ママ世代に“痔主”が増えている!?

ママ世代に“痔主”が増えている!?

第1回 ママと子どもの痔主問題
「痔」といえば、中高年男性のおしりの病だと思われがち。ところが、周囲のママに聞いていると、「妊娠・出産がきっかけで痔になった」という声を聞くことが多い。妊娠、出産や授乳と痔に関連性はあるのだろうか? そもそも、どうして痔になるの? 所沢肛門病院・院長の栗原浩幸先生に聞いてみた。

「女性は便秘がちの人が多く、排便の時に必要以上にいきむ習慣があります。これによって、肛門のクッションである静脈叢(じょうみゃくそう)が腫れてうっ血し、いぼ痔(内痔核)ができてしまうんです」(栗原先生、以下同)

痔には肛門にいぼができる「いぼ痔(内痔核/外痔核)」や肛門の皮膚が切れる「きれ痔(裂肛)」、膿が出る「穴痔(痔ろう)」がある。性別を問わず一番多いのが、このいぼ痔だ。排便時の出血や、いぼが肛門の外にできて気づくことが多いという。

そして、気になる妊娠、出産、授乳との関係はというと…。

ママ世代に“痔主”が増えている!?

「妊娠中は子宮が大きくなり静脈の流れが悪くなるので、いぼ痔がうっ血しやすくなります。その状態で出産中にいきむと、いぼ痔がうっ血し腫れてしまい悪化する人も…。また、授乳中は母乳に体内の水分を取られるので便が硬くなり、便秘にもなりやすいです。いきんで排便すれば硬い便できれ痔になったり、いぼ痔になったりしやすいんです」

排便後の痛みに「もしや痔?」と思いながらも、ついつい我慢して悪化させてしまう女性も多いという。どのタイミングで病院へいくべきなのだろうか?

「いぼ痔の出血は薬で止まる場合が多いので、30代位までなら市販薬を1~2週間使っても出血や痛みが止まらない時に診察を受けましょう。手術するのは全体の2割くらいでしょうか。ただ、普段から痔が肛門から出たり痛みがあったりする人、一人目の出産のときに痔を悪くしたりした人は、次の妊娠前に受診してしっかり治すことが大切ですよ」

また、きれ痔は排便後に痛みが続いたり、便が細くなったりした時が診察のタイミングだ。きれ痔が慢性化すると肛門が狭くなる「肛門狭窄」という状態になり、排便が困難になることもある。最近は潰瘍性大腸炎の女性が増えていることもあり、血液が混じった粘液が出る時は自分で判断せずに専門医の診断を受けるべき栗原先生はいう。

痔は誰でもなる病気。友だちや夫に打ち明けたら、親身になってくれたという話もよく耳にする。キチンと治療して体も心もスッキリしよう。
(川野ヒロミ+ノオト、画像制作/川野ヒロミ)

お話をお聞きした人

栗原浩幸
栗原浩幸
所沢肛門病院
所沢肛門病院 医院長、日本外科学会 専門医、日本消化器外科学会 指導医・専門医、日本大腸肛門病学会 評議員・指導医・専門医、日本消化器内視鏡学会 会員 
所沢肛門病院 医院長、日本外科学会 専門医、日本消化器外科学会 指導医・専門医、日本大腸肛門病学会 評議員・指導医・専門医、日本消化器内視鏡学会 会員