中村アン37歳インタビュー「壁にぶち当たるのが好き。今はたぶん人生で一番、自分について考えている」

中村アン37歳インタビュー「壁にぶち当たるのが好き。今はたぶん人生で一番、自分について考えている」

COVER MUSE ANNE NAKAMURA

プラダのアノラックにロエベのスニーカー、グッチのタンクトップetc.。今シーズンはラグジュアリーブランドからもスポーツ&アウトドアのエッセンスを感じさせるアイテムが続々登場。今月のカバーストーリーでは、そんなキャッチーでパワフルなルックを、中村アンさんがヘルシーかつモードに着こなします。欲しいものだらけで困る!

ジップアップアノラック¥506,000、ワイヤー入りシャツ ※参考色¥170,500、ボウリングバッグ[プラダ スイング]¥522,500 ※全て予定価格(全てプラダ/プラダ クライアントサービス)

ドレープ ジャケット¥801,900、クロップド ドレープ トラウザーズ¥866,800(共にロエベ/ロエベ ジャパン クライアントサービス)


ロングカーディガン¥423,500、ニット¥200,200、ショートパンツ¥162,800、ソックス¥207,900、ブーツ¥225,500(全てフェンディ/フェンディ ジャパン)

Usedのトレンチコート¥88,000(イッセイ ミヤケ)、Usedのスニーカー¥22,000(Y-3/共にk8taondamic.com)、その他スタイリスト私物

タンクトップ¥90,200、ワイドトラウザー¥253,000、Double G ベルト¥59,400、ドライビンググローブ¥115,500、バンブーハンドルバッグ¥594,000(全てグッチ/グッチ クライアントサービス)

INTERVIEW ANNE NAKAMURA

ここからは、中村アンさんのインタビューをお届けします。

ミューズ世代ど真ん中、37歳の彼女の心やからだの変化について、そして仕事への向き合い方について、率直に語っていただきました。

ゆっくりと過ごす時間の中で新しい自分と出会いたい

 30代半ばを過ぎてみると、心やからだに日々訪れる変化は緩やかに見えても、実際には鋭かったりもする。中村アンさんも転換期を迎えているひとりであり、仕事への向き合い方に始まり、ファッションにも如実に変化が表れて、断捨離を重ねるようになったそう。


 


「好きだったものが年齢を重ねるにつれて少しずつバランスをとるのが難しくなってきた実感があります。ここ数年は、30歳くらいのときに着ていた服がなんとなくしっくりこない、同時に似合わなかったものが似合うようにもなってきて、クローゼットを少しずつ入れ替え中です。“手放すのはもったいない”という物差しでは、選ぶ精度が鈍るので、執着はせずに。体形も少なからず変化しているから、ファッションも新陳代謝させていきたいですね」


 


 スポーティなものがちょっと難しく感じていた、と中村さん。今回のスタイリングが攻略のヒントになったようで。

「例えば、ざっくりとしたトレンチコートにスニーカー、そこに赤い靴下。ちょっと大人の遊び心をきかせるのが自分的には新たな発見。ほんのりとした色っぽさがマッチしていて素敵。春になると私もトレンチコートを着たくなります。ただ、持っているのに登場回数でいえば少なくて、ジャケットやレザーのライダースだったり、丈が短いものがどうしても気軽で手に取ってしまう。でも、トレンチを着るとドラマチックな気分になれるというか、羽織るだけで雰囲気が味わえる。そういうのも込みで楽しみたい。積極的に着ていかないともったいないし」


 最近は同系色のアイテムをレイヤードして着ることにハマっていて、そのキーアイテムとなるのがインティミッシミのインナー。

「ウルトラライトカシミヤシリーズのロンTインナーを6枚ぐらい色違いで買って、これがめっちゃ気持ちいいんです。インナーとしては安いものではないけれど、すごくいいので、会う人みんなにオススメしてます。他にもピエール マントゥーのソックスだったり、イタリアづいてますね(笑)」


 断捨離がきっかけで、好きの密度が高まり、持っているものへの愛着も強くなった。

「何か買うときも、本当に欲しいと思ったら買う、迷ったらやめよう。そのくらいシンプルになりました。昔は迷ってもいつかは着るだろうと購入したけれど、経験上やっぱり着ないんですよね。靴を買っても、そんなにはく機会がないし。今は、手元に何があるのか把握できるくらいの物量が心地いいですし、新しいものを手に入れるなら、まずは一度すっきりさせて余白を作ってから。そうすると自分が何を好きかがクリアになってきたし、再確認できるようになりました。バッグにしても、クタクタしていい味が出た状態が好きで、わざわざ風や雨に当てたりするんです。ザ・ロウのマルゴーも、初期のアイテムなので現行のものより重くて硬い、でも私としては一番かっこよく見える。8年くらいかけて、やっと全体がこなれてきて、自分のスタイルにフィットするようになりました」


 


 端から見ると、いつも活発で忙しそうなイメージがあった。ところが今は、立ち止まって、自分にフォーカスして、見つめ直す時間が増えてきた。これは、また少し変われるチャンスかもしれない、そんな予感もある。

「確かに(笑)。振り返ると常に動いていて、立ち止まっていなかったですよね。休みがあったとしても、ハードにトレーニングをしたり、何かしら動いているほうが好きだったし、それが落ち着くみたいなところもあって。今はたぶん、人生で一番、自分について考えているし、ゆっくりできる時間が増えました。楽しいし、心地がいいけれど、攻めの姿勢を忘れそうになってしまうときも年齢とともにちょっとあります。若さだけの勢いって確実にあって、しみじみとこれが丸くなるということなのかと感じながら。それでも、いざというときは『えい!』と飛び込む気持ちを忘れずにいたいですね」

ドレープ ジャケット¥801,900、クロップド ドレープ トラウザーズ¥866,800、スニーカー¥137,500(全てロエベ/ロエベ ジャパン クライアントサービス)

理由や意味を模索しながらもの作りを重ねていきたい

 4月スタートのWOWOW『連続ドラマW 災』では、捜査一課の刑事・堂本翠を演じる。寝食を忘れるほどの仕事中毒という点で親近感が湧いたという。

「翠は正義感が強く、とにかく犯人を見つけるために信念と熱量を持って捜査に向かう真っ直ぐな人。事件を追うのと同時に、常に『人は理由なく死なない』と考えている。今までに秘書や刑事、海上保安庁(の潜水士)などさまざまな役を演じてきたけれど、その中でも翠が最も仕事人間。その姿勢が分からなくもなくて、むしろ好きだなと思いながら演じました」


 本作に限らずオファーをもらうたびに「なんで私なんだろう?」と頭をよぎるという。

「お芝居はもちろん、他のお仕事でもオファーをいただいた理由を知って、理解を深めてから臨みたい。納得しているかどうかって大事なこと。若いころはいただく仕事をこなしていくことで精一杯だったけれど、今は理由や意味を考えながら、もの作りをしている。面倒くさい人にはなりたくないですけど(笑)、どちらかといえば突き詰めたいタイプかもしれない。そう考えると、理由を求める翠の在り方、知りたがりな部分はすごく私と似ています。タイトルの『災』は、その字の通りで、災いは突然起こるもの。そのことを普段は忘れがちだけど、いつ何時、どんなシチュエーションでも降りかかってくる可能性があることを痛感させられるドラマになっています」


 


 中村さんの役者としての転機は2019年。ドラマ『グランメゾン東京』に出演したこと。

「連続ドラマから昨年のスペシャルドラマ、映画とご縁が続いている中で、長らく第一線で活躍されている錚々たるキャストとスタッフのお仕事ぶりは言葉にならないほど。この作品に出会って、役として感情を出すこと、お芝居の面白さが分かるようになってきたんです。それまではパブリックイメージの中村アンが先行して、それを求められて演じている感覚が常にあったんですね。髪をかきあげて、きらびやかな雰囲気というか。それこそ10年前に出演した作品では、お芝居が分からな過ぎて、キャストのみなさんの本当のすごさが当時は理解できていなかったと思います。今ならもっといろんなことを吸収できただろうなって。何事も本質に気づけるようになるためには、やっぱり時間がかかる。だからこそ続けていかないと。お芝居をしていると、今でも心臓がキュッとなるぐらい緊張したり、ハッと価値観が揺らいだり、たくさんの刺激を自分の人生以上に追体験できる。大人になって落ち込んだり、心がへし折られたり、みんなの前で大恥をかく機会は減るはずなのに、いまだにそれをやっていて、37歳になってもずっと部活をしている気分です。『あぁ、今日もできなかったな』と、壁にぶち当たるのが好きなんでしょうね」


 生きてるって感じがする?

「そうそう、生きてるなって感じ(笑)。だからお芝居を続けているんでしょうね」


 流されるのではなく、納得しながら自分のペースで人生を歩む。まさに30代の醍醐味。

「時間の使い方も経済面でも自立できているという点では、すごく自由です。30代半ばを過ぎて、やっと楽しめるようになった部分でもあります。旅行や買い物だったり、それこそ食事にしても。ガムシャラに働いていた時期を抜けて、余裕も生まれました。昔よりも人を頼ったり、甘えるのも少しは上手になっている気がします。なぜか自立した強いイメージを抱かれがちですが、別にひとりで人生を生きたいわけじゃなくて、ひとりよりは二人のほうが楽しいはずだし、自分のことだけで頑張るには限界もあれば、飽きちゃう部分もある。守りたいと思える人やものが増えたら、人生はもっと豊かになるだろうなって」

Profile_中村アン(なかむら・あん)/1987年9月17日生まれ、東京都出身。直近の出演作に、ドラマ『約束 ~16年目の真実~』『青島くんはいじわる』、連続テレビ小説『おむすび』、映画『グランメゾン・パリ』など。4月6日より、出演するWOWOW『連続ドラマW 災』が放送・配信スタート(毎週日曜午後10時)。

interview & text:HAZUKI NAGAMINE

photograph:ITTETSU MATSUOKA styling:KEITA IZUKA hair & make-up:AIKO TOKASHIKI model:ANNE NAKAMURA

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