飛蚊症を引き起こす疾患は多様で、緊急性の高いものから経過観察が可能なものまで幅広く存在します。特に網膜に関連する疾患は視機能に直接影響を与える可能性があるため、症状の変化を見逃さず適切な時期に受診することが大切です。ここでは注意が必要な疾患について詳しく説明します。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
原因となる疾患と病態
飛蚊症を引き起こす疾患は多岐にわたります。生理的なものから緊急性の高い病的なものまで、適切な鑑別診断が重要となります。
眼科疾患の中でも、網膜に関連する疾患は特に注意が必要です。これらの疾患は視力に直接影響を与える可能性があり、早期発見・早期治療が重要になります。症状の特徴を理解し、適切な時期に眼科を受診することが大切です。
網膜剥離と網膜裂孔
網膜剥離は飛蚊症の原因として注意すべき疾患の一つです。網膜が網膜色素上皮から剥離することで、視野欠損や視力低下を引き起こす可能性があります。初期症状として飛蚊症が現れることが多く、早期発見・早期治療が視機能の保持に重要です。
網膜裂孔は網膜に穴が開く状態で、硝子体剥離の際に網膜が引っ張られることで生じることがあります。裂孔自体は小さくても、そこから網膜剥離に進行する可能性があるため、注意深い観察と適切な治療が必要です。
これらの疾患による飛蚊症の特徴は、症状の急激な変化です。今まで気にならなかった飛蚊症が突然増加したり、光視症(光がないのに光を感じる症状)を伴ったりする場合は、緊急の眼科受診が必要です。
網膜剥離の治療には手術が必要になることが多く、早期発見により治療成績が大きく左右されます。飛蚊症を軽視せず、症状の変化に注意を払うことが重要です。
硝子体出血
硝子体出血は硝子体腔内に血液が漏出する状態で、飛蚊症の原因となります。糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、網膜静脈閉塞症などの血管性疾患や、外傷、網膜裂孔などが原因となることがあります。
軽度の硝子体出血では飛蚊症として認識されますが、出血量が多くなると視力低下や霧視を引き起こします。出血の原因となる疾患の治療と並行して、硝子体出血自体の管理も必要になります。
糖尿病網膜症による硝子体出血は、糖尿病の合併症として現れます。血糖コントロールの改善と眼科的治療を並行して行うことが重要です。定期的な眼底検査により、出血のリスクを早期に発見し、予防的治療を行うことも可能です。
硝子体出血の治療法は出血の程度と原因によって異なりますが、重篤な場合には硝子体手術が必要になることもあります。出血が自然に吸収される場合もありますが、医師による定期的な経過観察が不可欠です。
まとめ
飛蚊症は多くの方が経験する眼症状ですが、原因や症状の程度は個人により大きく異なります。加齢による生理的変化から重篤な眼疾患まで、さまざまな原因が考えられるため、症状を自己判断せず専門医による適切な診断を受けることが重要です。原因となる疾患に応じた適切な治療を受けることが重要です。
参考文献
黒いものが飛ぶ 飛蚊症(日本眼科学会)目の症状・疾患(厚生労働省)

