実用性の欠如と婚活当事者の不快感
批判は、ジェンダー論に留まらず、婚活当事者の実感とも結びついています。あるユーザーは、「パステルカラーのワンピースやアナウンサー風がドレスコード? 従順そうで可憐な女を求める男と結婚して幸せになれるか。いやなれない」と吐露。別のライターも、「パンプス強制? 長時間歩くと足が激痛。好きな格好こそその人らしさ」と痛烈に批判。
「可憐さ」の強制は、婚活の「参入ハードル」を高め、多様なスタイルを持つ女性を排除し、結果的に少子化対策に逆行するのではないかという懸念が共有されています。
なぜ男性版は「炎上ゼロ」なのか? 構造的なジェンダー不均衡
女性版への批判が数万ビュー・数千リポストで炎上する一方、実は男性版『叶えるBOOK』に対する非難はSNS上でほとんど見られません。
ごく少数のアカウントから「男性版は『清潔感』だけ。女性版は全身コーデ+マインド矯正。同じ公金でここまで差別的?」といった指摘がある程度で、男性版が“火種”になることはありませんでした。その理由は、女性版と男性版の「圧倒的な緩さの違い」にあります。内容を比較すると、この違いは明らかです。
服装について、女性版がパンプス+スカートorワンピースの着用を強制し、「可憐さ」を強調しているのに対し、男性版は「清潔感のある服装」という基準にとどまり、ジャケット・シャツ・パンツといった4パターンを提示するなど、カジュアルも許容しています。また、体型に関しても、女性版では「ウエストを細く見せる」「二の腕カバー術」といった指南があるのに対し、男性版は「体型に合ったサイズを選ぶ」程度にとどまります。
さらにマインド面では、女性版が「浪費癖ないか?」「自己管理できているか?」と内省を執拗に強いるのに対し、男性版は「自己肯定感を高めよう」「趣味を充実させよう」といったポジティブな内容が中心です。立ち居振る舞いも、女性には「穏やかで優しい笑顔」「控えめな仕草」が求められるのに対し、男性版には特に指定がありません。
男性版は「最低限の清潔感」で済むのに対し、女性版は「個性を殺し、男性好みに合わせた御しやすそうな存在」への変身を要求している。この非対称性こそが、炎上の根本原因です。
あるユーザーは、「女性は性的資源としてラッピングされ、化粧で有徴化。男性の社会的価値を上げるためのもの」と分析。男性の服装・振る舞いは「基準」として指導されること自体が少ないという、「男性=デフォルト」の社会構造が、今回の「女性への過剰指導 vs 男性への放置」というジェンダー不均衡の縮図を生み出したと言えます。

