ところで最近、埼玉県飯能市が子どもの能力開発として、「部屋のレイアウトによって子どもの自立心を育てることができる」とするプロジェクトを実施していることが話題になっているよう。
子どもの成長とお部屋のレイアウトって、そもそもどう関係しているの? 植草学園大学発達教育学部の小川晶准教授に聞いた。
●子どもは「遊び=学び」を心に留めて!
「『子どもは遊んで育つ』とよく言うように、子どもにとっては『遊び=学び』です。ところが、大人が子どもに対して自ら学んでほしいと思うことは、身辺のことや学習など、大人目線で『やらなければいけないと思うこと』。そのため、大人の望む学びと、本来の子どもの学びとはズレが出てしまうのです」(小川先生 以下同)
また、「自立」というと、なんでも自分でやることと思う人がいるが、大人でも他者の力を上手に借りながら立っているもの。そのため、「正しい他者」の力を借りることが大切なのだとか。
では、大人が「正しい他者」として子どもに接していくには、どうしたら良いのか。
「もともと子どもたちは、何かしたいという欲求をもっていますので、子どもの『~したい』という遊びの欲求が実現しやすい環境を設定してあげましょう」
では、子どもの「〜したい」を伸ばすにはどういったおもちゃを用意すればいいのだろう?
「例えば、空き箱などを渡して『どういうふうに使っても良いよ』と言ってあげるのがおすすめです。逆に、ボタンを押せば音が鳴るとか、遊び方をオモチャが命令してしまうモノは、子どもの想像力を育てるうえで望ましくありません」
●子どもの自立心を養うおもちゃには何がある?
子どもの自立心やクリエイティブな力を養うために、小川先生がオススメする上位5個のカテゴリは以下の通り。
1)構成遊びができるもの……積み木など
2)ごっこ遊びができるもの……キッチン台や赤ちゃんの人形、ご飯に見立てられるものなど
3)絵本
4)季節・時事問題に関連したもの……生き物を観察するスペースやパズル、ぬりえ、オセロ、将棋など
5)戸外遊び
「保育園はたいてい以上の5個のカテゴリでお部屋をレイアウトしています。全部が難しい場合は、できるものだけチョイスするのも良いでしょう。また、発達段階に応じて内容も変えていきましょう」
●子どもが部屋を散らかすことにも意味があった!?
ちなみに、子どもが部屋をおもちゃだらけにしても、「こんなに散らかして!」「早く片付けなさい!」などの言葉を言わないことが大切だとか。
「大人にとっては単にモノを散らかしているように見えても、子どもにとっては身近にあるモノを触ったり、引っ張りだしたり、広げたりしながら『これはどうなっているのだろう』と考えていたり、自分なりに何かを作ろうとしていたりします。『観察』『研究』『実験』はどれも大切なこと。『こんなに散らかして!』と言われても意味がわかりません。まずは十分遊んで満足させてあげること。そのうえで、『たくさん遊んだね!』とほめてあげ、一緒に片づけを手伝ってもらうようにすると良いですよ」
子どもの自立心を養う部屋は、大人目線で「キレイに整った部屋」でも「おもちゃがたっぷりある部屋」でもなく、子どもの「~したい」欲求を実現しやすい部屋ということ。
模様替えの際には、ぜひ一度子どもの部屋を見直してみては?
(取材・文:田幸和歌子 編集:南澤悠佳/ノオト)