●リコール公表は「安全確保」と損害の拡大防止が目的
企業が製品の潜在的な危険性を把握した場合、リコールを公表して交換・返金などの措置を取るかどうかは、重要な判断となります。
今回のケースでは、既に重大製品事故41件が発生しており、アンカー・ジャパンは消費生活用製品安全法35条1項に基づきこれらの事故を経済産業省に報告しています。
ただし、こうした事故の報告義務とは別に、製品の欠陥を公表してリコールを実施するかどうかは、企業の自主的な判断に委ねられています。
リコールの公表は、被害拡大を防ぎ、将来的に製造物責任法に基づいて企業が損害賠償を請求されるリスクの拡大を防ぐことにつながります。
一時的には企業イメージの低下を招く可能性がありますが、早期の公表と対応は長期的な信頼維持につながると考えられます。
さらに、隠蔽が発覚した場合の社会的信用の失墜は、一時的なリコール公表による影響をはるかに上回る損失を企業にもたらすことになります。
つまり、長期的にみた場合、公表しないことのデメリットの方が、公表による一時的な信頼低下というデメリットを上回るといえます。
●メーカー側の動向
Anker製品については、たびたび自主回収の話題が出ており、今回行政指導が行われた事実は重く、安全な製品の製造・供給が求められるのはいうまでもありません。
その一方で、リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持つがゆえに、バッテリーセルの製造過程で異物が混入するリスクなど、構造的な要因による安全性の課題を業界全体が抱えています。
実際、メーカー側は、これに代わる、より安全性の高い新しいバッテリー(半固体電池など)の技術開発を進めており、将来的には安全性に優れた製品の登場が期待されます。
もっとも、新技術の普及にはまだしばらく時間がかかるものと思われます。消費者としては、日々製品を丁寧に取り扱うとともに、メーカーのリコール情報などに注意を払う必要があります。
(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)

