【冬のニオイ対策】セーターやコートが悪臭の原因に?

第1回 夏よりクサイ?冬のニオイ対策
薄着で汗をかきやすい時期に比べて、ニオイをあまり気にしなくなる冬。

ところが、冬こそニオイが強くなる季節だとも聞く。

一体それはどうして? 夏のニオイとの違いなどについて、体臭・多汗専門「五味クリニック」の五味常明院長に聞いた。

●冬にニオイが強くなる理由

「冬のニオイが強い理由は、夏と冬とでは汗の『質』が違うからです。冬汗は夏に比べて、ネバネバした質の悪い汗であることが多いのです」(五味先生 以下同)

汗腺には、全身にあるエクリン腺と、わきやおへそ周り、陰部等に集中しているアポクリン腺の2種があるそう。

エクリン腺から出る汗の成分は99%以上が水で、臭わないのに対し、アポクリン腺はタンパク質やミネラルなどのニオイ成分を含んでいるという。

「また、夏は汗を大量にかくため、汗腺の機能が高まっています。汗は血液を原料にして作られ、ナトリウムやアンモニア、ジアセチル、乳酸などは汗腺から再吸収されて、血管に戻ります。しかし、汗をあまりかかない時期には汗腺の機能が低下し、十分に再吸収されずに、これらの成分が汗に残るため、ニオイとなってしまうのです」

実際、夏(7月)と冬(11月)の汗を調査したところ、冬の汗は夏の汗に比べてナトリウム濃度が2倍以上になっていたという。

さらに、ミネラルが多いと皮膚の表面がアルカリ性になり、常在菌が増殖し、ニオイが強まるという影響もあるそうだ。

着込む女性

●冬は体だけではなく、衣類のニオイ対策も重要!

「さらに冬は、保温性が良い、つまり、通気性の悪い衣類を重ね着しますよね。もともと濃度の濃い汗が、服のなかでさらに濃くなり、コートを脱ぐと一気にニオイが外に放出されます。加えて、冬のほうが、基礎代謝が高く、暑い電車に乗ったときなど、少しの温度変化でドッと汗が出ることも、ニオイにつながっています」

夏の汗は、全体の汗=体温調節のための「温熱性発汗」であり、ニオイはあまりない。それに対して、冬は全体の汗が少なく、「部分汗」=ワキ汗などの「緊張性発汗」が起こりやすい。これは普通の温熱性発汗に比べて濃度が2倍で、ニオイも強いという。

つまり、あまり汗をかかない冬は、体のニオイのケアでなく、汗を吸収し、溜め込んでしまう「衣類のケア」が必要ということだ。

●セーターやコートの効果的なニオイ対策

「しかし、セーターやコートは、なかなか洗えませんよね。そのため、陰干しをするとき、暖房が効いた部屋でスチームアイロンをあてたり、霧吹きを吹き付けておいて、ドライヤーで乾燥させたりすると良いでしょう」

ニオイ成分は、水と結びついて蒸発させることによって、除去できるそう。また、衣類用の消臭剤なども、上手に活用したい。

「制汗剤の使い方も重要です。夏はワキだけでなく、広めの場所にスプレーする方が多いと思いますが、冬は直塗りタイプをワキなどの中心部に塗って、その上にスプレーをごく少量ふきつけると良いでしょう」

冬のニオイの大きな原因は、汗腺機能の低下による、濃度の濃い汗と、衣類への付着。特にワキの制汗とワキ部分の衣類のケアをちゃんと行うことをお忘れなく。
(取材・文:田幸和歌子 編集:ノオト)

書籍紹介:「気になる 口臭・体臭・加齢臭」(旬報社)

お話をお聞きした人

五味常明
五味常明
五味クリニック
体臭・多汗治療の第一人者。患者の心のケアを基本に外科的手法を組み合わせる「心療外科」を提唱し、ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。TVや雑誌でも大活躍。
体臭・多汗治療の第一人者。患者の心のケアを基本に外科的手法を組み合わせる「心療外科」を提唱し、ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。TVや雑誌でも大活躍。