女性に多い「全身性エリテマトーデス」とステロイドの副作用対策 QOLへの配慮とは?

女性に多い「全身性エリテマトーデス」とステロイドの副作用対策 QOLへの配慮とは?

女性の全身性エリテマトーデス患者には、妊娠・出産やホルモンバランスへの対応が求められます。本節では、安全な妊娠管理や美容・生活面への配慮を含め、女性特有のニーズに対応する医療体制について解説します。

桃原 茂樹

監修医師:
桃原 茂樹(草薙整形外科リウマチクリニック)

日本を代表する整形外科・リウマチ専門医であり、変形性関節症、リウマチ、変形性脊椎症、骨粗鬆症、痛風、偽痛風などの治療と研究に従事。これまでに慶應義塾大学特任教授、東京女子医科大学教授を歴任し、豊富な臨床経験と先進的な研究を基に、実地医療に加え国内外の医療教育や国際交流にも尽力。
【学歴】
慶應義塾大学 医学部卒
博士(医学)(慶應義塾大学)
米国Rush University Medical Center, Department of Biochemistry
日本・ヨーロッパ間リウマチ外科交流プログラム
【職歴】
1984年 慶應義塾大学医学部研修医(整形外科学)
1991年 慶應義塾大学医学部助手(整形外科学)
1993年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手
1997年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師
2005年 東京女子医科大学附属青山病院助教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター副所長
2016年 慶應義塾大学先進運動器疾患治療学講座特任教授
2025年 医療法人社団 博恵会理事長
【現在の学会・社会活動】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 リウマチ認定医
日本リウマチ学会 専門医・指導医・評議員
日本リウマチ外科学会 評議員
日本リウマチ学会 理事

女性患者における特別な配慮事項

全身性エリテマトーデスの女性患者さんには、妊娠・出産や女性特有の症状に関して、特別な配慮が必要です。適切な管理を行うことで、多くの患者さんが安全に妊娠・出産を経験できることが知られています。

妊娠・出産に関する管理

全身性エリテマトーデスの女性患者さんが妊娠を希望する場合は、病気の活動性が安定している期間に妊娠を計画することが望ましいです。妊娠前には、使用中の薬剤の安全性を評価し、必要に応じて妊娠に適した薬剤への変更を行います。

さらに、抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併している場合、血栓症や習慣流産のリスクが高まるため、抗凝固療法の導入や綿密な妊娠管理が必要になります。また、母体だけでなく胎児への影響も考慮され、先天性房室ブロックのリスクがある場合には定期的な胎児心拍数モニタリングが行われます。こうした多面的な管理により、母子ともに安全な妊娠・出産が実現可能です。

女性のライフスタイルに配慮した治療

全身性エリテマトーデスの治療では、女性患者さんのライフスタイルや将来の希望を踏まえた治療方針の決定が重要です。仕事や育児との両立、美容面への配慮なども治療計画に組み込まれます。

特にステロイド薬の長期使用は、骨粗鬆症、体重増加、ムーンフェイスなどの副作用を引き起こすことがあり、女性患者さんにとって心理的な負担が大きくなることがあります。そのため、副作用のリスクを抑える治療戦略や、適切な支持療法の導入が求められます。栄養指導、運動療法、心理サポートなど、包括的なケアを組み合わせることで、患者さんの生活の質(QOL)を維持しながら治療を進めることが可能です。

まとめ

全身性エリテマトーデスは、自己免疫機能の異常により引き起こされる膠原病の一つで、厚生労働省により難病指定されている慢性疾患です。特に女性に多く見られ、倦怠感をはじめとする多様な症状により患者さんの生活に大きな影響を与えます。現在では生物学的製剤の登場により治療選択肢が拡大し、適切な治療により症状のコントロールが可能になってきています。患者さん一人ひとりの病態に応じた個別化医療の推進により、今後さらなる治療成績の向上が期待されます。

参考文献

[厚生労働省難病情報センター 全身性エリテマトーデス]

[日本リウマチ学会 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン]

配信元: Medical DOC

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