認知症やもの忘れは、急速に高齢化が進む現代社会において、避けて通れない重大な課題となっています。これらの症状は患者本人のみならず、家族や社会全体に深刻な影響を及ぼします。そこで、今回は超高齢化社会のもの忘れ治療について「ふじさわ脳とからだのクリニック」の永尾征弥先生に解説してもらいました。

監修医師:
永尾 征弥(ふじさわ脳とからだのクリニック)
2003年富山医科薬科大学医学部(現・富山大学医学部)卒業。大学の医局や救急病院などで、20年ほど脳神経外科医として勤務。救急病院で脳卒中を中心とした診療や、総合病院で地域医療に携わりつつ企業の産業医として従事。現在は神奈川県藤沢市の「ふじさわ脳とからだのクリニック」で、もの忘れ外来などに携わっている。
編集部
最近は「物忘れ外来」とか「認知症外来」など、認知症に特化した外来ができてきていますよね?
永尾先生
そうですね。日本認知症学会専門医や日本認知症予防学会の認知症予防専門医、認知症サポート医といった専門家が、検査・診断をし、適切にサポートしていく専門窓口が増えてきています。認知症の有無だけでなく、原因疾患の種類や進行度合いも評価することができます。
編集部
認知症と診断されたら治療はどんなことをするのですか?
永尾先生
食事や運動、睡眠、社会活動などの生活習慣の改善についてのアドバイスや生活習慣病の管理、適応があれば認知症の進行を遅らせ、症状を軽減することを目的とした薬物治療などを行います。また、医療機関によっては行動療法やリハビリテーションなどを取り入れているところもあります。社会と関わることや日常生活に運動を取り入れることで、認知症の進行を遅らせることが期待できるため、デイケアやデイサービスなどもご案内することはあります。
編集部
ほかに何か認知症について知っておいた方がいいことはありますか?
永尾先生
「認知症は、子どもに戻ると考えれば良い」と言われることがあります。確かに間違ってはいないのですが、認知症の場合、子どものように成長し学習していくことは難しく、むしろ少しずつ症状が進行していく疾患です。認知症患者さんに寄り添う方々には、まずはその点を理解していただき、「どうやってうまく付き合っていくか」という認識で関わっていただけたらと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
永尾先生
認知症は徐々に進行していく疾患ですが、すべてご家族だけで抱え込むのは本当に大変です。そこでデイケアやデイサービス、ヘルパーさんなどの社会的資源をうまく取り入れるなど、周りの手を借りることがとても大切です。認知症外来では、認知症患者さんだけでなく周りの人もストレスを抱えずに生活していけるよう、介護保険のご案内やさまざまなサービスのご紹介なども行っています。早期に発見し、早期に対応していくことが重要な疾患ですので、今、ご家族のどなたかのもの忘れが気になってきていたり、いつもやっていることをやろうとしなくなっていたり、何か気になる点がある方は、ぜひ早めにお近くの認知症外来にご相談いただけたらと思います。
※この記事はMedical DOCにて<社会問題「認知症」の原因や治療を医師が徹底解説 「物忘れ外来」って何するの?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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