共働き子育ての落とし穴とは?

第3回 どうあるべき? 共働き家庭の子育て
共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回る時代、育児をしながら働く女性の存在が当たり前になってきています。しかし、共働きだと夫との家事分担が上手くいかなかったり、子どもとの時間を満足に持てなかったりとネガティブな側面も否めません。

共働きで子育てするうえで、失敗に陥りがちなポイントを知りたい! ということで、企業などを対象に働き方のコンサルティングを行う、株式会社ワーク ・ライフバランス所属の堀江咲智子さんにアドバイスを貰いました。

●パートナーとの価値観のズレが子育てにも影を落とす

共働き家庭が“上手く回らず”に、ギスギスしてしまうときは、「パートナーとの価値観のすり合わせができていないのでは?」と堀江さんは指摘します。

「たとえば、夫が“父親が働き、母親は専業主婦”の家庭に育っているとします。すると、どうしてもその経験をもとに家庭生活をとらえてしまい、共働き世帯のあるべきイメージをうまく持てないことがあります。そのため、家事は妻中心になり、言われないと手伝わなかったり、そもそも手伝うことを億劫そうにしたりといった態度になりがち。ただ、これは仕方がないことで、まずは妻側からも価値観を“共働き仕様”にしていくことが必要です」(堀江さん、以下同)

育ってきた環境が違うのは致し方ないこと。価値観の相違があってもイライラせず、相手の考え方も受け入れながら「自分がどうしたいか」を夫婦で話し合うことが大事なようです。そのうえで、お互いにどうやってカバーしていくかを確認し、生活に落とし込んでいくことが必要だと堀江さんは言います。

「もし夫が本音の部分で、『母親は仕事よりも子どもとの時間を優先するべきだ』と考えていたとしたら、生活を営むうえで夫婦関係が微妙にズレていくと思います。そのため、夫のバックグラウンドや価値観を汲み取ったうえで話をしていかないと、つい感情的になって喧嘩に発展しやすくなるのではないでしょうか。夫婦内で価値観のすり合わせができてないと、お互いが納得いく結論に辿り着きにくいはずです」

共働きの場合、まずはどうやって家事と育児を役割分担するかを考えがち。しかし、役割分担をしたところで円滑に進まなければ意味がありません。そのうえでも、まずはお互いの価値観を知ることが大事なのでしょう。

共働き子育ての落とし穴とは?

●毎日の些細なコミュニケーションを大切に

では、具体的にどのようにして、価値観をすり合せればいいのでしょうか? 

「妻が改めて時間をとって話し合おうと言っても、そもそも夫がなかなか話し合いのテーブルについてくれないこともあると思います。ですから、子育てに限らず、『何が好きで、何が嫌い』など普段の会話のなかで、さりげなく相手の価値観を汲み取ってみましょう。そして、自分が思い描く人生と、パートナーが望む人生を踏まえ、『今の私たちに合っているのはこういうやり方かな』と自然に語り合える空気をつくること。自分の考え方と違和感があるなと思ったときに、素直に口に出せる関係性の土台を日々つくっておくことが大事なんじゃないかなと思います」

家事も子育ても手伝ってくれない、とやみくもにボヤくのではなく、まずは自分がどう生きたいか、その生き方を実現するうえで、夫に何をどう協力してもらいたいのかを考えることが先決なのかも。

「たとえば、週1回の洗濯で許せる夫もいれば、毎日洗濯しないと許せない夫もいる。妻側も同じです。毎日洗濯してほしい人と、週に1度でまとめて行いたいという人が結婚して共働きで育児をしながら家庭を“まわす”となったら、どう折り合いをつけるのか、という話になるわけです。それをどちらかが我慢している状態だと、ある日突然ストレスが爆発して大喧嘩になりかねないでしょう。それが続くと子どもにも悪影響だと思います」

共働きだと、つい「家事と育児を協力し合うのは当然」と思ってしまいがち。しかし、もしかしたら夫は妻に家に居てほしいと思っているのに、それが叶わないことをストレスに感じている、なんて可能性もゼロではありません。相手にそうした火種はないか探る意味でも、日々のコミュニケーションが大事ということなのかもしれません。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

堀江咲智子
堀江咲智子
株式会社ワーク・ライフバランス
2012年より株式会社ワーク・ライフバランスにて働き方見直しコンサルタントとして活動。生き生き働ける職場づくりを成果を下げず残業を減らすことを得意とする。自身も1児の母として子育てと仕事を楽しんでいる。
2012年より株式会社ワーク・ライフバランスにて働き方見直しコンサルタントとして活動。生き生き働ける職場づくりを成果を下げず残業を減らすことを得意とする。自身も1児の母として子育てと仕事を楽しんでいる。