人間が健康的に生きる上で重要な役割を果たしている「自律神経」。自律神経は呼吸や血液循環、消化など様々な領域を支配しているため、乱れていると体調不良を引き起こすこともあります。今回は、自律神経と体調不良の関係について、「なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック」の青山先生に解説していただきました。
監修医師:
青山 尚樹(なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック)
日本大学医学部卒業。その後、日本大学医学部附属板橋病院、本庄総合病院、相模原協同病院、駿河台日本大学病院(現・日本大学病院)などで脳神経外科医として経験を積む。2022年、東京都目黒区に「なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック」を開院。日本脳神経外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、PAPT研究会認定医・指導医。
自律神経の働きとは?
編集部
そもそも、自律神経とはなんですか?
青山先生
自律神経は、脳の視床下部によってコントロールされている神経です。生命を維持するために重要な働きをしています。
編集部
例えば、どのような働きをしているのでしょうか?
青山先生
自律神経はその名のとおり自律して働く神経であり、人の意思とは関係なく、血圧、体温、呼吸、心拍、消化、代謝など様々な機能を司っています。自律神経が24時間休むことなく働くことで、人間は体温を一定に保ったり、寝ている時も呼吸を続けたりといった恒常性を維持することができるのです。
編集部
自律神経はどこに位置しているのですか?
青山先生
自律神経は、全身にくまなく張り巡らされており、「交感神経」と「副交感神経」があります。交感神経はいわばアクセル役として日中に優位になり、人間の活動や興奮を促す働きがある一方、副交感神経はブレーキ役として夜間に優位になり、休息やリラックスを促す働きを担っています。交感神経と副交感神経はシーソーのように、どちらかが優位のときにはもう片方が劣勢になり、常に拮抗した働きをしています。両者のバランスが対等になることで、人間は心身の健康を維持することができるのです。
体調不良や頭痛と自律神経の関わり
編集部
「現代人は自律神経が乱れがち」と聞きます。なぜですか?
青山先生
現代人は常に多くのストレスにさらされているからです。医学的にストレスは下記の4種類あると考えられており、これらのストレスが自律神経のバランスを崩す原因になります。
物理的ストレス:寒暖差や騒音など
心理的ストレス:仕事や家庭、経済的な悩みなど
生物的ストレス:食後の血糖値の変動や睡眠不足など
化学的ストレス:大気の汚染やタバコ、最近では芳香剤の匂いなど
編集部
なぜ、ストレスで自律神経が乱れるのでしょうか?
青山先生
ストレスがかかると、脳が疲れてしまうからです。前述のように、自律神経は脳の視床下部の支配下にありますが、ストレスが強いと視床下部へストレス信号が伝達され、自律神経の働きが乱れてしまうのです。
編集部
脳がストレスを感じるから、自律神経が乱れるのですね。
青山先生
それから、視床下部は内分泌をコントロールする司令塔としての役割を持っていますが、脳がストレスを感じると、視床下部からの指令により副腎からは「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールの分泌が活発になると血糖値や血圧が上昇したり、胃酸の分泌が抑制されたりします。そのため、交感神経が過剰に優位な状態が続きます。
編集部
交感神経が過剰になると、体調不良や頭痛などが起きるのはそのためですか?
青山先生
はい。交感神経が過剰になると自律神経のバランスは崩れ、コントロールできなくなります。自律神経のバランスが長期間崩れると自律神経失調症の状態になり、体調不良や頭痛などが引き起こされます。そのため、自律神経失調症による体調不良を治すには自律神経のバランスを改善し、交感神経と副交感神経の均衡を整えることが必要です。
配信: Medical DOC