夫の姉・絵里は明るく面倒見のいい義姉。結婚当初は頼りになる存在だったが、妊娠をきっかけに“距離の近さ”が少しずつ気になるように。そしてある日、決定的な違和感を覚える出来事が起こる。
頼れる義姉のはずが……
私が義姉の絵里さんと初めて会ったのは、婚約の挨拶に夫の実家を訪れた時だった。
「……なんか、緊張してきたね」
「え〜。啓介は実家で家族と会うだけでしょ?リードしてよぉ……」
私は夫との付き合いこそ長かったものの、それまで義家族と会ったことはなく、話だけ夫から聞く程度だった。そのため、挨拶当日、私はガチガチに緊張していた。
しかし、そんな緊張が解れたきっかけは、義姉の絵里さんだった。
「沙耶さんが緊張するのは分かるけど、なんでウチの人らが緊張してんのよ〜」
「でもびっくり!まさかあの啓介が、こんな素敵な娘を連れて来るなんて。お姉ちゃん、感激……」
義両親も緊張していてぎこちなかった空気を、朗らかな義姉の雰囲気と軽妙な語り口によって和やかなものに変えてくれたのだ。そのおかげで私も義両親も次第に自然な会話ができるようになり、安心して婚約の挨拶を済ませることができた。
この時の第一印象もあって、私の中で義姉は親類の中でも頼りやすい人と思うようになり、婚姻後も何かと相談させてもらっていた。慣れない結婚生活で弱音を吐いた時も、仕事の愚痴も、義姉は変わらぬ朗らかな態度で接してくれた。その包容力に私は安心感を得ていた。
そんな義姉に対して違和感を抱き始めることとなったのは、私が初めての妊娠をしてからのことだった。最初の頃は、変わらぬ義姉の朗らかな雰囲気と積極的な協力に甘えさせてもらい、純粋に感謝しかなかった。
ただ次第に、子どもの話題について義姉がやけに入ってくるようになった。妊娠期間中にした方がいいとされることを調べては「試してみよう!」と半ば押し付けるように勧めてきたり、子ども用品を勝手にリストアップして「これなんてどうかな?」と提案してきたり……。
初めは姪の誕生に浮かれて、世話焼きになっているのかな、くらいに思っていた。しかし、私の中で決定的に干渉されていると感じる出来事が起きる。
干渉と戸惑い
それは夫とともに、義実家を訪れていた時。2人きりになった茶の間で子どもの名前について話し合っていると、どこからともなく義姉が茶の間にやってきて、話し合いに混ざっては話を回し始めたのだ。
その時は義姉の提案を聞きつつ、夫が「2人で考えさせて」と言って落ち着いた。けれど、私の中での義姉への違和感が色濃くなった出来事だった。

