光代さんとの関係性に悩みに悩む直美だが、ある日、夫から目からうろこのアドバイスを得ることができ、状況には大きな変化が起きる。
ママ友ではなく「ご近所さん」に
光代さんへの悩みで、私の顔色が優れない日が続いた。そんな状況に気づいた夫・タケルは、ある夜に私に熱いコーヒーを差し出してくれた。
「直美さ、光代さんのことで相当参っているでしょ?」
「うん…でも、どうしたらいいかわからないよ。疲れるけど子どものためにはママ友でいるしかないんだろうし」
タケルは私の正面に座り、真剣な眼差しで話し始めた。
「光代さんは悪い人じゃないし、桃子ちゃんと美里の付き合いに水を差したくない気持ちもわかるよ。でも、もう美里も大きいんだし、子どもの人間関係と大人の人間関係は、線を引いてもいいと思う」
「線を引く…?」
「うん。光代さんと育児方針が合わないならば無理をしないで、ママ友じゃなくて『ご近所さん』って線引きでいいんじゃないの?」
タケルの言葉は、私の凝り固まった思考を一気に解放してくれた気がした。「ママ友」として考えるとある程度距離感近く、個人的なことも共有しあわなければいけないように思ってしまう。でも、ご近所さんならプライバシーや相手の価値観は一線を引いて考えられそうだ。
子どもたちの付き合いにも変化が
「ご近所だから必要以上に仲良くする必要はない」タケルがこの日にかけてくれた言葉で、私はハッと気がついた。隣人だからって価値観が一緒でなくていいし、距離を近く保つ必要もない。
幸い、美里と桃子ちゃんは2人だけで公園や放課後開放で遊ぶことが増えて、光代さんと顔を合わせる機会は幼稚園時代よりもずいぶん減っていた。さらに、美里も桃子ちゃんも、お互い以外にも仲がいい子ができてきたみたいだ。
子どもたちが新しい友達を作り、それぞれの世界で輝き始めたことで、私はようやく、光代さんとの関係を見直す勇気を持てた。

