集団塾と個別塾どっちがいい?脳の発達の観点から脳外科専門医の林先生にお伺いしました。

集団塾と個別塾どっちがいい?脳の発達の観点から脳外科専門医の林先生にお伺いしました。

集団塾と個別塾どちらがいい?メリットやデメリットは?そんな疑問について、ご自身も家庭教師や塾講師の経験があるけやき脳神経リハビリクリニック院長の林祥史先生にお伺いしました。

都内で医師としてクリニックを開業しております林と申します。私自身灘中出身、東京大学理科Ⅲ類に入学し、これまで長く小中学生の家庭教師や塾講師を経験して参りました。現在は脳神経外科専門医として診療に従事していますが、専門である脳科学、脳の発達の観点から執筆したいと思います。

お子さんが勉強をするうえで塾に行かせたいと思った場合、集団塾と個別塾、どちらもそれぞれの長所と短所があります。お子さんと講師の相性もありますし、また科目によっても異なってきますので、それぞれの段階でうまく組み合わせたり、適切に選択したりしていけると一番良いと思います。

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」

そもそも、親が子どもの学習環境を整える上で意識していただきたいのは「内発的動機づけを促進し、自律性を促す環境を整えること」だと言われています。勉強したいというモチベーション、すなわち「学習の動機づけ」は、自分から興味を持ち、楽しさを感じて取り組む「内発的動機づけ」と、報酬や評価など外部からの要因によって取り組む「外発的動機づけ」の2種類あります。

一般的に「外発的動機づけ」は短期間しか効力がなく、学習習慣をつけ、安定して成績を上げていくには、最初は「外発的動機づけ」であっても、そこからいかに「内発的動機づけ」につなげていくか、というところが重要となります。一度勉強している科目の楽しさ、覚えることの楽しさに気づき、「内発的動機づけ」が得られたお子様は、自ら進んで勉強に取り組んでくれることが期待できます。

集団塾のメリット・デメリット

そのうえで、集団塾の一番のメリットは「仕組み化された外発的動機づけの提供」と言えると思います。まだ人から言われた勉強よりも自由に遊びたいというお子さんにとって、勉強をすること自体が苦痛に感じることも多々ありますし、興味がわかない科目も多々あると思います。そんな中、どんなに教え方が上手な先生であっても、勉強に取り組んでくれるようになるまでは時間がかかります。

そのような中、集団塾では「いかに子どもに勉強してもらえるか」というところをとてもうまく構築していることが多いです。例えば定期テストに関していうと、クラスメイト同士テストの点数を競い、高得点だとシールをもらえたり、名前が張り出されて優越感を感じられたりするようにするというのも一つの方法です。同じ課題を一緒に取り組んでいる仲間がいるというのも好影響で、一緒に相談したり、励ましあったりしていくような効果も期待できます。そうしているうちに、知的好奇心がはぐくまれ、学問そのものの楽しさに気づいていければ、塾通いの毎日もとても楽しいイベントとなるでしょう。

一方でデメリットは、内容の均一化というところにあります。それぞれ個人の理解度や進捗とあまりにも離れてしまっていると、難しすぎても簡単すぎても、効率が悪くなります。特に受験勉強をしていて最終学年に入ってきた場合、限られた時間内で成績を上げたいというときに、すでに理解度が高いところに時間を費やしてしまっては無駄に終わってしまいます。

個別塾のメリット・デメリット

その点、個別塾や家庭教師だとテーラーメイドに対応できるので、教師のレベルが良ければ適切な課題を与え、効率よく学ぶことができます。集団塾のカリキュラムでフィットしないような、科目ごとの習熟度に波があるお子さんや、特に弱い科目があって基礎から学びなおす必要がある場合などでは、個別塾で効率よく学ぶ価値はあります。

ただしその場合、集団塾と異なりモチベーションの維持が難しいことがあります。最初はやる気があって勉強に取り組めたお子さんでも、2~3か月すると慣れてきてだれてしまうということはよくあります。隣に座って勉強しているようなライバルが見えにくいということも原因の一つでしょう。ですので、個別塾に通塾するのであれば、外部の模試を定期的に受けるなどでやる気を維持できるような仕組みを、ご家庭と一緒に考えていく必要があります。

科目によっても向き、不向きがあります。社会や理科などのいわゆる暗記科目であれば、ある程度均一したカリキュラムで進められるので集団塾で良いことが多いです。一方で算数や国語は個人の理解度の差が大きい分野であり、個別塾の方がよりきめ細かな指導を受けることができます。

余裕があるならお子さんの得意科目に応じて、使い分け、併用していくのが一番良いかと思います。お子さんの塾選びに迷ったときは、今回の話も参考にしてみてください。

けやき脳神経リハビリクリニック

執筆者


林祥史

林祥史

脳神経外科専門医。2005年東京大学医学部卒。亀田総合病院での研修を経て2009年より北原国際病院にて脳神経外科医として研鑽を積む。2015年よりカンボジアに移住してサンライズジャパン病院を立ち上げ、2020年に帰国。2024年11月に東京都目黒区に「けやき脳神経リハビリクリニック」を開業。

頭痛外来や赤ちゃんの頭のかたち外来、「けやき読み書き教室」などを提供している。灘高在学中から小学生を対象に家庭教師を受け持ち、医師になっても続けている。大手塾講師としても働いていた経験から、日本の教育活動にも関心をもって取り組んでいる。その他、漫画『宇宙兄弟』の医療監修や東南アジアでの医学教育活動など、活動は多岐にわたる。4児の父。

けやき脳神経リハビリクリニック

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