「着るだけでマッチョを目指せる」加圧シャツ
インターネットをしていると、芸能人の名前を全面に出したトレーニングウェア・加圧シャツの広告をよくみかけます。「着るだけでマッチョを目指せる」や「着ながらボクサー腹へ」などのようなキャッチコピーがあり、加圧シャツでカラダを締め付けることによって“着用するだけ”で筋力トレーニングやダイエットに効果がありそうに見受けられますが、本当はどうなのでしょうか?
「結論から言って、そのような効果はありません。おそらくみなさんは、加圧シャツと加圧トレーニングを混同されているようです。加圧トレーニングは、局所(腕の付け根や腿の付け根)に適切な圧を加えながら運動を行うトレーニング方法です。一方で加圧シャツの場合は、着圧ですので加圧トレーニングのように血流を制限するほどの圧ではありません」
そう断言するのは、北海道札幌市にある『ひのまる整骨院』の院長であり、パーソナルトレーナーとしても活躍中の相馬一字(そうまかずね)さん。
たしかに、加圧シャツの商品ページを見ると、「加圧」という言葉が使用されていて、混同しやすいかもしれませんが、両者には決定的な違いがあります。
「加圧トレーニングは、血流を制限することで血中乳酸濃度を上昇させて成長ホルモンの分泌を増加させることが目的です。また、血流を制限すると速筋と遅筋の両方を鍛えることが出来ますが、加圧トレーニングと加圧シャツはまったく別のものです。前述の通り、着圧程度では血流を制限することが出来ないことから、みなさんが期待されているような効果は見込めないと思われます」(相馬さん、以下同)
加圧シャツで疲労軽減などの効果は期待できるかもしれない
加圧シャツを紹介するウェブサイトには、「加圧シャツを着ることで、加圧トレーニング状態にすることができる」と記載されていることもありますが、これは前述の通り、期待薄。ということは…。
「加圧シャツを着るだけで筋力をアップするような効果は見込めない可能性があります。加圧シャツにも様々な種類がありますが、おもに疲労軽減やテーピング効果など、運動をサポートするような効果は期待出来ると思います」
加圧シャツに限らず「身につけるだけで筋力アップ」、「飲むだけで痩せる」といった“楽”をしてボディラインを美しくすることをイメージさせやすい商品は数多くありますが、相馬さんは、それらに対して注意が必要だといいます。
「“楽”をして、筋力アップやダイエットは難しいと思います。しかし、それらの商品を使用することにより、多少なりともダイエット効果があるまたは、本人のやる気が上がるなどを考慮すると『痩せる』ということに少し近づくとも思います。ですが、基本的には、正しい食生活と適度な運動が健康的に確実に痩せる方法だと思います」
では、それらの商品に頼らずに、毎日慌ただしく生活しているママでも気軽に取り入れられるダイエットはあるものでしょうか?
「まずは、食事内容を見直して、少し工夫をすることが良いと思います。例えば、1日の食事で摂取するご飯(炭水化物)の量を少し減らす。または、日常的に甘いものやスナック菓子を食べているなら、量を減らすことです。地道ではありますが、ちょっとした工夫で1カ月もすれば健康的に痩せることが出来ます」
加圧シャツの謳い文句である「着るだけでマッチョを目指せる」や「着ながらボクサー腹へ」などを「嘘じゃん!」と感じるかもしれませんが、これは嘘ではなく事実。何故なら、ゆったりとしたTシャツを着るだけでも、マッチョを目指せるし、ボクサー腹へすることもできるから。ただし、そうするためには、それなりの運動や食事管理が必要というわけ。
「美しいボディラインを手に入れたい」と思うのならば、信憑性の薄いアイテムに頼るよりも、日々の生活習慣を見直したほうが、よっぽど近道ではないでしょうか。
(文・奈古善晴/考務店)