確かに相関性があった!データで見る経済と教育の関係

第1回 経済格差広がる社会でこれからの「子どもの教育」
夫の収入や将来への貯蓄など、さまざまな不安要素があり、兼業ママとして仕事をしている人が増えています。特に近年では、「親の所得格差が子どもの教育格差につながる」といわれており、わが子の教育面に不安を抱く人も少なくないはず。

とはいえ、本当に親の所得が子どもの教育に影響を及ぼすのでしょうか? 『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)の著書であり、京都大学名誉教授の橘木俊詔(たちばなきとしあき)さんに話を聞きました。

子どもの努力も重要ではあるが親の影響は大きい

厚生労働省が発表した「平成28年 国民生活基礎調査の概要」によると、熊本県を除いた平均所得金額は545万8000円ですが、詳細を見てみると100~400万円台で40.3%となり、1000万円以上は11.7%という結果に。家庭によって大きな所得差があることがわかります。

「子どもの学力は本人の能力と努力にも依存するので、親の年収だけで必ずしも決まるものではありません。しかし、親の年収差によって子どもの学習環境に違いが生じることは、当然のこととして想定できます」(橘木さん、以下同)

少し古いデータにはなりますが、文部科学省「お茶の水女子大学委託研究・補完調査について」(2009年)によると、以下のような調査結果が出ています。

【保護者の年収と小学6年生の算数A正答率】(左:年収、右:正答率)
・200万円未満…62.9
・200~300万円未満…66.4
・300~400万円未満…67.7
・400~500万円未満…70.6
・500~600万円未満…70.8
・600~700万円未満…74.8
・700~800万円未満…76.6
・800~900万円未満…78.3
・900~1000万円未満…79.1
・1000~1200万円未満…81.2
・1200~1500万円未満…82.8
・1500万円以上…82.5

もっとも正答率が低いのは年収200万円未満となり、正答率が高いのは1200~1500万円未満で、その差は約20pt。明らかに親の年収が子どもの学力に影響を与えていることがわかります。でも、どうしてこんなにも差が出てしまうのでしょうか?

「上記の調査結果はあくまでも表面的なもので、子どもの学力を決めるのは、背後にある要因が重要です。まずは、(1)生まれながらの能力(IQ)(2)子ども本人がどれだけ努力するか(3)どういう学校に通うか(質のいい教育を受けているか)(4)塾へ行くか行かないです。これらが親の年収に関係しています。例えば、親の年収が高いと親の頭がいい可能性があり、子どもの能力が高くなることがあります」

橘木さんによると、ほかにも年収が高い親は教育熱心である可能性があったり、子どもも親のように「医師になりたい」や「弁護士になりたい」など、親の職業に憧れを持ち、努力することもあるのだとか。さらに、塾や進学校に通える可能性も高くなる傾向があります。

確かに相関性があった!データで見る経済と教育の関係

学校外教育費は約1万7000円も差が生まれている

前述では親の年収の高さが与える可能性について触れましたが、学校外の活動を見てみると、明確な事実として大きな差が生じている結果に。

【世帯年収別に見た学校外諸活動の出費額】(左:世帯年収、右:出費額)(※1)
・400万円未満…8500円
・400~800万円未満…1万4100円
・800万円以上…2万5600円

学校外諸活動とは、スポーツ活動、芸術活動、家庭学習活動、教室学習活動のことを指しており、いわゆる塾やスイミングスクールなどのこと。世帯年収が「400万円未満」の家庭と「800万円以上」の家庭では、約1万7000円の差があります。

「年収の高い家庭ほど高い支出をしているので、塾に通っている確率は高く、複数の科目を塾で受講している可能性があります。また、通塾すれば学力が高くなることもわかっているので、これらを鑑みると、子どもの学力アップには、親の年収の高さが要因のひとつになっていると想定できます」

とはいえ、橘木さんは「“鳶が鷹を生む”という言葉があるように、子どもによっては親の年収に影響を受けず、頭がよくなる子もいます」と話します。

2014年に「子どもの貧困対策推進法」が施行され、国や自治体によって無料の学習支援や幼児教育の無償化など、さまざまな施策が発表されていますが、まだ私たちの身近な存在にはなっていないのが現状でしょう。今後、親の経済力と子どもの学力の関係性が薄れていくことを願うばかりです。
(文・奈古善晴/考務店)

【出典】
※1『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)P51図1-5…ベネッセ教育総合研究所『学校外教育活動に関する調査2013』(2013年)

※本記事の情報は執筆時または公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

お話をお聞きした人

橘木俊詔
京都大学名誉教授
日本の経済学者で、スタンフォード大学経済学部客員准教授、東京大学大学院経済学研究科客員教授、内閣府男女共同参画会議議員など、さまざまな経歴を持つ。『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)など、数多くの著書がある。
日本の経済学者で、スタンフォード大学経済学部客員准教授、東京大学大学院経済学研究科客員教授、内閣府男女共同参画会議議員など、さまざまな経歴を持つ。『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)など、数多くの著書がある。