そもそもランニングは健康にいいの?
ハードに走る人もいれば、ゆっくり走る人まで様々。そもそも体にどのようにいいのだろうか?
ランニングで死亡率が下がるって本当?
ヘルス関連誌『Progress in Cardiovascular Disease』で発表された研究によると、15年間の調査期間中、ランニングした人は何もしなかった人に比べて死亡率が40%も低かったという結果が。また1週間に約2時間走るランナーは、走らない人と比べて3.2年長生きできているということも判明した。走る時間は1日に5分か10分でも良いとのことだ。
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28365296
運動する時間がないという人は、やがて病気のために時間を失うことになりかねない。「仕事が忙しいから」と言い訳しながら運動しないのでは寿命を縮めているようなもの。特に中高年が抱える健康リスクには、ランニングが有効だという。できる範囲、無理のない設定で構わないので今すぐランニングを習慣化しよう。
ランニングによる20の効果
ランニングは単にダイエットだけではなく、脳や心にもうれしい効果がある。さまざまな効果を知ることで、ランニングを始め、持続させるモチベーションにしてほしい。
ランニングはビジネスマンに最適
1.脳が活性化し、思考力、決断力、記憶力が向上する
ランニングにはダイエットや体力の維持など、身体的な効果を期待している人が多いかもしれないが、その効果はむしろ脳にこそあらわれる。
ランニングでは人間の筋肉の大部分が集まっている下半身を動かすため、それに伴って脳も活動することになる。特に思考力・決断力・発想力・集中力・感情などをつかさどる「前頭葉」と、記憶をつかさどる「海馬」の2つがランニングで最も鍛えられるという。
また、ランニングで血行が良くなると、脳細胞「ニューロン新生」が増えることにつながり、脳の処理速度がアップする。最近では、認知症予防にも効果があるとも言われている。
ビジネスマンにとっては、必須の能力をつかさどる機能を高められるというわけだ。
2.目標到達へのモチベーションが上がる
ランニングをする人には大体ダイエットや健康、マラソンなど目標がある。その目標を達成するためにはどうすればいいか、消費カロリーや体重、距離、時間などを加味して計画する力が必要となる。
長期的な目標を決めた後は、短期間で達成できそうな小さな目標を作るとよいそうだ。タイムでも、距離でもなんでもよい。その小さな目標をクリアしていく度に、自信となり次に向けたモチベーションが生まれる。こうして積み重ねたランニングでの成功体験は、私生活やビジネスにおいては活力となるだろう。
ランニングでの目標と言えば、ダイエットの他にもマラソンがある。東京近郊なら、「東京マラソン」は一度は出てみたいものだ。
3.ストレス発散できる
40男にストレスはつきものだろう。会社で、私生活で、さまざまなストレスと戦っている。そんなストレスにもランニングは効果的だという。
適度な運動をした後、リラックスして気持ちよくなったり、『いい汗かいたな~』と思った経験はないだろうか。それは脳内で“セロトニン”や“βエンドルフィン”が放出されるからだ。
「セロトニン」は精神安定につながる物質で、鬱や不眠症を解消する効果やスッキリと前向きな気持ちにしてくれる効果がある。この「セロトニン」は、強度の高い運動では分泌されないそうで、一定のリズムで動く適度な負荷の運動時に分泌される。また、「βエンドルフィン」は幸福感などの効果があり、「ランナーズ・ハイ」の原因物質とも言われている。
つまり、ランニングをすることで、気持ちを安定させ、ストレスをリセットできるのだ。ランニングでストレスを解消できれば、仕事にも前向きに取り組めるだろう。
4.悩み事が解消できる
悩みというのは解決できていない課題に対し、心配や不安で苦しいことだ。しかしポジティブな精神状態の場合は、単なる課題として向き合えることも多い。
ランニングには上述した通り、「セロトニン」や「βエンドルフィン」の増加により精神が落ち着く効果がある。ランニングにより不安要素が取り除かれれば、ポジティブな精神状態となり、悩み事は解決すべき課題へと変化し、冷静に対処できるようになるだろう。
5.疲れにくくなる
筋肉には速筋と遅筋の2種類がある。簡単に言い分けると、瞬発力やパワーがある速筋に対して、遅筋は持久力があるそうだ。
ランニングでは主に遅筋を使うので、持久力のある疲れにくい体になる。さらに酸素摂取量も増加することで、体が軽く感じられるという。これにより普段よりも活動が増え、エネルギー消費量も増えるなどメリットにつながっていく。
ランニングはダイエット効果も抜群
6.基礎代謝量が上がりダイエットに効果的
ダイエットが目的でランニングを始める人も多いと思うが、正しい強度で行わなければ、実はランニングはそれ自体の脂肪燃焼効果は少なくなってしまう。それでも、ランニングがダイエットに効果的だと言われるには理由がある。
それは全身運動で筋肉をつけることができるため、基礎代謝量が上がり、脂肪を燃焼しやすい体になるからだ。特に今まで運動不足だった人の方が、効果を感じやすいという。
より早く体重を落としたい人は、筋トレも合わせて行うのがオススメだ。
7.糖質を食べる理由にもなる
例えば食事制限などで体重を落とした場合を考えてみよう。目標体重まで落とした後も食事制限を続けなければ体型を維持するのは困難だろう。しかしランニングなら、前述した通り基礎代謝量が上がるため、その分食事制限は緩くなる。特に糖質は、エネルギーになるのでランニングをすることで消費されるという。
ダイエットを必要とするのは、それまでラーメンや飲み会など好きな食生活を送っていたからではないだろうか。ランニングならリバウンドもしにくく、好きなものも食べられる未来が待っている。
8.カラダのむくみを解消できる
ランニングなどの有酸素運動をすると血流が良くなり、体全体にスピーディーに血が巡るようになる。そうすると女性なら悩みがちな冷え性や便秘の解消につながるし、男女問わずむくみの解消にもつながるのだ。特に、血液を心臓に戻すポンプの役割をする「ふくらはぎ」の血流が良くなることで、下半身のむくみには効果覿面だという。
ランニングによってスマートで締まったボディになれれば、今まで以上にスーツ姿もきまるだろう。
ランニングは体にメリットがたくさん
9.免疫力が上がり、生活習慣病の予防になる
40男ならもはや身近にある高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常症などの生活習慣病。またそれ以外にも、最近疲れやすかったり体調をくずしやすくなったりと若い頃に比べて健康面での不安を感じることも多いのではないだろうか。
生活習慣病治療の基本は食事と運動と言われているが、特に有酸素運動が大事だという。適度な有酸素運動であるランニングは、血糖を調整するインスリンの働きを良くしたり、血圧の元となる交感神経の高ぶりを抑える。そして、血糖値や血中脂質を改善して善玉コレステロールを増やす効果も。また、免疫力にアップに必要な“ナチュラルキラー細胞”も活性化するので、風邪をひきにくくなる。
10.寝付き・寝起きが良くなる
ランニングを続けると寝付きが良くなり、伴って寝起きも良くなる。それは“悩み事が解消する”項目でも出てきた「セロトニン」の働きによる。
前述したように「セロトニン」は精神を安定する効果がある。寝入る時、覚醒・興奮してしまっていたら眠れないだろう。精神を落ち着けて寝付きを良くするのはセロトニンの増加による効果だ。
さらに分泌された「セロトニン」は、睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」生成の材料となり、夜になると「メラトニン」が増加する。これによりぐっすりと深い眠りを得られるようになるのだ。逆に不眠や眠りが浅い・なかなか寝付けないという人は、日中に「セロトニン」が不足していることにより、夜間に「メラトニン」が足りていないという現象が起きているのだ。
ランニングをすることでぐっすり寝て、爽快に起きられる体にしていこう。
11.美肌効果がある
40男が気にしがちな肌のくすみ・たるみ・しみ。そんな肌の悩みにもランニングが効果をもたらす。有酸素運動により血行が促進されると肌の再生が活性化され、肌の古い角質が取れて新しい肌に生まれ変わっていくからだ。また、ランニング中に汗をかくことで水分の代謝が良くなり、毛穴のつまりもとれる。
ただし、日中に走る場合に気をつけたいのは日焼けだ。どれだけランニングで肌のターンオーバーが活性化されても日焼けによりしみの原因ができてしまっては元も子もない。小麦肌に憧れる場合でも、急激な日焼けは肌への負担が大きい。ランニング時の肌対策は万全に行おう。
12.肩こりが改善する
肩こりの1番の原因は運動不足だと言われている。運動が不足すると肩周りの筋肉を動かす頻度が少なくなり、パソコンやスマホを見るなど常に同一姿勢をとることで凝り固まってしまうからだ。
ランニング中にしっかり腕ふりをすると、僧帽筋や広背筋という背中の筋肉と肩甲骨がよく動き、肩こりが改善する。ただし、間違ったフォームで走ると肩こりが悪化しかねない。そのためには、肩周りのストレッチを必ず行い、正しいフォームを身につけることが大切だ。
13.冷え性が改善する
冷え性の原因もまさに血行不良だ。冷え性の場合、冷えたところを温めても一時的な解決にしかならず、冷え性を根本解決することにはつながらない。
しかしランニングや自転車などの有酸素運動は、下半身の大きな筋肉を動かすため、心拍数が上がり、体内に酸素を送り込んで、全身の血行が良くなることにつながる。つまり冷え性を根本改善することにつながるのだ。
もしも周りの女性が冷え性に悩んでいたら、一緒にランニングに誘ってみてはどうだろうか?
14.日光を浴びることで、うつ状態や生活習慣病を防ぐ
日中のランニングは日光をたくさん浴びることで、体内でビタミンDが生成される。ビタミンDはカルシウムの吸収効率を上げたり、免疫力を高めたり、生活習慣病を予防してくれたり、筋肉を増強してくれたりとメリットがたくさん。
日光を浴びることで「セロトニン」の分泌も活発になる。「セロトニン」は前述の通り幸福感や安心感をもたらすため、これが不足するとうつ状態につながることもある。
また、日光は体内時計のリセットにもつながる。体内時計が狂うと健康に影響が出るのは分かるだろう。健康的な生活リズムを身につけるためにもランニングで日光を浴びることは効果があるのだ。
15.骨を強くできる
骨を強くするにはカルシウムをとればよいと思っていないだろうか。しかし、カルシウムをただ摂取するだけでは、骨は強くならないという。
骨を強くするために必要なのは、運動だ。運動をすると骨に負荷がかかり、そこにマイナスの電気が発生してカルシウムがたまりやすくなり、骨密度がアップする。
つまり、運動をした上でカルシウムも摂取することで、骨の強化が促進されるのだ。
また、骨にある程度の刺激が加わると骨は強くなるそうだ。特に重力方向へのジャンプ動作がいい。ランニングは足が地面に着地すると同時に、かかとに体重の3倍の重さがかかると言われている。それが繰り返されることで、骨が強くなるというわけだ。
骨密度がアップするということは、骨粗鬆症の予防にも効果的ということ。今はまだ大丈夫でも将来歩くのもやっと…という自分は想像したくないだろう。
16.膝を強くする
例えばよくある関節炎・関節痛の一つである変形性膝関節症。軟骨がすり減ることで関節が痛くなる症状だが、これは加齢の次に体重が原因だという。つまり、肥満の人はそのまま生活して膝に負担をかけるよりも、ランニングをすることで体重を減少させるのが膝のためだ。
さらに、じん帯や関節を鍛えることは、血流を良くし、毒素を排出して軟骨を強くすることにもつながる。軟骨は、血管が通っていないので一度すり減ると、再生しない。今のうちにしっかり強くしておくことが大切だ。
ランニングと聞くと、逆に膝を痛めると考える人が良くいるようだが、それは間違った走り方や重すぎる体重、筋力不足が原因の場合が多い。正しい走り方はもちろん、減量・筋トレも合わせて行いたい。
あとは、自分に合ったシューズやケガの対処もしっかり頭に入れてから走ろう。
17.心臓を強くする
ランニングは、心肺機能の向上に有効だという。特に運動不足の人や運動経験が少ない人の場合、短い時間のランニングでも、心臓に適度な負荷をかけることができ、鍛えることができる。とにかく心臓を怠けさせてはいけない。忙しい生活の中でも、走ることを意識して入れることで、強い心臓を作ることができるのだ。これは疲れにくい身体にもつながる。
ただ、その効果はどのように把握すればいいのだろうか?それには運動後の心拍数を測ることだ。運動後に1分間の脈が100拍まで上昇していた人が、同じ運動をしても90拍までしか上昇しないようになっていれば心肺機能が強化されたということだ。
18.目の健康にもつながる
ランニングは視力回復や眼精疲労にも効果を発揮すると言われている。2013年に「Medicine&Science inSports&Exercise」に発表された研究では、「1日に平均8km以上走る人は、加齢に伴う視力低下や、失明の主な原因である白内障を発症するリスクが41%も低い」という結果も発表されている。ランニングにより目の周りの血流が良くなることによる効果だ。
ランニングは楽しい!
19.ランニングは自然や新たな発見がいっぱい
脳や体への効果をたくさん上げてきたが、すぐにでも実感できるランニングの良さも伝えたい。
それは、何よりも外を走る楽しさだ。例えば季節を楽しめること。春ならば桜を見ながら、夏ならば思い切り汗かく気持ちよさを思い出してほしい。秋ならば紅葉の中を、冬ならば吐く息の白さを実感し、体で四季を感じられる。
また、ランニングのコースは自分次第。いつも同じコースでもいいが、日によってコースを変えると、新たな発見があるかもしれない。旅行先で走るのも良い思い出になるだろう。スローペースのジョギングにして、友人や恋人と会話を楽しみながら走るのもモチベーションになる。
20.ランナーズ・ハイで幸福感が得られる
最後はランニングでよく言われる「ランナーズ・ハイ」について。これはある程度走っている人によく起こると言われているが、走っている最中に苦しさや辛さから解き放たれて、どこまでも走り続けられるような高揚感のことだ。
詳しい仕組みは解明されていないそうだが、「βエンドルフィン」や「カンナビノイド」の効果ではと言われている。これらは覚醒作用や鎮痛作用を持つため、脳内麻薬物質と呼ばれている。ランニングで苦痛を感じると、それを和らげようという自己防衛機能が働いて、「βエンドルフィン」や「カンナビドノイド」が分泌されるという仕組みだ。
しかしこれは誰しもが経験できるわけではないようだ。日々のランニングというより、マラソンの本番やトレーニング中など極限まで追い込まれ苦しい時に起こることが多い。もしあなたがランニングやマラソンにはまったら、いつか体験できるかもしれない。
ランニングの5つのメリット
効果がたくさんあるランニング。しかし世界中のエリートがやる理由はその取り入れやすさにもあるだろう。
1.どこでもランニングできる
これは、ランニングの一番のメリットと言える。いつもの道がそのままトレーニング場所となるため、ジムに行く必要などない。ジムなら出張先では行けないが、ランニングならその心配もない。ランニングシューズさえあれば、地方でも海外でもどこでも走ることができるので習慣化しやすい。
2.いつでもランニングできる
ランニングは、自分1人の都合でいつでもできるところも持続しやすさの秘訣だ。通勤経路で走れる区間はあえて走っていく「通勤ラン」と仕事の合間の移動時に小走りを意識する「隙間ラン」なら、忙しいビジネスマンでも走る時間を確保できる。
3.ランニングはたくさんのアイテムを必要としない
シューズとウエアさえあればすぐに始められるのも良さ。始める時に、たくさんの道具を準備する必要がない。ダンベルやマットが必要だとしたら旅行先でやるのは厳しいが、ランニングなら旅行先でも爽快な朝を迎えられ、それまでは発見できなかった景色に出会えるだろう。
4.ランニングなら自分のペースでできる
ランニングは一人でできるからこそ、マイペースで楽しめる。特別な技術が必要ないので、上手い・下手もない。しかもダイエットには、速く走るよりも、むしろゆっくり走る方が効果を発揮するそうだ。運動が苦手な人や初心者でも、気軽に始めやすい。
5.ランニングは社交の場でもある
一人でもできるが、他人と触れ合えるのもまた良さだ。他のスポーツとちがって、競技中もずっと会話できるのはランニングならでは。グループでランニングして、交流を深めることもできる。また、最近はSNSでランニング情報を交換するという楽しみ方もある。
ランニングを始める前に
いよいよランニングを始める前に、基本となるアイテムの選び方を教えていただいた。
ランニングシューズの選び方
ランニングを始めるにあたって、ランニングシューズだけは必ず準備したいマストアイテムだ。
ランニング中は地面につく度に、かかとに体重の3倍の重さがかかるという。それが普通のスニーカーであったらクッション性が足りずに関節痛や筋肉痛の原因になることもあるのだ。ランニングシューズ選びはプロに相談し、慎重に選んだ方がいいだろう。
ランニングアイテムの選び方
他にも揃えたいのは、ウエア、サングラス、帽子、日焼け止め、バックパック、ランニングウォッチなどだろう。
ランニングウエアを選ぶ時は、暑さ・寒さ対策ができる「季節にあったもの」であることが大切。減量のために、夏でもサウナスーツで走るというのはひと昔前の話だ。
夏なら、通気性や吸汗性の高い素材を選び、帽子やサングラスも忘れずに準備したい。冬は防風・防寒のウィンドブレーカーや手袋があれば寒さを和らげてくれるだろう。日中に走るなら紫外線防止アイテムも用意しておきたい。
また、マラソンを目標にしている人は、GPS機能付きのランニングウォッチで、走った距離やペース(速度)を管理すると良い。データは、PCやスマホと連動して記録してくれる。
選び方は以下の記事にて詳しく紹介しているので、ぜひ読んでほしい。
さいごに
ダイエットはもちろん、健康にも脳にもさまざまな効果のあるランニング。
その効果を知って、今すぐにでも走り出したくなったのではないだろうか。
ランニングは、続けることでよりその効果を発揮する。ぜひ、無理のない範囲でさっそく生活の中にランニングを取り入れてみよう。
Text by Saki Ebisu