精神的なストレスが原因で身体的な不調が生じる「心身症」とはどのような病気なのか、気になる質問にお答えします。
全身に多種多様な症状が現れる心身症は、ときに日常生活に支障をきたす恐れもある病気です。
代表的な疾患としては、胃潰瘍・過敏性腸症候群・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・メニエール病などが挙げられます。
日々のストレスが原因となり、つらい症状に悩まされる人も少なくありません。また、人によってはストレスに気付かずに過ごしていることもあります。
「最近、体調が優れないな…」とお悩みの人は、是非参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「心身症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
伊藤 直(医師)
著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法
心身症の診断や治療方法

心身症の診断はどのように行うのでしょうか?
まずは問診を行います。心身症では病気の発症や進行に心理的・社会的な要因が大きく関わっていますので、身体症状と精神症状の両面から詳しい状況をヒアリングしていきます。具体的な内容は、主な症状・発症時期・思い当たる発症要因・どのようなときに症状が悪化するか・どのようなときに症状が楽になるかなどです。わかる範囲で書き留めておくと診察時に役立ちます。また、症状の経過だけでなく生活習慣・行動パターン・ライフイベント・学業や職業・家族歴・生育歴が疾患に影響を与えている可能性もあります。
それらに加え、血液検査・尿検査・心電図などの身体検査により他の病気との鑑別も必要です。症状に応じて、CTや消化管内視鏡検査を行うこともあります。
心身症に治療方法はありますか?
主な治療方法は対症療法と心理療法です。まずは、それぞれの身体症状に対して症状を改善するための薬を処方します。身体症状だけでなく、イライラ・不安・気分の落ち込みなどの精神的な症状が現れている場合には向精神薬を処方することもあります。心理療法では、心の状態を整理することからスタートです。患者さん自らが心の中に抑圧された感情や心の動きを認識できるようにサポートしていきます。心身の不調の原因となるような行動・思考・生活習慣などがあれば、改善できるように一緒に対処法を考えていきましょう。
心身症を発症した際の過ごし方、気をつけることがあれば教えて下さい。
心身症は、ストレスが発症や悪化の引き金となる病気です。したがって、思い当たるストレスを遠ざけることやストレス発散を上手に行うことが大切です。また、精神症状と身体症状がつらい場合には薬を処方します。つらい症状は我慢せずに医師に相談しましょう。
心身症は継続的な治療が必要なのでしょうか?
明確なストレスの原因が存在する場合には、それを取り除くことで症状の改善に繋がります。しかし、もともとの行動や思考のパターンが改善されていない場合には再び体調を崩す可能性が高いです。また、人によってはストレスから身を守るための心の反応が乏しいケースや、ストレスを自分自身で自覚できないケースもあります。
知らず知らずのうちにストレスをため込んでしまうこともあるため、心理療法を行いながら継続的に付き合っていく必要があります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ストレス耐性は人それぞれ異なるものです。育った環境や周囲との関わりにより、培ってきた思考や行動のパターンが身体に影響を及ぼしている可能性もあります。そのため、自分の心と身体を理解することが非常に重要です。医師や臨床心理士などがサポートしますので、ひとりで抱え込まずに心療内科を受診してみてください。
編集部まとめ

精神的なストレスから身体にも症状が現れる心身症について解説しました。心身症は、心のストレスから胃腸症状・皮膚症状・めまいなどのつらい症状が現れる病気です。
長期的に付き合っていく必要がある病気ですが、ストレスに対する対処や生活習慣の改善により症状は回復していきます。
思い当たる原因がない場合でも、知らず知らずのうちに身体がストレスの影響を受けている可能性もあります。
身体に何かしら不調を感じている場合には、早めに専門機関を受診するようにしましょう。
参考文献
うつ病(厚生労働省)
こころを専門に診る病院の種類は?(厚生労働省)

