進む賃金のデジタル払い!賃金支払いの5原則と賃金デジタル払いとの関係は?

進む賃金のデジタル払い!賃金支払いの5原則と賃金デジタル払いとの関係は?

■賃金支払の5原則の例外

以上のように、賃金支払いの5原則は全て労働者の保護を目的としているので、例外が認められています。「全額払いの原則」を貫けば、会社は社会保険料等を控除して労働者へ支払うことができなくなります。夏冬年2回の賞与も「毎月1回以上の原則」に反することになってしまいます。「一定期日払いの原則」を貫けば、臨時の賃金さえ支払えなくなります。これらは不合理です。労働者の保護を目的とした労働基準法の趣旨にも反することになりかねません。

そして、給与の銀行振込も、通貨で直接労働者に支払うわけではないため、賃金支払いの5原則には反しますが、労働基準法24条の「厚生労働省令で定める賃金について確実な支払いの方法」として例外的に認められています。

銀行振込に加え、資金移動業者への賃金支払いも、労働基準法24条の枠組みの中で新たに認められたのです。キャッシュレス決済の普及と多様なニーズに対応するため、厳格な要件のもとで新たな支払方法が認められるのは、時代の流れと言えるでしょう。

今回の記事でご説明した賃金支払いの5原則と例外は、会社の就業規則の賃金の章(又は賃金規程)に取扱いが定められていると思います。ご確認してみて下さい。

■まとめ

今回は、賃金のデジタル払いの背景にある考え方について触れました。労働基準法は働く上での法律であるので、時代とともに変化していきます。しかし、決して変わらないことがあります。それは、労働者を保護する趣旨の法律であるという点です。全ての法律には制定された目的(立法趣旨)があります。法律が絡むニュースは法律の立法趣旨を念頭においていただくと、より理解が深まるのではないでしょうか?

(小嶋 裕司/社会保険労務士)

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