祖母の介護を巡り、母と叔母の間に深まる確執。板挟みの中で奔走する美咲だったが、やがて従姉妹との関係にも溝が生まれていく。
深まる確執、すれ違う思い
祖母の介護を巡り、母と叔母の対立は日に日に深まった。仲の良かった母と叔母の不和に胸を痛めた私は、険悪な雰囲気を少しでも緩和しようとできることは積極的に動いた。
介護計画の折衷案の模索や、仕事が入っていても世話当番の日は1人でも祖母の家に足を伸ばした。けれど、移動の問題や体調を崩しがちになったりと無理は続かなかった。折衷案についても対立意識が強くなってしまった母には聞き入れられず、さらには「叔母家族とはもう連絡を取らないで!」とまで言われてしまった。
従姉妹との連絡が生んだ波紋
母と叔母の確執が深まることに頭を抱えていたものの、それ以上に私は祖母の体調が気がかりだった。仕事で行けないことが多いからこそ、久しぶりに会った時の祖母の痩せ細っていく姿にショックを受けていた。そのため、世話当番でも仕事などで訪問が難しい時は、祖母の体調を従姉妹の彩花に連絡して確認していた。
「今日も行けなくてごめん……。おばあちゃんの体調、どんな感じ?」
「う〜ん……食は細くなってきてるかな」
「そっか……」
「……あのさ、美咲に言うのもどうかとは思うんだけど」
「えっ?」
「おばあちゃんそんな感じだし、残りの時間を大切に過ごしてほしいと思ってる。だから、介護の体制をしっかりしたいし、家族同士も穏やかでいたい」
「うん……」
「でも、由紀子さんが聞く耳持ってくれないってお母さんが。話し合いできないんじゃ何もしようがないでしょ?」
溜まった憤りを抑えつつ、あくまで冷静に彩花が主張しようとしていることを、私は言葉の端々や語気から感じ取っていた。彼女の言い分はもっともだった。それぞれの家庭事情が上手く噛み合わない現状を前に、母が感情的になって話し合いを放棄しているのは私の目にも明らかだった。
「そうだよね、ごめん。説得はしてるんだけど……もう少し、落ち着く時間が必要なのかも」
「はぁ……そんな悠長にしてる時間ないし、介護もなぁなぁになってきてるし。由紀子さん、そもそも協力する気あるの?」
進展の兆しの見えない母の様子にシビレを切らしたように、彩花の口調は次第に崩れ始め、母への批判的な態度が表れ始めた。彩花との長い付き合いの中で、母へこんな態度や言動を取るのは初めてだった。
「介護については、お母さんなりに考えてるのは本当だから。私からも説得は続けるから、時間をちょうだい?」
「……うん、わかった。急かして悪いけど、早めにお願い。ウチも大変なの」
彩花の最後の一言には、怒りと呆れ、そして疲労が込められているように感じた。

