日本心理教育コンサルティング代表・櫻井先生は、怒られて育つリスクについて、こう警鐘を鳴らす。
「『勉強しなさい!』『片付けしなさい!』と怒られてばかりいたら、嫌な気持ちになりますよね。そういわれ続けた子どもは『やらないと怒られる』と思って物事に取り組むようになる半面、『怒られないとやらない』子に育ちます。すると、自主性を止めてしまうリスクがあるんです」 (櫻井先生 以下同)
こうなると、行動の基準が全て「好きだから、やる」「やりたいから、やる」のではなく、「やらないと怒られるから」という「恐れ」が原動力になってしまう。酷い場合は、無気力の原因にもなるそうだ。
さらに危険なのが、子どもの心に怒りや不快感情が蓄積されてしまうこと。うつ病などの精神疾患になりやすいリスクや、学校で自分より弱い者を見つけて「いじめ」をするリスクがあるそうだ。
「子どもや若い人による凶悪犯罪の犯人は、かなり厳しく育てられたことが知られていますし、ヒトラーもムチで叩かれるなど厳しいしつけを受けて育ったと言われています。人間の心は怒りが徐々に蓄積され、満杯になると、どこかに出さないといられなくなります。しかし、親にはぶつけにくいため、第三者の弱い者や動物にあたる傾向があるんです」
では、「厳しく育てすぎたかも」と思う場合、どうすれば?
「これまで厳しくしすぎたり、怒りすぎたりした場合、子どもを『否定』してきたことになります。子どもの話をきちんと聞くなど相手を受け止め、肯定してあげることが一番大切です」
実は、「怒る」「否定する」ことでは、「反発心が生まれるだけで、人の行動は変わらないものだ」と櫻井先生は指摘する。
子どものことを思い、変えてあげたい、なんとかしたいと思うなら、怒るよりもいったん受け止める努力が必要といえそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)