植草学園大学発達教育学部の小川晶准教授は次のように話す。
●子どもがおもちゃを広げるのは「散らかし」ではない
「そもそも大人は『また散らかして!』と思いがちですが、子どもにとっての『学び』とは『遊び』であり、それは『観察』『研究』『実験』ですので、『散らかしている』わけではありません。一番注意しなければいけないのは、自主的に片付けさせようとして、遊ぶ意欲を削いでしまうことです」(小川先生 以下同)
たとえば大人も、1000ピースのジグソーパズルなどに取り組むとき、毎回片付けなければいけないとなると、やりたくなくなってしまうもの。
子どもも同様で、片づける習慣ばかり育てようとすると、育つ機会を失ってしまうという。
「子どもは遊びを通じて、コツコツやる力や仮説を立てて実験する力、工夫する力を養います。これらは、どんな場面でも大切になる一生モノの力で、後から育てるのは難しいもの。子どもが夢中になれる機会をどれだけ作れるかが大切なのです」
特に0~2歳までは「片付けなさい」の声かけ避けたほうがいいそう。それ以降も、本人が遊び(学び)に十分満足したかどうかを確認したうえで『一緒に戻すのを手伝って』と声をかけていくのが良いとか。
「発想の転換が必要で、モノを片付けるというよりも、『次に使いやすいように戻す』視点が大切。次に使いやすくするためのレイアウトを考えてあげるようにしましょう」
●子どもがおもちゃを元に戻しやすくなるポイント
具体的に、おもちゃを元に戻しやすくする主なポイントは、以下の通りだ。
1)おもちゃをカテゴライズすること……なんでも一緒に入っていると、子どもはモノに対する愛着を持ちにくく、大切にしなくなるうえ、元に戻そうとしなくなる。大人が大切なアクセサリーなどはジュエリーボックスなどにしまうのと同じこと。
2)箱に入れるのは、1種類1個ずつ……スモールステップで戻せるようにする。
3)箱に入れるものを満杯にしない……トランプなども使用していくと、紙がよれてふくらみ、箱にしまいにくくなる。モノがいっぱいの状態は元に戻すのが面倒な作業になって、片付けのハードルが上がり、戻さなくなる。
さらに、「子どもの目線で見えやすいよう低い場所に置く」「透明の箱など、中身がわかるものを選ぶ」なども良いそう。
「戻す場所を決めるのは良いですが、しっかり決めすぎないこと。子どもにわかりやすいようラベリングする方も多いですが、戻す様子を見ていて戻しづらそうだったら、どんどん変えてあげましょう」
●ママも片付けが苦手なら、それを子どもに素直に伝えるのもアリ
また、「片付けなさい!」「散らかしてばかり!」と怒る大人も、実は自分自身、片づけが苦手なケースも…。
「ママも『私も片付けは苦手。でも、汚れをあとから拭くのは大変だから、今片付けちゃおうか』とか『お掃除しなきゃね~。でも、疲れちゃったから、ちょっとおやつ食べてからにしようか』などと言えば良いのです。しつけのために『助けて』が言えない親子関係は、ちょっと寂しいですし、子どもが困ったときに親に相談できなくなってしまうと思います」
子どものうちは、「片付け」よりも養うべきもっと大切な力があることを覚えておきたい。
(取材・文:田幸和歌子 編集:ノオト)