当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
健康診断でコレステロール値が高く、脂質異常症といわれたあなた。
脂質異常症は動脈硬化の進行を速める要因の1つです。そして動脈硬化は、自覚症状のないままに心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクを高めます。
そこで今回は、脂質異常症と動脈硬化の関係やメカニズムについてわかりやすくお伝えします。動脈硬化の予防方法についてもお話しいたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
動脈硬化とは
動脈硬化とは、動脈が硬くなり弾力を失った状態のことです。
動脈とは、心臓から全身に血液を届ける血管です。本来動脈はやわらかくしなやかなのですが、24時間収縮と拡張をくりかえしながら血液を送り続けるため、年を重ねるごとに硬くなります。
いわば、動脈硬化は誰にでも起こる血管の加齢現象です。
しかし血中脂質異常や喫煙、高血圧などさまざまな要因が加わると、血管の壁が分厚く硬くなることによって実際の年齢よりも動脈硬化は早く進行するのです。
●動脈硬化の種類
動脈硬化は3種類あります。
・粥状(じゅくじょう)動脈硬化:糖尿病や高血圧、生活習慣を原因として大動脈~中動脈という太い動脈にプラーク(LDLコレステロールを原因としたお粥のような塊)ができて血管が細くなる
・細動脈硬化:高血圧が原因で脳や腎臓の細い動脈に起こる
・中膜硬化:動脈の中膜にカルシウムが溜まって石灰化する
一般的には、粥状動脈硬化を指して動脈硬化と呼ぶ場合が多いです。当記事の動脈硬化も、粥状動脈硬化についてお伝えいたします。
脂質異常症と動脈硬化の関係
冒頭でも申し上げたとおり、脂質異常症は動脈硬化の進行を速める要因の1つです。
そもそも脂質異常症とは、血液中に含まれる脂質のバランスが崩れた状態のことです。
脂質異常症には主に、
・高LDLコレステロール血症:悪玉コレステロール(LDL)が多い
・低HDLコレステロール血症:善玉コレステロール(HDL)が少ない
・高トリグリセライド血症:中性脂肪(トリグリセライド)が多い
の3つがあります。
●動脈硬化が進行するメカニズム
血液中に悪玉コレステロールが多いと、余った分が血管壁に沈着しプラーク(※)をつくります。プラークが溜まり続けると、血管壁が分厚く硬く、詰まりやすい状態になるのです。
(※)白血球の仲間が血管壁の中で悪玉コレステロールを捕食した残骸や、余分なコレステロールのかたまりのこと
また、私たちの体は中性脂肪が多いと、善玉コレステロールが減る仕組みになっています。さらに善玉コレステロールは、悪玉を回収する働きをもっています。
そこで善玉コレステロールが少ないと、余分な悪玉コレステロールが回収されないためプラークができやすくなるのです。
●脂質異常症の人は血栓ができやすいって本当?
結論から申し上げますと、脂質異常症の方は血栓ができやすいです。というのも、血栓は破裂したプラークを修復する際にできた血小板(※)の塊だからです。
(※)血液中の成分の1つで、血液を固める働きがある
脂質異常症の方は血管壁にプラークができやすいため、血栓も発生しやすいといえます。血栓が大きくなると動脈内部をふさぎ、血の流れが止まってしまいます。血の流れが途絶えた臓器は壊死するため、心筋梗塞や脳梗塞が起こるのです。
●脂質異常症の人は動脈硬化が進行しやすいのか
脂質異常症の方は血管にプラークや血栓のできる可能性が高く、動脈硬化が進行しやすいといえます。
動脈硬化は自覚症状のないまま進行します。つまり、ある日突然血栓が動脈をふさいで、心筋梗塞や脳梗塞を起こして命の危険にかかわることもあるのです。
健康診断などで、脂質異常症と診断されたら必ず医療機関にかかって、治療を受けるようにしましょう。
●脂質異常症以外で動脈硬化の進行を速める要因
動脈硬化の進行を速める要因は脂質異常症以外にもあり、
・性別(男性)
・家族歴
・喫煙
・高血圧
・糖尿病
・メタボリックシンドローム
などが挙げられます。
動脈硬化は、年齢と共に自然と進むものなので避けられません。しかし、進行を早める要因には改善できるものもあります。
動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞や脳梗塞の発症を避けるためにも、禁煙や病気の治療を積極的に行いましょう。
配信: サンキュ!