かなこは「商品の良し悪し」ではなく「家族の意思と必要性」に基づき、義姉にネットワークビジネスへの関与を断ることにしました。誠実な「NO」は義姉に受け入れられるのでしょうか。
わたしには不要なだけだと気づく
ネットワークビジネスの商品を愛用する友人・ななえと話して以来、私の心の中の霧が晴れたような気がしていました。私が本当に嫌だったのは、商品そのものや、ビジネスの仕組みではなく、義姉の「押し付けよう」とする熱意と、それに付随するプレッシャーだったのです。
改めて義姉が扱っている商品について調べてみました。中には、確かに世間一般でも評判の良いものや、こだわりを持って作られているものもありました。ほしいと思う人にとっては、良いものなのかもしれない。だけど、私には今必要なものではないし、何より、その仕組みで「稼ぎたい」とは思わない。私たちの家計を支える方法は、他にある。
この気持ちを正直に、でも義姉を傷つけないように伝えることが、今の私にできる最善の防御であり、正春をテニスから遠ざける最良の方法だと確信しました。
テニスの予定が迫った週末、義姉が義実家に来たタイミングを見計らって、私は彼女をリビングに誘いました。
義姉からの謝罪
「お姉さん、ちょっとお話いいですか?」
「もちろん!かなこちゃん、最近肌の調子悪くない?私の使ってる化粧水、試してみる?」
話そうとすると、すぐに勧誘の言葉が飛んできます。私は深呼吸をして、冷静に切り出しました。
「ありがとうございます。でも、今は大丈夫です。実は、お姉さんがしているビジネスのことなんですけど…」
義姉の顔から笑顔が消え、少し身構えたのが分かりました。私は早口にならないよう、言葉を選びました。
「お姉さんが気に入った商品を広めたいと思っているのは分かりました。姉さんが熱心に活動されていることも、すごいなって思っています。ただ、私と正春については、今はそういうものは必要ないんです」
「うーん、すごくいいものなのよ?はるとくんの健康にも」
「はい、お姉さんは私たちを思って熱心に勧めてくれているんだと思います。でも、今の私たちがほしいもの、必要なものとは、ちょっと違うんです。それに、ビジネスについても今の私たち家族には必要ないなと思うんです」
私は「商品の良し悪し」ではなく、「私たち家族の意思と必要性」だけを根拠に断りました。
私の言葉は、義姉の熱意を否定するものではなく、ただ「自分たちは選ばない」という強い意志を示すものでした。義姉はしばらく黙っていましたが、意外にも素直に、そして少し寂しそうな表情で言いました。
「…そっか。かなこちゃんが、そう言うなら…わかった。ごめんね。強引だったよね」

