ダイエットに効果的な走り方
さて実際に走ってダイエットするために、効果的な方法を紹介しよう。
そもそも体重を落とす(体重が落ちる)には3種類ある
水分を落とす
体内の水分を抜けば、当然体の重量は減る。プロボクサーの減量などで人口に膾炙されている方法だ。
「サウナや入浴で汗をかいて体の水分を抜けば、一時的に体重は減ります。しかし、水を飲めばすぐに元通りになるため、減量の持続性には欠けるでしょう。体重別の競技ゆえの方法です」(宮川さん、以下同)
また、無意味に水分を抜けば、脱水症状になる危険性があると宮川さんは指摘する。
「水分を摂取しなければ脂肪が燃焼しづらくなり、結果的に痩せにくいメカニズムに陥ります」
筋肉を落とす
骨折などの怪我で入院したり、ギプスをしたりしていると足が細くなった、という経験や事実をご存知の方も多いのではないだろうか。これは、筋肉が減ったためだ。
「筋肉は負荷によって強く大きくなるため、運動負荷がかからないと衰えます。また筋肉にも水分が多くあるので筋肉が減少すれば体重は減りますが、筋肉がなければ基礎代謝が下がるため、脂肪燃焼効率の悪い体となり、長い目で見ると痩せづらい体になります」
脂肪を落とす
これこそが、ダイエットの望ましい姿と宮川さんが太鼓判を押す。
「脂肪燃焼のためには有酸素運動が効果的です。脂肪をエネルギー源とする『走る』は有酸素運動の代表格。つまり、ダイエットに効果的な手法の一つと言えます」
どんな風に走ると効果的?ランニング?それともジョギング?
「走る」という行為を表現する時、「ランニング」と語る人もいれば、「ジョギング」と語る人もいる。混在して使われているこれらは、実は意味が異なると宮川さんは言う。どのような違いがあるのだろうか。
・定義の違い
「ジョギングとは、本来『ゆっくり走る』という意味であり、その“方法”を指します。ランニングとは、走るという行為すべてを指します。例えばかけっこ、マラソンなどもランニングに含まれます」
・運動強度の違い
「運動強度は、ランニングの方がジョギングより高くなります」
具体的な数値として、運動強度の単位であるメッツ (METs)で比較してみよう。メッツとは、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したものだ。厚生労働省が発表するところによると、
ジョギング:
7.0メッツ
ただし、ゆっくりしたジョギングであれば6.0メッツ
ランニング(161m/分の場合):
9.8メッツ
このように、ジョギングよりもランニングの方が運動強度は高くなっている。
・速さの違い
運動強度の違いに表れている通り、ジョギングとランニングでは走る速度が異なる。具体的な数値はどうか?
「個人の走れるスピードによるので、時速という概念で一概に定義はできません」と宮川さんは話す。というのも、マラソン選手にとってのゆっくり走る速度は、市民ランナーや初心者にとっては全速力に等しい速度であったりする。ゆえに、一概に時速何km以上がランニングでそれ以下がジョギングとは言えないのだそうだ。
あくまで、ゆっくり・速いは、本人の体力レベルや感覚で決められるものであり、目安は
ジョギング:
会話が可能。
早歩きより遅いかもと思う速度でもOK。
非常にゆっくり時間をかけて走っている状態。
ランニング:
息が上がっている。頑張って速く走っている状態。
という状態を指すそうだ。
ではダイエットには、どちらの方がより効果的なのか?
答えはズバリ、「ランニングよりもジョギングの方がダイエットには効果的です」とのこと。低強度の有酸素運動は脂肪を効率よく燃焼させるためだ。
「LSD(Long Slow Distance)と我々が呼ぶマラソンのトレーニングがありますが、とてもゆっくりした速度で90分から2時間くらいの間、長い距離を走ることが効果的だと言えるでしょう」
ダイエットに効果的といえば、高負荷な運動こそ消費カロリーが高そうなイメージだが、脂肪燃焼のメカニズムを知ると意外な答えにたどりついた。
ダイエットに効果的なジョギングの時間帯とは?
では、そのジョギングでダイエットの効果を最大化させるためには、いつ、どんな状態で走ればよいのだろうか?
朝の食事前がベストタイミング
1日のなかで最もダイエット効果が期待できるのが、「朝食前」だと宮川さんは話す。
「朝は、前の日の夕食後に睡眠をはさむため次の食事までに時間が空き、飢餓時間が長くなって血糖値が下がっています。この状態で運動をすると、体内に糖質がないので脂肪が優先的に燃焼されるのです」
朝起きて、空腹の状態でゆっくりと走るのが効果的だという。ただし、起きてそのまま走り出すのは危険だ。起き抜けの状態では体内に水分が不十分であると同時に、極度の空腹状態で走っては健康面でもよくない。
「体内に水分がないと効率的に体内の脂肪が燃焼しません。また、脱水症状や低血糖を起こすリスクもあります。オレンジジュースなどで適度な糖分・水分を摂取してから走り出すとよいでしょう」
速度はゆっくり、時間は長くが理想的
前述の通り、ダイエットに効果的なのは「ジョギング」だ。早歩きより遅いくらいのゆったりとした速度で、90分〜2時間走るのが効果的だ。
短時間でも走ることに意味がある
ただし、忙しいビジネスマンが朝1時間以上走る時間を工面するのは難しい。そんな場合は、たとえ短い時間でも効果はあると宮川さんはアドバイスする。
「どうしてもまとまった時間が取れない方は、1回あたりの走る時間は、10〜15間分くらいでも構いません。この短時間のジョギングを、1日2回実施することをおすすめします。例えば、朝と夜だと習慣化しやすくていいのではないでしょうか」
一方で、「有酸素運動は20分以上持続しなければ脂肪は燃焼しない」という説を耳にしたことはないだろうか。20分未満のジョギングで果たして効果はあるのだろうか。その誤解について宮川さんが解説してくれた。
「確かに有酸素運動を20分以上続けると、脂肪の燃焼割合が高まるのは事実です。しかし、運動開始直後から脂肪は燃焼しています。1回あたりの時間は短くて構わないので、頻度高くジョギングすることがダイエットに効果的でしょう」
週に3日以上を推奨。続けることが大切
1回あたり10〜15分のジョギングを1日2回、果たして週に何回くらいやれば効果的なのだろうか。
「毎日できればベスト。それが難しい場合でも、1日おき、週3〜4回は走ることをおすすめします」
逆に効果がないのが、「土日に2時間まとめて走る」という短期集中型だ。
「たまの運動では、汗をたくさんかいて体重が一時的に減るだけで本質的なダイエットにはなりません。日々のジョギングによって筋肉量を増やし、脂肪を燃焼しやすい体づくりをすることが重要なのです」
さらにダイエット効果を上げるコツ
ダイエットに効果的なジョギングの基本についてご紹介したが、合わせて取り組むことでさらに効果が上がるコツがある。慣れてきたらぜひ取り入れてみよう。
ジョギング前に水を飲む
「水分を摂取すると血流がよくなり、代謝が上がります。そうすることで脂肪が燃えやすくなるのです」
前述の通り脱水や低血糖の予防の意味でも走る前の水分摂取は必須だ。
ジョギング前にストレッチをする
「筋肉が柔らかくなることで、血流が良くなります」
血流が良くなることで、前項同様代謝がアップし、脂肪が燃焼しやすくなるというメカニズムだ。
ジョギング前に筋トレをする
筋トレの際、筋肉が収縮することによってサイトカイン(生理活性物質)が分泌されるが、そのなかの一つ、IL-6は代謝を促す効果がある。特にトレーニングすると効果的な部位が、足やお尻などの大きな筋肉だそうだ。
「スクワット、ランジ、腹筋をそれぞれ10回×3セット、1日のうちに行うのが理想的です。ただし、筋トレで鍛え過ぎて体を大きくしてしまうと体が重くなり、膝への負担がかかるので注意です」
ランニングウォッチを買って運動強度をチェック
脂肪燃焼を効率よく行うには、低負荷の運動が効果的だ。そのため、今の自分の走りの運動強度が適正かどうかをチェックすることも肝要だ。
「心拍数をランニングウォッチでモニタリングし、運動強度をチェックしましょう。速く走っているとダイエット効果が薄れるため、調整しましょう」
数値化して成果をモニタリング
ジョギングのいいところは、ほとんどが数字として可視化できるところだ。日々の記録が積み上がりポートフォリオとなれば、変化や成果が目に見えるのでモチベーションの源泉にもなる。
「距離、タイム、心拍数など数値で測れるものはアプリを活用してモニタリングするとよいでしょう。日々の成果を可視化することで、正しい方法で走れているかを確認することができます」
ジョギングダイエットを持続させる工夫
始めたからには継続し、成果を上げたいジョギングダイエット。ここでは続けるための工夫をいくつかご紹介しよう。
走ることの利点を知る
まず、走ることがダイエットだけでなく健康上いかに利点があるかを知っていると、続けるモチベーションになると宮川さんはアドバイスする。
「ジョギングは生活習慣病の予防になります。適度な運動により、糖尿病や血圧上昇を防ぐにも効果的です」
40代、50代のビジネスマンは、昼間はハイカロリーで脂っこいスタミナ食、夜は会食や飲みなど偏った食事や飲酒だけでなく、日々の仕事のストレスや喫煙習慣などで、知らず知らずのうちに生活習慣病に蝕まれている可能性がある。自覚症状なく進行する脳や血管、心臓へのダメージを抑制するには、適度な運動は絶好の対策法なのだ。
お気に入りのコースを見つける
走っていて気持ちのよい環境を整えることも、気分を上げる手法の一つだ。
「リラックスして走れる自分のお気に入りコースを見つけるのがおすすめです。特にLSDの場合は長距離を長時間かけて走るので、郊外まで足を伸ばすとゆったり走れる場所が多くて楽しいですよ」
SNSを通じコミュニティーで励まし合う
また、同じ目標や趣味をもつ仲間との交流は大きな励みとなる。
「今やランニングに関するアプリは豊富。SNSを通じて共通の趣味や目標をもった仲間たちとつながれば、励まし合ったり刺激を受けたりして走る意欲が高まります」
また、ダイエットに効果的なジョギングを団体で行う場合、長い時間を共に過ごすこととなり、しかも会話が可能なのでお互いの親密度が増すという。
「他のチームスポーツは真剣にプレーしている最中、チームメイトと仲良く話すシチュエーションには決してなりませんが、ジョギングはマイペースに楽しめる運動。遅れても誰にも迷惑をかけないし、ゆっくり走りながらチームメイトと会話も楽しめ、一緒に走る仲間との連帯感も生まれます」
一人では挫折してしまいそうだが、一緒に頑張る仲間の存在があれば3日坊主も防げるかもしれない。
ランニングダイエット中の食事は?
ダイエットは、運動だけでなく食事も重要だ。運動効果を最大化する食事の摂り方、メニューとは一体どんなものなのか?
ランニング前の食事のポイント
朝走る人と夜走る人では脂肪の燃焼効率を高める食事の注意点が変わってくるので、走る時間に合わせてチェックしてみよう。
朝走る場合
前述の通り、脱水、低血糖にならないよう、同時に血流をよくするために適度な水分・糖分を摂取しよう。オレンジジュースなどがおすすめだ。
夜走る場合
夜走る場合、朝と違って体が既に覚醒しているので、すぐに運動できるのは利点だという。
ただし、仕事帰り、夕食を摂る前などで空腹だと効率よく体内の脂肪が燃えない。
「走る前におにぎりを1つ程度、あるいはコンビニなどで売っているエネルギーゼリーのような適度な糖質を摂るとよいでしょう」
そして「朝と同様、水を飲むこと」もポイントだそうだ。
ランニング後の食事のポイント
ランニング後の食事タイミング、そして何を食べるかも重要となる。
ジョギング後30分以内はゴールデンタイム
食事は運動後30分以内が鉄則だという。この理由は以下だ。
「運動直後は、運動によって傷ついた筋肉が修復されます。このゴールデンタイムに筋肉の元となるたんぱく質を摂取することで、筋肉の成長・回復を高めることができ、基礎代謝の高い脂肪の燃えやすい体を作ることができるのです」
運動後30分以降に食事を摂る場合
ダイエット中の場合は、「21時までには食事を終わらせるのが望ましい」そうだ。
その上で、
「たんぱく質を中心とした食事を心がけ、糖質、油は控えめにしてください」とのこと。
ただし、糖質は運動に必要なエネルギー。すべてカットするといった極端な糖質制限をすれば運動ができなくなってしまい、筋肉が衰え結果的に痩せにくい体になるので注意が必要だ。
おすすめ食材の具体例
ダイエットに、そして運動後に最適な食材は「高タンパク低脂肪」が原則だ。
中でもおすすめの食材を紹介してもらった。
まず、たんぱく質が多く含まれる食材は以下だ。
・鶏肉(胸、ささみ)
・魚
・卵
・大豆製品
・乳製品
・プロテイン
「一人暮らしの人は、コンビニのサラダチキンを取り入れてみては。また、プロテインもおすすめです。一昔前は筋肉増強のために飲むものといったイメージでしたが、今ではコンビニで一般の人でも簡単に入手できる上に、ビタミン、ミネラル、鉄など普段の生活でなかなか補えない栄養素も補給できて栄養価の面でも有用です」
また、ミネラルを多く含む、
・海藻類
・きのこ類
なども積極的に摂りたい食物だそうだ。サラダや酢の物などに調理するとよいという。
なかなか痩せない時は?
ダイエットには停滞期が来ることが多い。ジョギングダイエットで停滞期を迎えた時の対処法を考えてみよう。
筋トレを行う
ジョギングと併せて行うと効果的なのがこの方法だ。
「脂肪を燃焼させるために筋肉量を増やすと、ダイエットにより効果的でしょう」
先に紹介したセットをまずは実践してみよう。
食事を見直す
「消費カロリーが摂取カロリーを上回っていないと体重は落ちません」
と宮川さんが指摘するように、運動しているのだから何を食べてもいいというわけではない。運動を言い訳に、炭水化物や甘い物を摂っていないか振り返ってみよう。ダイエット中の食事はあくまで、高タンパク低脂肪、糖質はいつもの半分がルールだ。
運動強度をチェックする
「運動強度が高くなっている」という失敗も実は多い。男性に多いケースだと宮川さんは指摘する。
「やった感があるのは激しい運動。なので、ついハードに走り込んでしまうのですが、実際にダイエットに効果的なのはジョギング。心拍数をモニタリングして激しい運動になっていないか確認しましょう」
自身で自覚するには、はぁはぁと息が上がっていないかコンディションをチェックしてみよう。
他の運動と組み合わせてみる
ジョギングでなかなか成果が出ないのであれば、他の有酸素運動などと組み合わせるのも一つの手かもしれない。おすすめの運動を挙げておく。
身近なスポーツで手軽に行いたい人にオススメ
手近にあるものやスイミングなど、すぐに取り入れられそうな運動はこちら。
筋トレも同時に行いたい人にオススメ
有酸素運動とは限らないが負荷をかけることで効率的に体を鍛えたい人にはこちらを紹介したい。
効率的に行いたい人にオススメ
通勤時間に取り入れられる運動やその前後で通えるジムプログラムをご紹介。
ダイエットともに楽しみも味わいたい人にオススメ
ダイエット目的だけの運動だと飽きてしまう人には趣味にもできるこちらの運動を試してみてはどうだろうか。
新たな競技に挑戦してみたい人にオススメ
始めてみたらはまったという人が多いこれらの競技も有酸素運動としては効果的だ。
仲間やパートナーと共に楽しみたい人にオススメ
ランニング同様、仲間がいると持続性も高まる。
都内のオススメジョギングコース
そろそろジョギングがしたくてたまらなくなってきたころではないだろうか。ここでは都内のオススメのランニングコースや施設を紹介する。
まとめ
ジョギングで効果的にダイエットへ取り組む方法を紹介したが、いかがだっただろうか。一度走るのが習慣になると、走らないと気持ち悪いという人さえいるほどだ。最初は多少億劫かもしれないが、健康維持のためにも若さを保つためにも効果は絶大。ぜひ今すぐ試してみよう。
Text by Naoko Takeda