性加害者から子どもを守るには
――公園などで、性加害者から子どもを守るためにはどのようなことに気をつければいいでしょうか。
今西 日本では登下校や放課後に公園などに遊びに行くとき子どもだけで出かけますが、これは世界的に見て特殊な環境と言えます。アメリカでは、子どもだけで外出させると虐待として通報されますから、子どもだけで外出する、遊ぶ、ということは起きないのです。
日本はよくも悪くも安全で、子どもが1人で登下校したり遊びに行ったりする文化があります。それをすぐに欧米のように変えることは難しいでしょう。現実的な対策としては、
・公園で遊ぶときには子どもから目を離さないこと
・登下校は複数人でさせること
・だれかに声をかけられるなど異変を感じたら走って逃げさせること
などでしょうか。密室や隠れた場所は性加害が起こりやすいというデータがありますから、そのような環境を避けるように自己防衛することです。
――園・学校の先生や習い事のコーチとかかわるときはどうでしょうか。
今西 水泳教室や学習塾など、子どもと一対一になるような環境では性加害が起こりやすいと言われています。習い事を始めるときには、その施設や教室などが子どもと一対一にはならない、もしくは一対一になるときはドアを開けておくとか、カーテンを閉めない、といったオープンな空間を作る工夫をしているかどうかを確認するといいでしょう。
私たち小児科医のケースでは、小児科医は小児性被害の疑いをかけられやすいというリスクがあります。私は日本で診察を行うときは、必ず看護師さんが同席の上で診察するか、保護者に診察の様子を見てもらうなど、オープンな空間を意識していました。アメリカの小児科学会では、診察の際のガイドラインもあります。
――新学期、子どもが1人で公共交通機関を利用し始める家庭も少なくありません。
今西 子どもの居場所を確認するには、GPS機能つきの子ども用携帯や、GPSタグなどを利用するといいでしょう。私の娘3人には、GPSタグを持たせています。親のスマホで、娘たちのリアルタイムの現在地を知ることができるので安心です。
ただ、GPSで居場所を確認することはできても、性被害に関してはなかなかカバーできないのが難しいところではあります。ですが、子どもの帰宅時間などに「いつもと帰宅ルートが違う」、「同じ場所で長時間止まっている」など、子どもの異変に気づくことができるでしょう。利用を検討してほしいと思います。
お話・監修/今西洋介先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
小児性被害の加害者は親が多いことや、1日に1000人の子どもが被害に遭っていると試算されることなど、衝撃を受けた人は少なくないでしょう。今回は子どもを性被害から守るための環境面の取り組みについて聞きました。
後編では、性被害から守るための親子での意識の高め方について聞きます。
※1/令和 2 年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 潜在化していた性的虐待の把握および実態に関する調査
※2/一般社団法人Spring「性被害の実態調査アンケート結果報告書①〜量的分析結果〜」(2020年)
今西洋介先生(いまにしようすけ)
PROFILE
新生児科医・小児科医、医学博士(公衆衛生学)、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会の代表理事を務める。「ふらいと先生」の名でSNSを駆使し、小児医療・福祉に関する問題を社会課題として社会に提起。現在は米国在住。3姉妹の父。
配信: たまひよONLINE