【上部が削がれている割り箸】実はちょっと特別なんです♪立派な名称をいただく割り箸!その意味とは!?

【上部が削がれている割り箸】実はちょっと特別なんです♪立派な名称をいただく割り箸!その意味とは!?

普段、何気なく使っている割り箸ですが、高級料亭や和食料理店などで使われる割り箸の中には、「お客様へのおもてなしの心」や「店の品格」「料理の味に自信があること」などを表す、特別な割り箸があるんですって。ご存じでしたか?持ち手の上部が斜めにカットされているのが特徴で、「天削箸(てんそげばし)」というそうです。本日は、このちょっと特別な割り箸、「天削箸」について深掘りしました!

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サービス業歴50年のテーブルマナー講師

「天削箸(てんそげばし)」について紹介していたのは、テーブルマナー講師であるsmile先生のTikTok。smile先生こと海野秀三郎さんが、和食・洋食の基本的なマナーや作法、器の使い方などを紹介しているとってもためになるTikTokです。

ちなみに、海野さんはサービス業界で50年近いキャリアのある、ホテルの総支配人などを務めてきた方だそう。TikTokのフォロワー数は2万人超え、インスタグラムのフォロワー数も10万人に上る人気ぶりです。

「天削箸」ってどんな割り箸?

そんなsmile先生が紹介していた「天削箸」。どんな割り箸かというと、こんな割り箸。

画像出典:「つきじ 折峰」オンラインショップ

「天(持ち手の上部)」を斜めに削ぎ落とし、木目の美しさを強調した割り箸のことだそうです。

画像出典:「つきじ 折峰」オンラインショップ

smile先生曰く、この天削箸には、「お客様に箸の木目を楽しんでもらおう」という、お店のおもてなしの心が込められているとのこと。さらに、「わたしのお店では恥ずかしい料理を出していませんよ」という、お店の”味への自信”も表しているそうです。

また、smile先生は言っていませんでしたが、割り箸の上下がわかるという実用的な面もあるよう。

天削箸という名前は知りませんでしたが、この形の割り箸、わたしも使ったことがあります。

立派な割り箸だなと思ったくらいで、お店のおもてなしの心が込められているとは、つゆ知らず。木目を見ることなく、目の前に出された料理を一心不乱に食べた記憶しかありません…。

”木目を楽しむ”だなんて、心のゆとりを感じる優雅な振舞いですよね。教養があると視野が広がり、楽しめることも増えて、生活が彩られるはず。憧れちゃいます。

それに、箸の持ち手の上部を「天(てん)」というんですね。これも知らなかった…。知らないことだらけです。

また、smile先生は、こんなこともおっしゃっていました。

「天削箸の天の角度は神社の屋根の角度」だと。

なんか、興味深いですよね。

この点について詳しく説明していなかったので、調べてみると、さらにおもしろいことがわかりました。

天削箸は、1916年(大正5年)頃に、奈良県吉野郡下市(しもいち)町で考案されたものだとか。「天」を削いだ形は、神社の屋根にそびえる「千木(ちぎ)」を模しているそうです。

千木とは、社殿の屋根に見られる、交差して高く突き出ている部分のこと。

ここです。

画像出典:photoAC

もともとは、屋根の強度を高めるための構造材でしたが、現在では、ほとんどの神社の千木が屋根の装飾として造られているそうです。

確かに、天削箸の天の部分と似ていますね。

でもなぜ、神社の千木をイメージしたんでしょう?

調べてみましたが、残念ながらよくわかりませんでした。

ですが、日本では古来から、箸には神様が宿り、箸は神様と人をつなぐかけ橋であるという考え方があるよう。それも関係しているのかなと思います。

また、箸の上部を「天」というのも、神様に関係があるのかも。神様の住む世界を”天界”というし、箸を持ったとき、「天」の部分が天(空)を向きますしね。どうなんでしょう?

これも調べてみましたが、よくわかりませんでした(笑)。

そして、天削箸を考案したという奈良県吉野郡下市町。実はここ、「割り箸の発祥の地」でもあるそうです。

吉野というと吉野杉や吉野桧が有名で、林業が盛んな地域。あっ、桜の名所としても有名ですよね。

「天削箸誕生の地」は「割り箸発祥の地」!?

下市の箸にまつわる歴史は、室町時代初期(南北朝時代)、下市の人が吉野の皇居にいた後醍醐天皇に、杉の箸を献上したことから始まるそう。

後醍醐天皇は、その箸の美しい木目と芳香を気に入って愛用し、公卿や僧侶の間にも広まっていったとのことです。

ちなみに、「割り箸」という名前は「木をナタで”割って”作る箸」が由来になっているそうなので、後醍醐天皇が使ったのは、おそらく、吉野の杉を割って作った”割り箸”なんでしょうね。

後醍醐天皇が、真ん中でパカッと割る割り箸を使う姿を想像すると、ちょっとおもしろいけど(笑)。


そして、真ん中でパカッと割るタイプの割り箸が誕生したのは、1877年(明治10年)。下市の寺子屋の教師・島本忠雄という方が考案したそうです。

吉野杉のきれいに割れる”割裂性”を生かし、酒樽の材料(樽丸)に使われた吉野杉の端材で作ったんですって。

当時のデザインは、角を取ったり、割れ目に溝をつけるなどの加工が施されていないシンプルなもの。江戸時代、「丁銀」「丁六」と呼ばれて広く出回っていた銀貨のように、世の中で広く使われて欲しいという願いを込めて「丁六箸」と名付けられたそうです。

画像出典:「箸育キッズ」HP

捨てられる端材を有効活用するとは、時代の先を行く”エコ”な発想ですよね。すばらしい。

そして、島本先生の発明した丁六箸は商品化され、東京の箸商人によって、全国に広がっていきました。

その後、いろんなタイプの割り箸が作られ、1916年(大正5年)頃、この下市で「天削箸」が誕生したというわけです。

画像出典:「箸育キッズ」HP

現在でも、下市などの吉野地域では割り箸が作られています。そして、その材料は、吉野杉や吉野桧の間伐材を建築用に製材した後に残る端材を利用しているそうです。

自然の恵みを大切に最後まで使い切るという”エコ”な精神は、今なお、吉野で受け継がれているんですね。

…ということで、少々、横道に逸れましたが、今回は、ちょっと特別な高級感のある割り箸、天削箸について紹介しました。

天削箸は、割り箸の中でも高級品とされていて、ホテルや高級料亭などで使われることが多いそう。素材には、吉野杉に代表される杉のほか、竹やトド松、桧などが使われるようです。

また、家庭でも、特別な日や祝い事などの特別な場面で使うといいそうですよ。

ちなみに、通販サイト『モノタロウ』では、竹の天削箸が15膳入り税抜119円(1膳あたり7.9円)、国産桧を使った天削箸が10膳入り税抜158円(1膳あたり15.8円)で販売していました。このほか、折箱専門店『つきじ 折峰』のオンラインショップを見ると、一番高い天削箸は竹を使ったもので、50膳で税抜1,580円(1膳あたり31.6円)、吉野杉の天削箸は50膳で税抜910円(1膳あたり18.2円)でした。

価格はいろいろみたいですね。

ダイソーの割り箸は天削箸ではありませんが、50膳で税抜100円(1膳あたり2円)。それと比べるとちょっと高いものの、手が出ないという価格ではありませんね。ご参考までに。

今後、「天削箸」で食事をする機会があったら、そのお店の料理への自信を感じつつ、料理の前に、まずは、箸の木目の美しさを楽しみたいなと思います。…おいしそうな料理を前に、出来るかしら?(笑)

※記事内で紹介した商品は掲載当時の情報であるため、在庫状況、価格などが異なる場合がございます。


<参考文献>

『菱勝本店〜箸の種類〜』
http://www.hashikatsu.com/w0230/page_21.htm

『奈良の木のこと〜割り箸ってサスティナブル?「吉野の割り箸」がエコな理由〜』
https://naranoki.pref.nara.jp/magazine/know/nara-yoshinowaribashi/

『箸育キッズ〜お箸のはなし:割り箸の種類〜』
https://minnano084.com/kids/hanashi-waribashi-shurui/

『和泉屋〜食器・厨房コラム:割り箸の種類【形状】〜』
https://izumiya-inc.co.jp/other/1091.html

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