SLEの診療は多臓器にわたる症状に対応できる膠原病専門医の関与が不可欠です。この項目では、専門医の役割やチーム医療の体制、患者教育を含めた質の高い診療の必要性を解説します。
監修医師：
桃原 茂樹（草薙整形外科リウマチクリニック）
【学歴】
慶應義塾大学 医学部卒
博士（医学）（慶應義塾大学）
米国Rush University Medical Center, Department of Biochemistry
日本・ヨーロッパ間リウマチ外科交流プログラム
【職歴】
1984年 慶應義塾大学医学部研修医（整形外科学）
1991年 慶應義塾大学医学部助手（整形外科学）
1993年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手
1997年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師
2005年 東京女子医科大学附属青山病院助教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター副所長
2016年 慶應義塾大学先進運動器疾患治療学講座特任教授
2025年 医療法人社団 博恵会理事長
【現在の学会・社会活動】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 リウマチ認定医
日本リウマチ学会 専門医・指導医・評議員
日本リウマチ外科学会 評議員
日本リウマチ学会 理事
膠原病専門の医師による診療の重要性
全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病の診療には、高度な専門知識と豊富な臨床経験が不可欠です。膠原病は多臓器にわたる症状を示し、病態も複雑で個人差が大きいため、診断や治療の判断を一般診療だけで担うのは難しいケースが少なくありません。膠原病を専門とする医師による適切な診療が、患者さんの生活の質や将来の予後に直結します。
膠原病専門の医師による包括的な診療体制
膠原病は、皮膚症状、関節炎、腎障害、肺病変、中枢神経障害など、多岐にわたる臨床像を示します。そのため、内科（特にリウマチ・膠原病科）を中心に、皮膚科、整形外科、眼科、腎臓内科、呼吸器内科など、複数診療科の連携が必要になることも珍しくありません。
膠原病専門の医師は、このような診療科横断的な治療方針をコーディネートし、患者さん一人ひとりに適切な医療を提供します。また、定期的な血液検査・尿検査・画像検査を通じて病気の活動性を正確に評価し、薬物療法の強度や種類を適切に調整していきます。副作用管理も含めたきめ細かい治療戦略は、専門の医師だからこそ可能なアプローチです。
チーム医療による総合的なサポート
現代の膠原病診療では、医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど、多職種が連携するチーム医療が重要な柱となっています。これにより、身体的症状の管理だけでなく、服薬支援、リハビリテーション、栄養管理、さらには社会復帰や就労支援まで含めた包括的なサポートが可能となります。
患者さんへの疾患教育と自己管理
全身性エリテマトーデスを含む膠原病は、長期間にわたる経過観察と治療が必要です。そのため、患者さん自身が疾患の特徴や治療の目的を理解し、生活習慣の工夫や薬の自己管理に主体的に取り組むことが治療成功の鍵を握ります。膠原病専門の医師は、患者さんや家族に対してわかりやすく病気を説明し、自己管理を支える教育的役割も担っています。
まとめ
全身性エリテマトーデスは、自己免疫機能の異常により引き起こされる膠原病の一つで、厚生労働省により難病指定されている慢性疾患です。特に女性に多く見られ、倦怠感をはじめとする多様な症状により患者さんの生活に大きな影響を与えます。現在では生物学的製剤の登場により治療選択肢が拡大し、適切な治療により症状のコントロールが可能になってきています。患者さん一人ひとりの病態に応じた個別化医療の推進により、今後さらなる治療成績の向上が期待されます。
参考文献
[厚生労働省難病情報センター 全身性エリテマトーデス]
[日本リウマチ学会 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン]
