ABEMAにて3月中、数回にわたって全話無料一挙放送が決定した「葬送のフリーレン」 / (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
2023年秋にTV放送され、瞬く間に社会現象級のヒットを記録したアニメ「葬送のフリーレン」。初回2時間スペシャルというインパクトもさることながら、毎週のようにTwitter(現X)でトレンド入りを果たし、各配信プラットフォームでも常にランキング上位をキープするなど、アニメファンのみならず幅広い層から支持を受けたのは記憶に新しいところ。昨年9月には、TVアニメ第2期の制作も決定し、2026年1月から放送予定となっている。ABEMAでは、3月16日(日)昼5:00ほか3月に数回にわたり第1期全28話の一挙放送を実施。本記事で、ABEMAでの一挙放送を前に、改めて本作の魅力とフリーレンたちの旅路を振り返っていこう。(以下、ネタバレを含みます)
■冒険ファンタジーなのに、静謐で叙情的
魔王を倒した勇者一行の魔法使いフリーレンが、“人を知る”ために新たな旅に出るこの物語は、「魔王を倒す冒険」そのものにスポットを当てた従来の冒険ファンタジーとは一線を画しており、全体に静謐で叙情的な雰囲気が流れているのが特徴だ。エルフである主人公・フリーレンは超長寿のため、短命な人間との時間感覚のズレから生じる切ない出会いと別れ、心の交流が大きな見どころとなっている。また今の旅の様子だけでなく、随所に魔王討伐時代の回想が描かれることにより、すでに亡きキャラクターへの理解を段階的に深めていける構造になっているのも秀逸だ。マッドハウスによる圧倒的な映像美やEvan Callによる感動的な音楽、実力派声優陣の熱演などもあいまって、アニメーションとして非常に高いクオリティに仕上がっていることも、2023年を代表するアニメ作品になった理由だろう。ここからは具体的に、第1期全28話を通じて描かれたフリーレンたちの旅を、名シーンと共に振り返っていく。
●ヒンメルの死とフリーレンの後悔(第1話)
物語の冒頭、50年ぶりに再会した老いた勇者・ヒンメルは、その後静かに息を引き取る。エルフであるフリーレンにとって、人間の寿命はあまりにも短く儚いもの。それゆえに相手のことを深く知ろうとしなかったフリーレンだったが、ヒンメルの死に接して初めて後悔の念を抱く。ヒンメルの葬式で、「…人間の寿命は短いってわかっていたのに… なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」と涙を流すフリーレンの姿は、物語全体のテーマを象徴するもので、その後のフリーレンの旅の目的にも繋がる名シーンとなっている。
●フェルンとの出会いとハイターとの別れ(第2話〜4話)
ヒンメルの死をきっかけに、フリーレンは“人を知る”ための旅に出る。道中、勇者一行の僧侶・ハイターに育てられたフェルンを弟子にしたフリーレンは、彼女との交流を通じて少しずつ人間との関わり方を学んでいく。一方、聖職者でありながら凡俗にまみれ、フリーレンから“生臭坊主”と揶揄されていたハイターだが、死ぬ最期の瞬間までフリーレンやフェルンのことを気遣う優しさが印象的で、ヒンメルと同じく、死後もフリーレンに大きな影響を与えることとなった。
アニメ「葬送のフリーレン」より / (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
●シュタルクとアイゼンの絆(第6話)
ハイターの死後、フェルンを連れて旅を続けるフリーレンは、勇者一行の戦士・アイゼンの弟子であるシュタルクと出会う。過去のトラウマから臆病になり、強敵を前に震えるシュタルクに対し、「アイゼンと同じだ」と告げるフリーレン。恐怖は悪いことではないと知ったことで一歩成長したシュタルクは、老いたアイゼンに代わってフリーレンたちの旅に同行することに。アイゼンとの記憶を思い出しつつ、「師匠の代わりにくだらなくて楽しい旅をたくさん経験して、土産話をたっぷりと持って帰らないと駄目なんだ」と語るシーンは、師弟の関係を超えた固い絆が感じられる名シーンとなっている。
●フリーレン VS アウラ(第10話)
かつて勇者一行に敗れ、身を潜めていた“断頭台のアウラ”。魔王直属の幹部にふさわしい実力をもつアウラと対決したフリーレンは、圧倒的な実力差を示して勝利する。それまで抑制していた魔力を一気に解放し「お前の前にいるのは、千年以上生きた魔法使いだ」と名乗りをあげるシーンは、フリーレンが初めて本気の片鱗を見せた瞬間であり、彼女が魔族から“葬送”のふたつ名で恐れられている理由が明らかになるエピソードでもあった。心に沁みいる名場面の多い本作において、バトルで視聴者を大興奮させたという意味でも印象深いシーンとなっている。
●ヒンメルからのプロポーズ?(第14話)
鳥型の魔物に襲われたことにより、ヒンメルからもらった「鏡蓮華」の指輪を紛失してしまったフリーレン。「鏡蓮華」の花言葉が「久遠の愛情」であることを知ったフリーレン は、それはヒンメルも知らなかっただろうと思いつつ、在りし日の記憶を思い出す。ところが回想に登場するヒンメルは、花言葉の意味に気づいているかのような表情を見せ、さらには協会らしき建物の前でフリーレンの前に跪くと、彼女の左手の薬指に指輪をはめるのだった。このシーンは、ヒンメルが長年秘めていたフリーレンへの想いが端的に示されているだけでなく、それと同時に人間とエルフの寿命の違いすらも意識させるもので、シリーズ屈指の名シーンとなっている。
●魔法都市オイサーストでの試験(第18話〜)
魔法都市オイサーストへとやってきたフリーレンたちは、この先の地へと進むために「一級魔法使い」の試験を受けることに。ここからは試験に参加する個性豊かな魔法使いたちが多数登場し、第一次、第二次、最終試験と、フリーレンやフェルンと競い合う展開が続いていく。多種多様な魔法のエフェクトをはじめ、臨場感と迫力たっぷりなアクション作画に注目だ。
アニメ「葬送のフリーレン」より / (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
●フリーレン、旅立ちの流儀(第28話)
最終試験の結果、フェルンが合格。フリーレンは試験を通じて知り合った魔法使いたちと軽い言葉を交わし、オイサーストを旅立っていく。フェルンから「ずいぶんあっさり別れますね」と言われたフリーレンは、ヒンメルとのやり取りを思い出す。かつてフリーレンと同じことを言われたヒンメルは、「涙の別れなんて、僕たちには似合わない」と前置きしつつ、照れくさそうに「だって、また会ったときに恥ずかしいからね」と答える。直後、miletが歌うエンディングテーマ「Anytime Anywhere」が流れ出すと、画面にはこれまでの旅の道中で知り合ったキャラクターたちの現在の様子が次々と映し出さていく。やがてカメラがフリーレンへ戻ってくると、フリーレンはそっと微笑んで「また会ったときに恥ずかしいからね」と、ヒンメルと同じ言葉を紡ぐのだった。“出会い”と“別れ”をテーマとする本作のラストを締めるにふさわしい、見事なエンディング演出となっている。
アニメ「葬送のフリーレン」より / (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
「葬送のフリーレン」は異世界を舞台としたファンタジー作でありながら、現代社会に生きる我々にも、人生のヒントを与えてくれる作品。観たあとには優しい気持ちになれたり、何気ない日々の大切さに気づいたりもするだろう。まだご覧になっていない人は、これを機にぜひABEMAでの一挙放送をチェックしてみてはいかがだろうか?
◆文/岡本大介
アニメ「葬送のフリーレン」第2期決定のティザービジュアル第2弾 / (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
配信: WEBザテレビジョン
関連記事: