たくさんある予防接種、今は同時接種が当たり前?

第5回 いざという時に慌てないための予防接種ガイド
たくさん種類があって、複数回接種するものも多い、子どもの予防接種。

これまで任意接種だった「B型肝炎」が、2016年10月から定期接種になったように、変化もいろいろあって、把握が難しいけど…。

今、VPD(ワクチンで防げる病気)はどのくらいあるの? NPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」の理事長で、すがやこどもクリニック院長の菅谷明則先生に聞いた。

●乳児期に受けるべき予防接種は最大11種!

「まずは、乳幼児に接種するワクチンを整理してみましょう」(菅谷先生 以下同)

■定期接種(8種)
・B型肝炎
・ヒブ
・小児用肺炎球菌
・四種混合
・BCG
・MR(麻しん風しん)
・水痘(みずぼうそう)
・日本脳炎

■任意接種(3種)
・ロタウイルス
・おたふくかぜ
・インフルエンザ

「定期と任意をあわせると11種。回数でいうと、インフルエンザを除いて、全部で27回以上です。0歳児のうちだけでも6種以上、15回以上になります」

回数が多いだけに、どうしたら…と、とまどう人もいるだろう。そうした問いに対して、「今は同時接種がスタンダードなんですよ」と菅谷先生は言う。

たくさんある予防接種、今は同時接種が当たり前?

●3本以上同時接種は8割以上!

同会では「いつ、どのワクチンを、どのように受けるか」の目安がわかる無料アプリ「予防接種スケジューラー」を提供している。2016年度、2017年度生まれの約11万4000人以上のデータによると、2017年8月にワクチンデビューした人のうち「4本同時接種」と回答した人が約6割。「3本以上」となると、8割以上にものぼるという。

また、ワクチンデビューの平均日数は、生後71.1日だそう。最近では、出産後の早い段階で予防接種への心構えを持っているママが多く、「ワクチンデビューは生後2か月」をしっかり実行している。

ベテランママやおじいちゃんおばあちゃんなどには、「あんな小さな体にワクチンの同時接種なんて、大丈夫?」といわれることもあるけど…。実際のところはどうなのだろう?

「一度に何本ものワクチンを接種しても、それぞれの効果は変わりませんし、副反応の危険性が高まることもありません。また、同時接種で通院回数が減ることのメリットは、ママの負担が軽減されるだけではありません。早く予防ができるようになることこそ、赤ちゃんにとっては最大のメリットです」

●任意接種も定期接種と同じくらい重要!

ところで、ロタウイルスやおたふくかぜなど、「任意」のものは、受けるべきかどうか迷うところも。

「任意のワクチンは費用がかかってしまいますが、定期接種のものより軽い病気というわけではありません。感染したときの大変さや、後遺症のリスクなどを考え、任意接種も定期接種と区別せずに接種するようにしてください」

出産お祝い金を子どものワクチンに利用するなど、予定を立てておくとよいという。

「種類も、回数も多くて、大変!」と思う予防接種。でも、これは、深刻な後遺症が残ったり、命が脅かされたりする多くの病気を、ワクチンで防げるということ。赤ちゃんの健康のために、上手に計画を立てて進めよう。
(取材・文:田幸和歌子 編集:ノオト)

お話をお聞きした人

菅谷明則先生
菅谷明則先生
NPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」理事長
慶應義塾大学医学部卒業。2005年「すがやこどもクリニック」を開院。日本小児科学会専門医、医学博士。2017年7月よりNPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会理事長。
慶應義塾大学医学部卒業。2005年「すがやこどもクリニック」を開院。日本小児科学会専門医、医学博士。2017年7月よりNPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会理事長。