●授業で発表できないことを親がうるさく言ってしまうのでは、かえって逆効果
「ハキハキ積極的に発言しているお子さんを見てしまうと、ついモジモジしているわが子を心配してしまいますね。でも、これについては、あまり気にしなくていいです。元教師の私が言うのですから確かです」(親野先生 以下同)
こういった違いは、その子の性格によるものが大きいという。
「なかには、全然わかってなくても“ハイハイ”って手を挙げる子もいます。それはそれで、その子の良さがありますし。そいう子は、調子のいいところを活かしていけばいいんです。可愛いじゃないですか(笑)。逆に、手を挙げられないのも持って生まれた性格もあるんです。だから、『なんで手を挙げないの!』とか、どうか言わないでください。それはかえって逆効果で、余計に委縮してしまいます」
では、親としてどのように対処したらいいのだろうか? 例えば、授業参観前日から手を挙げると張り切っていたわが子。しかし、授業参観当日は発表したい様子は十分に伝わってきたものの、結局手を挙げられなかった。そんなわが子へのあなたの対応は、次のどのタイプだろうか?
A.「ちょっとがっかりしちゃった次は頑張ってよ!」
と言う
B.「発表だけが勉強じゃないから、気にしなくていいんだよ」と言う
C.「発表したくてうずうずしていたね。手も上がりかかっていたね」と言う
D.その問題には触れないでそうっとしておく。
親野先生は以下のように話します。
「子どもが落ち込んでいるときは、心のなかにあることを、どんどん話させることがとても大事です。つまり、Cのように誘い水をかけることで、子どもは自然に自分の内面のことを語りだすのです。」
Aを選んだ人
「“がっかりした”とは、わが子に絶対に言ってはいけない禁句です。一番がっかりしているのはお子さんです。その上で、さらに親から“がっかりした”と言われるのは、とてもつらいことです。子どもは、自分がまるごと否定されたように感じ、場合によっては親への不信感に結び付きかねない言葉でもあるので、気を付けてください」
Bを選んだ人
「この子の場合、自分をなんとか変えようという気持ちのある子です。今もその気持ちを抱き続けているかもしれません。それなのに、親がこのように言い切ってしまったら元も子もありません。子どもを慰めようという気持ちはわかりますが、まずはお子さんが思っていることを引き出し、聞いてあげましょう」
Cを選んだ人
「この対応は、発表できなかった結果ではなく、やる気があったことを認めています。このように言うと、子どもは自分の思っていることを素直に話しはじめます。そして、親はその言葉に応じて対応を変えることができます」
Dを選んだ人
「これは、不自然ですよね。Cのようにうまく話しを聞き出し、子どもの鬱屈した気持ちを吐き出させることでストレス解消にもなるのです。また、自分を見つめなおすきっかけにもなります」
●子どものころ授業で発表できない子もやがて積極的に
親が何気なく言った言葉が子どもの心には大きく響くので、気を付けたいもの。
「授業で発表できないからといって将来も消極的な子になるとも限りません。実際、子どもの頃は積極的に手を挙げて発言したりできなかった子が、大人になって会社で見事なプレゼンをしたり、人前に出るエンターテイナーになることもあるのです。先のことは誰にもわかりません。どうか、できないことばかりを憂えるのではなく、できることに目をむけて自信を持たせるようにしてあげてください」
自信を持たせるコツについてもお聞きすると…、
「日頃から、子どもの好きなことややりたがることを応援して、それがたっぷりできるようにしてあげてください。すると、得意なものができて自分に自信がつきます。それで、授業中の発表が増えることもあります」
今、発表できるか、できないか…が重要なのではなく、わが子が自信を持って前向きに生きていけるように応援してあげることこそが、なにより大事な親の役目なのです。
(構成・文/横田裕美子)