崩れていく“最後の繋がり”
「このままじゃ、おばあちゃんの介護が成り立たなくなる……」そんな危機感を募らせ、私は母の説得を試みた。
「……ねぇ、お母さん。前にも話したけど、介護について、もう一度叔母さんたちと相談しない?それぞれの事情も変わってきたんだしさ」
母は「介護」の言葉に眉をピクリとさせると、すぐに怪訝そうな表情を浮かべた。そして深いため息を一つ吐くと、気怠いような雰囲気で話し始めた。
「もうそのことは話したでしょ?うちは向こうの家よりおばあちゃん家まで遠いの。休みにもバラつきがあるから泊まり込みだって難しい。前に無理して体調崩してたじゃない?」
「それはそうだけど……。でも、私たちが行けない穴を彩花ん家が埋めてくれてるんだよ?せめて、費用の負担をもう少しこっちで持ったり……」
「そんな余裕ないわよ。そもそも介護費用の手出しの割合だって、それぞれの家庭の収入に沿って考えたんだから」
「そうだとしても!叔父さんも持病のことがあって大変だって彩花に聞いたよ?」
頑なに譲らない母の態度に、私はつい声を荒げてしまった。
「彩花ちゃんに聞いたって……美咲、まだ連絡取ってるの?もうやめなさいって言ったでしょ!?」
──結局、私は母の説得に失敗、さらに言いつけを守っていなかったことで母にも距離を取られることになってしまった。
その日の夜。私は祖母の体調の確認も兼ねて、彩花に説得の失敗を伝えようと連絡した。しかし、通話が始まるや否や彩花が取り乱した様子で捲し立ててきた。
「ねぇ美咲!どういうこと?由紀子さんがお母さんに『もう連絡してくるな』って言ってきたみたいなんだけど」
「えっ……。それは、ごめん。ただ今日、お母さんを説得してみたんだけど全然話聞いてくれなくて……。彩花と連絡取ってることも気に食わないみたいで」
「はぁ?何それ……。じゃあ結局、由紀子さんは話し合う気も、介護に協力する気もないんだ」
「それは、少し違うと思う……」
「どうして?介護の分担にお互い不満なのに、改善しようとしないなんてもう色々放棄してるじゃん」
堪忍袋の緒が切れた彩花から、今まで溜めた鬱憤を鋭い言葉として投げかけられた。その言葉は否定し切れないもので、私はただ受け切るしかなかった。
「てかさ、美咲も由紀子さん説得するって言って出来てないし、同情だけはするクセに由紀子さんの肩を持つじゃん」
「えっ……」
「美咲って、嘘つきなんだね」
直後、通話は一方的に切られた。母と叔母を繋ぐ、最後の砦だと思っていた彩花との関係。そこに今、大きな亀裂が入ったことを突きつけるように、通話終了の規則的な音声が鼓膜を揺らした。
あとがき:「家族の優しさ」がぶつかるとき
介護という現実の中で、それぞれが「正しさ」や「思いやり」を抱えながらも、いつしか相手を責めてしまいます。本当は、誰も悪くない──ただ、余裕をなくしてしまっただけ。それでも、ぶつかり合った後に残るのは「想いの深さ」だと信じたい。誰かを支えるはずの優しさが、自分を追い詰めてしまう。本エピソードが、そんな現実を静かに見つめ直すきっかけになればと思います。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

