところですね」
大事なのは、相手の価値観や仕事の詰まり具合も踏まえながら、家事と育児の役割を分担していくことだといいます。
「なにがなんでも“平等であること”を重視するのではなく、まずはお互いが置かれている状況を理解し合うことが大切です。たとえば、夫としてはもっと積極的に家事や育児を手伝いたい気持ちはあるのに、じつはいま昇進がかかっていて、どうしても仕事に時間を割きたい、という時期もあるはず。それは、妻としても尊重して、多少家事と育児の参画時間が短くても、一時的なら許してあげてもいいと思えるかどうかだと思います。そうした考え方をお互いに大事にしていくうえでも、日頃から話し合いやすい雰囲気を出すように心掛けることは欠かせないでしょう」
“育児を妥協したくないのに時間が掛けられない”“共働きなのに夫が手伝ってくれない”、忙しいワーママをとりまく悩みは尽きません。ただ、嘆いているだけでは状況は改善されないもの。仕事に家事、そして育児と慌ただしく過ぎる毎日のなかでも、パートナーである夫の考え方を知ろうとすることが大切なようです。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)