ところが、医学博士の川嶋朗先生によれば「暖房が冷え性になるきっかけを作ることもある」という。体を温めるはずの暖房が、なぜ体を冷やすの!?
●暖房が“冷え”の原因になってしまうワケ
「人は本来、暑ければ汗をかいて体温を下げ、寒ければ震えたりして体温を上げようとし、体温を一定に保とうとします。ところが、365日同じ温度のなかで暮らしていれば、自分で調節する必要がないですよね。これでは体温調整の機能が育ちません。体温調整機能が落ちれば環境に影響されやすくなり、体に冷えが生じます」(川嶋先生 以下同)
実は、設定温度の高い暖房の環境にいると、体は冷えているのに頭はのぼせてしまうこともあるそう。
「血流が悪くなり、手足だけが冷たくて頭はのぼせた状態になります。これは冷えのぼせといわれますが、更年期障害のホットフラッシュと同じ症状で、たくさん汗をかいたり動悸がしたりすることもあります」
つまり、エアコンに頼り切った生活は、冷え性になりやすい体質をつくるひとつの要因にもなってしまうのだ。
ほかにも、冷たい飲み物や食事をとったり、運動不足で体温を上げるための筋肉が減少していたり、ストレスを感じる状況なども冷えを生むきっかけになる。そうした生活習慣が総合的に影響して、冷えの状態を悪化させているのだとか。
●不調に感じる部位によって,違う症状
ところで、私たちが普段「冷え」と呼ぶ状態のとき、体のなかではどのようなことが起きているの?
「冷えは交感神経と副交感神経のバランスが崩れることでおきます。それは、自律神経が私たちの体の体温の調整機能をつかさどっているから。自律神経の働きが鈍くなると、体温の調整能力が落ちてしまうのです。そして、冷え性になると体の抵抗力が落ち、血行不良やさまざまな不調の原因になります」
冷え性には程度があり、手足が冷える末端冷え性は軽い症状なのだとか。
「手足の末端が冷えるのは、自律神経が働いている方です。外が寒くなってくると手足の血流を減らし、重要な機能をつかさどる臓器の血流を保とうとして手足が冷えるのは、普通によくあること。ただし、逆に手足が温かいのにお腹が冷えている状態は危険です。また、全身冷えている人は冷え性が悪化している状態です」
冷えを防ぐには、意識的に運動をして筋肉量を増やすなど、生活習慣の見直しが欠かせないという。暖房に頼りすぎず、自分の体で体温調節をできるようになるのが、冷えから体を守る健全な予防策といえそうだ。
(取材・文:石水典子 編集:ノオト)