主人公・2児の母である朝を虐待者として通告した通告者が、郷田だと知った朝。今後の関係性をきちんと取り戻すために、改めて話し合いをすることに。そこで明かされた郷田の行動動機は、少し切ないもので…?
息子の状況を悲観した母
郷田さんが通告をした理由、それはゆずといつきを思うが故だと最初は語っていました。現に、郷田さんはうちの子たちに対して孫の様に接してくれていたんです。息子さんも結婚され、早く孫の顔が見たいんだと言っていた郷田さん。
「うちにも孫ができるだろうから、そうしたら遊んでやってね」と、いつもゆずといつきに話してくれていました。
そんな郷田さんの口から、そんな切ない事実を聞くことになるなんて思いもしなかったんです。
郷田「…私、孫の顔を見れないかもしれないの」
朝「え?」
それはあまりにも唐突な告白でした。
郷田「息子、同棲はしているけどまだ結婚はできていないの。この間電話で『別れるかもしれない』って」
朝「…え?」
郷田「本格的に結婚を考えて2人でブライダルチェックを受けたらね、息子は子どもができにくい体質なんですって」
朝「…」
郷田さんのあまりにもつらそうな表情に、私は言葉が出ません。
郷田「私、頭の中真っ白になっちゃって。平然を装うのに必死で、大した言葉もかけられなくて」
郷田さんは涙をこらえているのか、声が少し上ずっていました。
朝「郷田さん…」
郷田「私はね、息子に救いの言葉の一つもかけてあげられない母親だったってこと」
涙をこらえながら、自身の感情を抑えながらも、つらい気持ちを言葉にしていた郷田さん。聞けば、その告白を受けてからは余計にうちのゆず・いつきを孫のように思うようになって、執着に近いような感情になってしまったといいます。
羨ましさが嫉妬に
そんなとき、私がゆずを叱っているところを目撃したのだそうです。その日は、2人がキーホルダーの色をめぐってケンカをしていました。
郷田「いつきくんが『ピンクがいい』って言うのに対して、朝さんはゆずちゃんに『じゃんけんしてあげて』って言ってたの。キーホルダーはピンクと青だからね、私なら、いつきくんに『男の子だから青にしたら』と言っちゃいそうだけど、あなたは平等だった」
郷田さんは、本当に私たち家族をよく見ていると思いました。その日も偶然通りかかった郷田さんに会ったのは覚えているけれど、そこまで見られていたなんて。
郷田「母として子どもを尊重するあなたを見ていたら、自分が情けなくなって。それに、2人もお子さんがいるあなたと、1人も子どもを望めないかもしれないわが子を比べてしまって…なんともいえない気持ちになってしまったの」
その後も私たちを見ているうちに悲しい感情が黒い嫉妬に変わり、ちょっとした怒鳴り声や泣き声をきっかけに通告してしまったといいます。警察まで来て内心焦ったものの、もう後戻りはできなかったといいます。
郷田「あのあと職員さんがうちにきてね。『虐待はありませんでした』『でも、心配して通告するあなたのような人がいるから守られる命もあります』と言っていただいてね。こんなことしたのに責められないのもまた、情けなくて…」

