インフルエンザといえば冬のイメージがあるが、今年9月5日には、東京都内の公立小学校で今季初のインフルエンザによる学級閉鎖が発表されている。それどころか、今では梅雨時や夏にもインフルエンザによる学級閉鎖のニュースを耳にすることがある。
従来は冬の流行に備えて、インフルエンザのワクチンを打つのが一般的だったけれど、もし通年流行しているのであれば、ワクチンをいつ打つべきか悩んでしまう…。
そこで、国立感染症研究所・感染症疫学センター第二室長の砂川富正さんに聞いた。
●増えてる? 夏のインフルエンザ
「夏に沖縄などの南西諸島でインフルエンザの流行が見られるように、インフルエンザが夏に発生することがあるのは確かです。しかし、日本全体を見ると、従来通り、11月下旬~3月頃を中心にインフルエンザが流行するという特徴は変わっていません」(砂川さん 以下同)
ちなみに、冬に流行するのは北半球の温帯地方共通の特徴で、オーストラリアやニュージーランドなどの南半球では7~8月に流行するそう。これは、南半球では季節が逆転するためだ。
また、熱帯地域には雨季・乾季があるとはいえ、温帯より季節がはっきりしていない。そのためか、日本のように急激に感染者が増えるのではなく、年中発生しているともいえるという。
「国内でも冬以外の時期にインフルエンザが発生しているイメージがあるのは、検査技術の向上により、季節外れの時期のインフルエンザも発見できるようになったり、関心が高まって、季節外れの学級閉鎖などのニュースが目立つこともあります」
今年の夏には、香港で夏のインフルエンザが大流行した。夏に海外に旅行した人が、旅行先で感染して持ち込んでくる可能性もあるという。
●インフルエンザに「当たり年」「外れ年」がある理由
ところで、インフルエンザが大流行してしまう「当たり年」と、そうでもない「外れ年」があるとよく言うけど、それはなぜ?
「インフルエンザウイルスで季節性のものは、H1(2009年当時の新型)とH3型(香港型)の『A型』と、ビクトリア系統、山形系統の『B型』に分類されています。冬ごとに、主体となって流行するタイプは異なります」
また、同じタイプのインフルエンザであっても、インフルエンザウイルスは非常に変異しやすいことも関係するそう。
「ワクチンは基本的には前年に流行したウイルスをもとに4種を入れて作られます。前年の流行から予測して作られるワクチンが大きく外れることは少ないのですが、ウイルスの変異が大きいと、ワクチンが効かずに、インフルエンザが広がりやすくなることもあります」
ちなみに、ワクチンを毎年受けている人は幅広い免疫を持つため、変異したウイルスにも免疫が反応しやすいそう。
今年はワクチンの供給が不足しているというニュースもあるが、大流行する前に接種するには、11月中の接種が望ましいという。
インフルエンザのワクチン接種を考えている人は、できるだけ早めの接種がオススメだ。
(取材・文:田幸和歌子 編集:ノオト)